極めて稀有な人
眼前に居るのは間違いなく私のクラスメイトでの武藤遊戯君に間違いない。 こんな特徴的な髪型の人物がそう居てたまるかと心の中で後再び彼を見る。
視線が絡み合った彼は私の表情から思考を汲み取ろうとしているようで動かない。
…までは別に構わないのだけれど。
「…武藤君が二人居るように見えるなんて疲れているのかしら。"いつも"の武藤君が半透明で薄」
「後ろの相棒が見えるのか!?」
ー本当に…?ー
言葉を遮った濃い武藤君は信じられないといった表情で半透明武藤君を指すので首肯して彼を見る。
半透明武藤君(何だかややこしい)も呆然としたまま私を見つめ固まっている。
濃い武藤君は半透明武藤君に目をやったが、彼もまだ状況を飲み込めてないようでオロオロと視線をさ迷わせ何と言おうか思案している様子だったので私は何も口出しせずに彼らを見守る。
少しの間があってやっと考えが纏まったらしい半透明遊戯君は彼を見てしっかりと頷いた。
ー君が…もう一人のボクがいいなら構わないよー
半透明遊戯君が立ち話もアレだしうちにおいでよと言ってくれたのでお言葉に甘えて彼の家にお邪魔する事にした。
(誰が聞いているとも分からないこの場所で話すのが幅かられる内容だったからだと気付いたのは少し後)
**
「じゃあ武藤君の体に彼の魂が同居してるって感じ?」
ー同居…まあ強ち間違いじゃないなー
武藤君が首から下げている金色のネックレス(パズルという名前らしい)が光を放つと彼の纏う空気ががらっと変わり柔和なそれになる。
そして後ろには今まで私と話していた彼が半透明の体でこちらを見つめている。
おじいさんから貰ったパズルを組み立てた日から武藤君そっくりな"彼"が現れそれ以降体を共有している、というのが大体の経緯らしい。
何だか漫画やアニメにありそうな話だ…!
ーあまり驚いていないみたいだなー
「頭がついていけてないみたいで驚いていないわけじゃないんだよ。えーと」
「もう一人のボクの名前は分からないんだ」
分からないの意味を尋ねるよう彼に目を向ける。一拍置いて名もない彼は武藤君越しに私を見据えた。
ー記憶がないんだー
「記憶がない、かぁ…鍵は多分それだよね」
光を反射しキラキラ輝くそれが完成してから、と言うのだからそれ以外検討もつかない。
最も当事者たる彼らはそんな事分かりきっているだろうけれど。
「今まで半透明の状態の武藤君や君が見た人は居ないの?」
その質問に彼らは同じタイミングで頷いてみせた。
そうじゃなかったらさっき会った時、口をあんぐり開けて自分は驚いていますって全開の顔はしてないよね、うん。
「武藤君のクラスメイトで雨之森菜乃って言います。初めまして」
ー知ってるぜ。相棒がよく俺に話して…ー
「わーわー!!」
頬を真っ赤にさせて彼の言葉を遮ぎる武藤君。さっきの彼といい人の言葉を遮えるのが趣味だったりするのだろうか…と自身でも意味の分からない思考を巡らせる。
ー菜乃って呼んでいいか?ー
「あ、はい。構わない…」
「もう一人のボクだけずるいよ!ボクだって名字呼びなのに!」
ーもっと砕けた話し方で構わないぜ。これからよろしくな菜乃ー
無視しないでよ〜と頬を膨らませる武藤君が可愛らしくてクスクス笑っているときに、ひとつ引っかかる言葉に首を傾げる。
"これから"と彼は言ったけど大して深い意味はないのだろうと結露付けて出されていたお茶を一気に飲み干した。
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極夜