インパクター


この日は私の誕生日だからうんと祝ってね。と一ヶ月以上前から言っていたはずなのに彼は前日から突如用事があるといって出掛けてしまった、一人で買い物も滅多に行かないようなあのインパクターがだ、有り得ない・・・と司令室の椅子に転がりながらそういえばスプリンガーは苦笑いをした

「まぁその代わり俺たちが祝ったんだからいいだろ」
「そりゃあそうだけどさぁ、私はダーリンにも祝って欲しかったの」

ダーリンだなんて呼ぶけど私と彼は付き合ってるかどうかと言われると多分付き合っては無い、好きとか愛してると言っても彼は返してくれないし、とはいえ邪険に扱う訳でもないのだから彼の優しさに密かに甘えた
他のみんなは朝起きるなら次々のクリスマスプレゼントのごとく誕生日プレゼントを渡してくれたおかげで部屋の中は未開封のラッピングされた荷物が山になっている、ありがたいことこの上ないけれどやっぱり好きな人に祝ってもらいたいのが本音だった

「そのうち帰ってきた時に散々言ってやればいいだろ?」
「・・・どうせその頃には忘れてるよ」

いい歳して恥ずかしいくらいに拗ねてしまいスプリンガーを困らせてしまったが誰だって好きな人には誕生日くらい祝って欲しいしそばにいて欲しいだろう、部屋に戻ってキレイなラッピングが施されたものを次々と開けていく
珍しく白いワンピースやら、ヒールが低い綺麗なパンプス、一風変わったレースが沢山のカチューシャ、小さなブーケ、次々と出てくるそれらは白を基調としていてクリスマスが近いからかと察して笑う、きっとレッカーズの仲間たちみんなで考えてくれたものなのだろうと理解したからだ
薄情者の彼のことは忘れてプレゼントと共に渡されたメッセージカードを読んだりしては頬を緩めつつ次の箱を開ければ真っ白だけど有り得ないほど恥ずかしい下着が入っていて思わず贈り主を思い出しては今度あったらあの単眼には説教してやると閉じた

その日の夜、女心を理解してくれていたらしいサンドストームから渡された入浴剤のセットを使って気分良くバスタイムを楽しむがやはりまだ彼は帰ってきてくれない様子で湯船に半分顔を入れて ダーリンのバカ と呟いた声は消えた
通信履歴もなければ出入りの痕跡もなく、日付も変わる頃になってもまだ彼は帰ってこずあぁせめて顔だけでも見たかったとベッドの中に潜り込む

「来年は祝ってね、インパクター」

恥ずかしくて本当は言えない彼の名前を呼んで目を閉じた、ふと目覚めれば黄色い蛍光灯のような明かりが二つ部屋の中で光っている、電気をつければ白い灯りは目を刺激してしまうも見慣れた紫と黄色のボディが目に入る

「あれ、ダーリン帰ってきてたの」
「さっきな、起こして悪かった」

明日にしときゃ良かったかという彼に時計を見れば時刻はちょうど日を跨ぐかどうかの瀬戸際である、何があったのかと言えば彼はいつも真一文字の口をさらに引き伸ばした後に「お前の誕生日だろうが」といった、あぁそうだった誰かさんが祝ってくれないから忘れてたんだと思い出せば彼は左手を差し出した

「なにこれ」
「誕生日プレゼントだ、要らなかったら捨てろよ」

それじゃあなと言って部屋を出ていく彼を見送って手のひらサイズに収まる小さな箱を開いて直ぐに寝巻きのまま廊下を飛び出して彼の足元に飛びつけば危ないと怒られてしまう

「ねぇ、ダーリンこれって!」

大興奮で静かな廊下で叫んでしまえば声が響き渡り少し恥ずかしくなりつつも抑えられないこの気持ちを彼にぶつけた、だってこれってその・・・あの・・・

「指輪がいいって言ってたろ」

確かに言った一ヶ月前に冗談で 私誕生日だからダーリンから貰うなら指輪がいいな、あっ結婚指輪だよ?それ以外受け付けないからね。 と盛大な言葉を吐いたのだ、絶対にくれないと思っていたから
ピンクの小さな石がキラキラと輝く彼にしては随分と可愛い指輪に目を丸くして指輪の入ったケースを差し向けた、これってどういう意味ですかと問いかければだからお前が・・・といったあとに少し考えた顔をしていう

「結婚指輪のつもりだが返却は受け付けるぜ」

あいつらから貰った服も靴もあっただろ?と言われてなんのことだと思い返してあぁ!と声を上げた、それってそういう意味なの?と驚いていれば彼は手の中のリングケースを奪い跪いた

「地球にゃこうして求めるんだったか?」

結婚してください といつもと変わらない彼の声色でいわれては口元を抑える、普段の告白には何も言ってくれないのにといえば彼は驚いた顔で返事をしてたつもりだと言う、あぁとかそうか・・・が彼の返事だったらしい

「それで返事は」

急かす彼に必死に歪む視界の中で頷いて抱き着いた、思ったより指輪の加工が長引いたというものだからどういう事だと顔をあげればインナーモストエナジョンから作るのに専門家に頼みにいっていたのだといわれ彼の冗談では無いことを理解してしまう

「ダーリン本気だったんだ」
「まぁな、それよりまだ俺はダーリン呼びなのか」

間違っては無いがそろそろいいんじゃないのか?と彼は顔を覗き込んでいう、顔に熱が篭もり喉が渇いていく差し出されたリングケースに手を添えて必死に彼の名を呼べばインパクターは満足そうに私の名を呼んだあと冗談を口にした

「合格だな、ハニー」

あぁ本当イジワルな人なんだからと額に落とされた唇の感触を味わいながら指輪に視線を落とせばピンクの石は喜びを表すように小さく光った

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