ホイルジャック


「最近ジャッキーってば全然構ってくれないの」

オマケにここ数日特に酷くって部屋まで追い出される始末なの。と訴えをかける彼女は今にも泣きそうにカラーコンタクトを入れた瞳が潤んだいつの間にかこの夫婦の相談相手になってしまった軍医ラチェットはそんなに気にしなくても…と言いたい気持ちを押さえ込んで「きっと何か発明品が危ないから君を傍にいさせたくないんだろう」と慰めるも彼女は顔を上げて、でもホイーリィったら一緒にも寝てくれなくなったし部屋にも帰ってこないし何してるの?って聞いても曖昧に返事を返すの!きっと浮気よ!と彼女はヒステリックに叫び暴れるあまり長い爪がパキッと折れてしまう

「あぁんもう!最悪っ!」


染めたてのブロンドを揺らした彼女は大きく叫ぶものだからラチェットはどうして人の発生回路は簡単に切れないのだろうかと多少思ってしまいながらも彼女の背を撫でた


「いやぁすまんすまん」

そういって久方振りに二人の生活空間に帰ってきたホイルジャックは如何にも怒っていますと腕を組んで頬を膨らます自身の妻に困りはしつつもあぁ今日もかわいらしいと思った

「私怒ってるんだから、カワイイとかって言われても許さないからね」

彼の考えを察したらしい彼女は強く睨みつけるつけまつ毛もアイラインも無くなった本来の彼女の瞳は鋭さを出そうにもあまり威圧感は感じられなかった、ホイルジャックはあぁ困ったなぁどうしたもんかなぁとニコニコと笑うものだから耐えきれなくなった彼女は泣きそうな顔でどうして最近帰ってきてくれなかったの。研究室も出入り禁止だなんて酷い。と訴えかけたが相変わらず口を割ろうとはしなかった

「そんなに隠し事をするならわかった、離婚する」
「ええ!?そんな殺生な、そんなこと言わんと吾輩きみが居なくなったらどうして生きていけばいいのか…」
「そんなかわいいこと言ったってここ数日私の事放置してたんだから生きていけるでしょ」

ぴーぴーわーわーと夜更けのサイバトロン基地の中で夫婦喧嘩は勃発した、頼むから離婚は勘弁してくれというホイルジャックにじゃあ理由を説明してよと怒鳴る彼女、いつまで経っても答えを出さない彼にもういい…と黙り込む彼女は布団の中に潜り込んでしまう、そうなるとホイルジャックも体格差のせいで追いかけられなくなってしまい分厚い布の上から彼女の名前を呼んだ
チクタク・・・チクタク・・・と時計の針が鳴り響く中で「はぁ…どうしたもんかなぁ」と呟きながらいよいよ部屋を出ていってしまう音を聞き顔を出した彼女は耐えきれず泣き出した、こんな子供みたいなことで彼と喧嘩をして離婚なんて単語を出すなんてどうかしている、本当に捨てられるかもしれないと思い部屋を飛び出そうとした途端ドアの前には彼がいた

「ホイルジャック・・・わたし・・・なに、これ」
「お誕生日おめでとうさん」

そういって差し出された真っ赤なブーケのようなそれに目を丸くする、何事か理解出来ずに入れば抱き上げられ部屋に連れ戻され二人のためのソファの上に腰掛けた彼は泣きそうな彼女の目元を拭い、これは枯れない薔薇なんだと語った、ブリザーブドフラワーではなく一本ずつ形作った人工金属薔薇で時間がかかって・・・という彼を思わずみつめた

「クサ過ぎるってラチェットくんにも言われたんだけどどーしても渡したくって」

だって薔薇が似合うからと彼は笑うものだから思わずその金属の薔薇に顔を寄せて泣きそうな姿を隠した、震える彼女に嫌だった?と問いかけるホイルジャックに彼女は「とっても嬉しいの」と震える声で答えた

「離婚なんて言わんで吾輩とずっとにいてほしいんだがね」
「離婚なんてしないよ、ずっとずっと私たち来世も夫婦だし」

強く抱き締めてきた彼女にホイルジャックはフェイスマスク越しに顔を弛めた、そういえば実は私も話があったの・・・と彼女はつぶやく、なになに?と顔を寄せれば耳元で囁いた「赤ちゃんできたかも」なんてこったとホイルジャックは彼女を連れてテレトランワンの前にいきみんなを叩き起した

「えらいこっちゃ!吾輩パパになりますわ!」

一体誰の誕生日だかと寝起き眼の彼らはくすくすと笑った後にフリーズするのだった

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