レジェンズスプラング


まさかこんな時期に恋人から振られるだなんてと寒空の下一人佇んだ彼女はハァ…と溜息を零した

「なんだ振られたのか」
「気付けば別れてたヤツに言われたくない」
「なっ!別に俺は別れたわけじゃ」

街は一面クリスマスムード、トランスフォーマーも人間も関係なく手を取り合ってカップルたちは笑いあっているのが数日前に振られた今では憎い程だった
向かいに座っているライムグリーンに眩いレモンカラーの胸をした彼は焦った顔をしているが彼もまたおひとり様というやつである、別事件からやってきた彼は今なお別れたらしい恋人を想うという一途さは羨ましい程である
二人して適当なファミレスの中から外を眺める、恋人達は手を繋いだり抱きしめあったり…キスをしたり

「わぁん!こんなはずじゃなかったのに!」
「俺だってそうだよ!本来ならかわいい恋人がいたのに」
「私だって素敵な恋人として過ごすはずだったのに!」

二人して人のいないファミレスでそう叫んだ後に顔を見合せてもうやめのう…といった、気付けば自然消滅していたスプラングに比べればしっかりと言葉に出して振られた自分はマシだろうと言い聞かせた
店を出れば雪が降っておりホワイトクリスマスになるのなら余計にこの寂しさを埋めてくれる人がいれば良かったのにと思っていれば彼は変形していつも通り送っていくと言ってくれた

「本当ついてないよね私たち」
「まぁな、でも君の場合は直ぐに新しい恋人がみつかるさ」
「そういうスプラングだって滅茶苦茶モテるからすぐ出来るよ」
「そういえば…新しい恋人は欲しいって思うのか?」

気を使ってかラジオを流した彼はクリスマスムード全開の音楽チャンネルを消してニュースを流してくれる、その問いに対していい人がいればねと返事をして反対にスプラングはいい加減アーシーさん以外は考えていないの?と問いかけた

「…まぁないことは無いけど」
「え?本当に?気になる人いるんだ」
「あぁ」

特別仲がいいんだから教えてよというも彼は渋った、真面目な彼だから茶化されるのが嫌なのかもしれないと判断し家に着く頃には会話は別の話題になっていた
恋人はいないクリスマスだが彼と過ごせて悪くはなかったとそのグリーンの車から降りる、家に入ろうとする直前名前を呼ばれ振り返れば彼は変形した元の姿でこちらを見つめていて複雑な表情をした、スプラング?と問いかければ彼は深呼吸をした

「さっきの話なんだが君の新しい恋人に立候補したい」

白い雪の中で光る柔らかい青い彼のカメラアイを見つめる、冗談では無いことは明白だったが答えを出さない彼女に「それだけだ、それじゃあいいクリスマスを」とあと数時間で終わるその日に告げて帰ろうとする彼を呼び止めれば振り返る、寒いはずだと言うのに顔の熱が上がったが今いえることはこれだけかもしれない

「取り敢えず寒いし…家上がってかない?」

クリスマスツリーもプレゼントもないけど、サンタが来るまで話をするのも悪くないし。なんて言い訳をすれば彼は嬉しそうに微笑んだ

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