インパクター


めでたい時期というのはどうやら種族問わず同じなものでどこもかしこも新年を祝う中で彼女とインパクターは単独任務に当たっていた

「こんな日なのにね」
「まぁ俺達には関係ないからな」

イベント事だからといって普段と変わらない彼に苦笑しつつも確かにと納得をして仕事を進める、普段のレッカーズとは異なる少数精鋭というよりもほぼ単独任務と言っても過言では無いものだろう
時刻はもう日付を跨ぐギリギリで任務を終えたばかりの二人は内容こそ簡単であったがそれ故にこんな時間こんな時期に態々頼まなくともと愚痴が溢れてしまいそうな程だった
任務地はとある惑星の裏側です人の移住地から随分と離れた場所に拉致された民間人の救出及び敵の殲滅であった、救援用の宇宙船も呼び終えて仕事を終えた彼女は緊張した身体を解しつつ相方であり恋人となったばかりのトランスフォーマー、インパクターを見上げる

「本当こういうの興味無いね」
「どうしたらいいか分からないだけだ」

素っ気ない彼の返事を聞きつつも本音なのだと知りながら彼女は苦笑いを浮かべ乗りなれた運転席に腰掛けた、乗ってきていたポッドで戻る途中だが彼はそちらではなく真反対にハンドルを切るものだから道が違うといえば大丈夫だ…という、何がいいのかと分からずに仕方なく座っていればふと自身の通信機器が震えた
誰かからの通信ではなく自身で設置したアラームで、任務とは全く関係のない新年を告げるものだがインパクターには関係もないかと静かに通知を切れば彼は「出なくていいのか」と短く問いかける

「いいの、なんでもないから」

恋人になったからといって仕事以上のものは互いに何も無いかと考え利口な社会の歯車の振りをしていれば前方で大きな爆破音が聞こえ身を強ばらせた
だがしかしフロントガラスに映るものはそんな血腥いものではなく、美しい色とりどりの火薬が形作り花火となったものだった、幼い頃ぶりに見たと思わず口を開けて眺めれば車内に声が響く

「気に入ったか?」
「知ってたの?」
「たまたまだ、好きそうだと思ってな」

普段こういうのも見に行けないしいい機会だろう。と続ける彼の声に内心酷く浮かれてしまうのも無理は無い
彼はそういう気遣いが上手いわけではないのだ、鳴り止まない花火を見つめながらどうせみるならこの姿じゃなくて本来の姿がいいと思わず彼のシフトレバーを撫でれば突如身体は宙に浮き目を丸くしていれば彼はこちらを見つめていた

「そういう甘えたことはやめてくれ」
「どうして」
「めでたい日だ、我慢が出来なくなるだろう」
「…めでたいからこそしたいことを恋人はするんじゃないの?」

挑発するように問いかければインパクターは顰め面を更に顰めるものだからクスクスと笑みが溢れてしまうものの彼の差し出され宙を彷徨う右手の先にキスをする

「あけましておめでとうインパクター、これからもよろしくね」

挨拶はしっかりとしなきゃいけないとレッカーズ全体に言い聞かせたお陰か彼は同じように挨拶を返しては顔を寄せる、まるで待ての出来ない犬のようで仕方なくこちらからひとつだけ鼻先にキスを落とせば彼は嬉しそうに笑みを浮かべる

「今年一年もお前の傍に居させてくれ」

懇願するような彼の言葉に少しだけ驚きを隠せずにえぇそりゃあもう…私こそ。とは恥ずかしくて言えずにただその意志を表すように彼の右の先端に手を這わせた、騒がしい花火はまだ鳴り止まない筈なのにその音は彼の口付けで掻き消された

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