スワーブ
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「暇そうだね」
「こんな時間だからな」
知ってる。とはいわずにピーク前やピーク後にいつもくるこちらを理解している彼はいつも通りの笑顔で人間サイズのグラスとボトルを差し出してくれる、この店のいい所はマスターである彼がそれはもうバックミュージックの如く話してくれることだろう
こちらが聞いてる聞いていないは関係なく
「ねぇスワーブ」
「なんだよ、こっからがおもしろいところだぞ?」
「好きだよ」
「知ってる、それで…」
残念ながら告白は見逃し三振の如く無視された、回数だけで言えば三振一アウトどころか二十七アウトほどは取られているだろう残念これじゃあコールドゲームだ
スワーブを好きになったのは意外な事だが彼の明るくいところ種族関係なく接してくれるところ影響を受けやすいところ案外傷付いた時は気にし続けるところ身長が低くて話しやすいところ…あげるとキリがないがまぁ恋は盲目とやらで全てが好きになっていた
猪突猛進、当たって砕けろ精神とやらで彼に初めて告白をした時、スワーブはいつも通りの大笑いをして
「なんだ?スキッズ達との賭けに負けたのか?残念だったな!」
これは俺の奢りだ。といってサービスでボトルを出してくれた為私はその日泥酔して貴重なロストライトの人間用トイレで胃の中が空になるまで便座の中と顔を見合せて熱いお見合いしたことを覚えている
それからはもう冗談だと思われていいとおもっては出来るだけ客の少ない時間に来て、彼と会話をして「スワーブ好きだよ」とちゃんと彼に伝えているんだというように名指しで告白するようになった
日課になったそれを聞く彼はもう飽きたらしく自分の話の続きをする、私の恋心を知るメンツは今日も負けるぞと賭けをしていたのも飽きてついには放置された
「ほらいい加減飲み過ぎだし寝る時間じゃないのか」
「大丈夫だよ、どうせ暇なんだしいいじゃん」
「俺がマグナスに怒られる」
だから帰れと彼はボトルを取り上げたものだから思わず彼を強く見つめる、ガラガラの誰もいない店内で静かにグラスを拭きあげるスワーブがこちらをみた
「ねぇ、本気で私スワーブのこと好きなんだよ」
酒に酔いすぎたかもしれないと思いつつおもわず溢れた言葉はもう元には戻らない、あんなに騒がしいスワーブが静かになるからきっと本気だと理解して貰えたのだろう、そのうえでどんな言葉が出るのかと思えば彼に笑みなどなかった
「ずっと知ってるさ、だけど俺とお前はマスターと客、仲のいいクルー同士…それでいいだろ、ほらもう水飲んで帰んな」
期待した自分を恥じながら渡されたグラスの水を飲み干して店を出る、それでも私は彼が好きなんだと思わず見つめた
「俺も友達として愛してるから、また明日も来いよ」
明日はフルハウス上映会だからな。といわれればあぁそういえば少し前にみんなでフレンズを見終えたもんなと思い出しながら店を出てスクーターに跨ったニコニコ笑う彼のあんな顔初めてだったと思う私の恋はまだ冷めないらしい。
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