インパクター
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「おいなんだそれ」
定刻通りといえるほどピッタリとやってきた彼が部屋に来るなりそう言ってテーブルの上を睨みつけた、報告書を仕上げつつ視線上げれば彼の鋭い警告色のオプティックの先には一匹のぬいぐるみがいた
「かわいいでしょ?それ」
「かわいい、か?」
「この間ロードバスターがお土産にくれたの」
報告書のデータを上げてテーブルの上のぬいぐるみを手に取って彼に見せる、年甲斐もなくはしゃいでしまうものの手作りのぬいぐるみは何処と無く彼に似ている…というよりもそっくりさんと言える程だろうがインパクターはそれをみてはますます顔を顰めたがふと彼は口角を緩めて意地悪に笑う
「珍しく女らしいもんを置いてると思ったが、そんなに俺が恋しかったか?」
そういわれた彼女は反対に目を大きく見開いて驚いた顔をして直ぐにまるで自分が恋しいからこれを傍に置いているのだと認識されたことに恥ずかしさを覚えその顔色を染め上げた
そうじゃない、違う。なんていいたい言葉はあるもののそのどれもが浮かばずにそういえばガズル達を連れて新しい任務に行って帰ってきたのはつい最近のことでその間はその気持ちがあったと思い出した
それ故に彼女は素直に うん…そうかも。と呟けば今度はインパクターが呆気を取られる
毎度のことでありながら素直な彼女にどう反応していいのか分からずに抱き上げて互いに顔を見つめる、彼が定刻通りに来る時間は決まって夜のことで恋人達が夜に羊を数えるために集まる事なんて少ないことは誰だって知っている
ベッドの中に落ちて口付けが落ちてくるんだと期待して目を瞑った彼女は何も起きないことに思わず目を開ける
「なにしてるの?」
「見られたくねぇだろ」
「…見られるって思ったんだ」
「……うるせぇ」
ちいさな人間の手のひらサイズである、そのフワフワのぬいぐるみの向きを百八十度変えた彼はバツの悪そうな顔をするが思わず笑ってしまえば大きな手が伸びてくる
このままあのぬいぐるみの名前を教えてあげたらどう思うのか。なんて彼女は思いながらも彼から与えられる優しい口付けを受け取ったちいさなあのこの背中を見つめて
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