アンブロン
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「土産が欲しいと言っていただろう」
「聞いてくれてたんだ」
そういうと彼は少しだけ困った顔をするがきっと少し照れているのだろう、手に取ったパンプスはどことなく懐かしいようなもので自身が身につけているボロボロのスニーカーとは真反対の美しさだった
ロストライト号が辿り着いた星は観光系の娯楽惑星でみんなが皆自由に遊びに出かけてしまったがアイリスはインドア派で必要なものだけを恋人のアンブロンに伝えた、仲良くなったロストライトの仲間達に腕を引かれて連れていかれた彼を見送ってから数時間後疲れきったような顔の彼が差し出したのは彼の手には随分小さな箱だった
出ていく前に冗談で「お土産楽しみにしてる」といったのを彼が覚えていたらしく差し出されたが相変わらずそういう所は細やかなのだと思ってつい笑みが零れる
「なんだかあなたのカラーみたい」
彼から受け取ってさっそく取り出したオレンジのパンプスは白いベルトがついていてまるっきり彼のボディカラーと同じだ、あまり気にもせずに買ってきたらしくそう言われては困ったように返事を零す
生憎とサイズは少し大きくて踵の部分に隙間があいていた
「サイズがあったのか悪い」
「ううんいいの、それよりも意外だったあなたから靴を貰うなんて」
「・・・別に自分の名前が嫌なだけでそのパーツが嫌な訳じゃあない」
「そう?にしても靴だけなんてよく売ってたね」
さんざん彼は自分の名前が駄洒落な事を嫌っていたし、オルトモードも好ましく思っていない為てっきり・・・と勘違いしてしまっていたようだった
問いかけに対してアンブロンは口ごもったが少ししてから回答する
「有機生命体向けのアパレルショップだったから服もあったんだが君にはこれが一番似合うと思ったんだよ」
とても恥ずかしそうにそういって目を背けられるが彼女は嬉しさのまま彼の硬い身体に飛びついて頬擦りをした
アンブロンは少し驚いた顔をするが満更ではないように彼女の背中に腕を回す
「今度は一緒に見に連れていってね」
「勿論だ、本当は今回も2人でデートしたかったんだがな」
そう言われてしまえば彼女は目を丸くしたあとゆっくりと顔に熱がこもるのがわかる、アンブロンは無理強いをしないし恋人としての意見をあまり強く言わないためその様に伝えられるとは意外だった
今度はサイズの合う靴をと彼に伝えればとびきり素敵なものを買ってあげると約束してもらえたがきっとこの靴に勝るものはないだろうと思いながら小さく微笑んだ。
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