デスザラス


愛おしい存在が幸せに過ごしているだけでデスザラスは幸せをほのかに感じていた
デスザラスが率いる軍団の中に一人だけ人間の女がいた、元は奴隷として宇宙にいた彼女をたまたま救って自身の船に置くようになってからというものの彼はアイリスというその小さな存在をさぞ可愛がったことだろう
彼女が微笑むだけで船は明るくなる、仲間達も喜んだ、それでよかったはずだったのだがデスザラスは近頃どうも何処と無く別の感情を感じた

「アイリス何処に行くんだ」
「デスザラス様、ええとニッケルちゃんのところにお勉強とお話をと思いまして」
「そうか気をつけていくんだぞ」
「はい、っていっても船の中ですから大丈夫ですよ」

それもそうだと彼ら薄く笑ったが胸のざわめきを抑えられなかった、新しい乗務員でありウォーワールドのメイン船医となった小型のトランスフォーマーであり元DJDのニッケルに近頃彼女は夢中だ、元からむさくるしさしか無かったこの船にやってきた唯一の同性ともなれば心を開くのもすぐの事だった
それまで自身を拾ったデスザラスも一心同体といわんばかりに過ごしていたはずの彼女はニッケルとまるでスパークを分けた姉妹のように毎日飽きることなく過ごしていた、元より医者見習いの彼女からしてみれば学ぶところも多いため必然的に接する機会が多くなるのは理解していたがこの迄とは予想は付かなかった

「またニッケルのところへ?」
「えぇそうです、彼女説明も上手ですから学べるところが多くって・・・ほら見てくださいノートがいっぱいになってきちゃいました」
「紙媒体がいいと言ってたな、また手配しよう」
「ありがとうございますデスザラス様」
「あ、あぁ」

その笑顔を向けられるだけで彼のスパークは幸せに包まれる、小さくて健気な彼女を好きにならないわけがなかった
ニッケルが来るまでデスザラスに引っ付いては離れずに何でも教えを受ける彼女を思い出しては仲間に嫉妬心を抱く等と彼は自身を悪態付いた、廊下ですれ違う時も2人は親友のように接していた比較的小さな体格ゆえにアイリスも絡みやすいのだと推測する。デスザラス相手となれば彼女は手の中が基本なのだから横並びになることなんて滅多にない

「はぁ」

あの笑顔が全て自分に向けばいいと彼は願う、それでも仲のいい二人の間を裂けるほど彼には勇気がない、例え戦場に出てどれだけ敵をなぎ払い恐怖に陥れたとしてもデスザラスもひとりの女を愛するただのサイバートロニアンなのであった。


「いい加減に鬱陶しいったらありゃしない」
「そんな事言わないでニッケル、貴方しか頼れないんだから」
「頼られるのはいいけど私はそういうことが分からないし、わかってても10割の惚気を聞かされるこっちの身にもなりなさいよ」
「だって…だって、デスザラス様がかっこいいんだもの」

ニッケルの私室でそういいながらテーブルに倒れ込むアイリスにニッケルは早く正式に2人がくっついて毎日行われる惚気がほとんどの相談に終止符を打ってやりたいと願うのだった
この船に乗ったことに後悔があるとすればこの2人のこと程度だろう、彼女は悪いタイプじゃないが中々に引っ込み思案で慕う相手に好意を伝えられずその結果毎日"かっこいいデスザラス様"の話を聞かされるのだから溜まったものじゃあない

「あぁ本当にかっこいい、素敵だなぁデスザラス様」
「わかったから惚気けるならもう教えないからね」
「ごめんなさいちゃんと聞くし勉強するから教えて、ニッケルしか居ないんだから」

この勉強会という名の医療知識を学ぶことについても彼に素直に言えばいいのにとニッケルはおもった、楽しそうにアナログな紙に筆を走らせる彼女に苦笑いする、とにかく早く2人が結ばれるようにと願いながら彼女は親友に今日もまた丁寧に彼女達の医療知識を教えていくのだった。

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