パワージョー


夕方五時半のチャイムが街に響く頃一体のロボが立ち上がり彼は素っ気なくパトロールに行くと告げて出ていった、仲間達はそれがただのパトロールでないことを知って小さく笑みを零しつつも返事をして見送った

「ほらもう夕方のチャイムがなったからみんな帰るんだよ」

校庭に響き渡る凛とした声にパワージョーはビークルモードではありながらも緩む頬を引き締めて校庭の前でタイヤを止めて変形した
いまだ帰らない少年少女達に手を焼いているひとりの女性に仕方がないと言いたげな表情で彼は子供達に「ほら警察が来たぞ?先生の言うことを聞かない子は誰だ?」と声をかければ楽しそうに子供たちは駆け寄った
相変わらず少年少女は無邪気にその巨大なロボットに張り付くが帰宅時間だから帰るんだと改めて伝えれば渋々ではあるものの納得して次々と赤と黒の異なる鞄を背に彼らは帰っていく

「いつもごめんなさいパワージョーさん」
「いや、いいんだよパトロールのついでの休憩だしな」
「本当いつもご苦労様です」
「今日もその…いいか?」

本来七曲小学校は彼のボスにあたる勇太の通う学び舎であり、パワージョーはそこの子供たちと仲が良かった、放課後に来るまででは無いにしてもそれなりに通っていた為かほかの教師や生徒も彼が来ることになんの違和感や疑問を抱かなくなっていた
教師の一人である彼女は今年からの新任で慣れないながらも生徒のことを考え行動する彼女の姿に密かにパワージョーは恋に落ちた

「お待たせしました、今日もよろしくお願いします」
「おう。よろしくな先生」

四階の五年生の教室の窓を開けた彼女はホワイトボードを窓側に持っていきパワージョーに授業した、とはいえ超AIという優れた頭脳を持つ彼に勉学は不要なものであり不慣れな彼女が生徒にわかりやすい説明ができるように彼に付き合ってもらうだけのことであった

「…となります、分からないことはありませんでしたか?」
「今日も完璧だ、すごく分かりやすかったぜ」
「本当?よかった、パワージョーさんにこうして付き合ってもらってから生徒のみんなにも好評で本当嬉しいんです」

私って説明が苦手だから。と恥ずかしそうに呟く彼女に確かに初めの頃は声も小さく説明もしどろもどろして分かりずらかったと思い出してつい彼はいつものようにからかってしまい彼女は顔を赤くして「パワージョーさんの意地悪」と顔を背けた

「悪かったって、つい…」

かわいかったんだと言えずに反対にしどろもどろとしたパワージョーに少し間を開けた彼女は彼を見つめてはしてやったりと言いたげな表情でクスクスと笑うと外は暗くなって再度チャイムが鳴った

「もうこんな時間…パワージョーさんといるといつも早いなぁ」
「そりゃあよかった、帰るならついでに送っていくが」
「すぐ用意しますね」

パワーショベルに送られることを嬉しそうにする女性なんて滅多に居ないだろうと思いつつ教室を出ていく彼女が書き消し忘れたホワイトボードを窓から手を差し伸べて消して元に戻そうと指で動かしては彼は思わずカメラアイを丸くする…

「明日はテストだからみんな嫌がるだろうなぁ」
「といいつつ簡単なのにしてやるんだろ?」
「どうでしょうか、結構躓いた部分でしたから」

学校から凡そ20分の位置にある彼女の家まで送り署に戻るというのが日課になって早数ヶ月、いつも通りの会話をしつつパワージョーはふと会話を変えた

「さっきさ…ホワイトボード消し忘れてたろ」
「え?そうでしたか?すみません」
「いやいいんだよ」

そんなことよりも気になる点があったんだと彼は歯切れ悪く話をするため何かと彼女は前のめりで話を聞く姿勢を取った為ホワイトボードの裏に記載された相合傘の下に記載された彼女の名前と自分の名前について問いかけた

「知りませんでしたきっと生徒のイタズラですね申し訳ありません」

注意しておくという彼女にそうじゃないんだとパワージョーはいうものだから何事かと疑問を抱く彼女に「俺は…嫌じゃなかったから」といった、仮に彼女が書いていたならそういう事なのかと思ったが当然子供たちのイタズラで残念な気持ちになってしまう。
だがそんな彼の言葉を聞いて彼女もしばしの沈黙を作り、パワージョーは見慣れたアパートの前でタイヤを止めて変な話をしてしまったかと反省していれば車内に彼女の声が響く

「私も…嫌じゃないですよ、パワージョーさんでしたら」

それって…と彼が聞く前に彼女はシートベルトを外して勢いよく降りてしまう、彼女の名を呼ぶ前に家の中に入ろうとする彼女はもう一度振り向いた

「パワージョーさんだった私とっても嬉しいです」

それじゃあおやすみなさい。といって狭い建物の中に逃げ込んだ彼女を追いかけられる訳もなくパワージョーは何度目かのそれって…と内心呟いた、そんな惚けた彼に喝を入れるように通信が入り彼は慌てて走り出す仕事はまだあるが今日はやる気が違う
明日の放課後の授業はなんて質問をしようかと彼は緩みきった頬を引き締めて現場に急行するのだった

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