ブラッカー
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そう呼び止められ振り向いた先には鮮やかな赤色が映る、何事かと思いつつも近頃の街の様子やデストロンの動きについてなどでデータ解析出来ているものをデータパッドを片手に彼の手の中で説明する
「流石お嬢ちゃんは仕事が早いな」
「その、ねぇブラッカー副官」
「どうした」
「"お嬢ちゃん"と呼ぶのはおやめ下さいませんか?」
いくらちいさい人であるといえお嬢ちゃんと呼ばれるには些か歳を重ねているのだと彼女は不服そうな表情を浮かべ彼を見つめた、元よりウィングウェーバーや若い面々に彼は"ぼうや"等と呼んでは不満気に思われており何度も言われてはいたが彼女にそれを指摘されるのは初めてのことであった
「不快だったか?」
「不快ではありませんが、私は大人ですジャンくんのような子供ではありませんしお嬢ちゃんと呼ばれる様な年齢でもありません」
「不快じゃないならいいだろ?それに年齢の話をするなら俺からしてみれば充分"お嬢ちゃん"だ」
そりゃあ数百万年も生きるトランスフォーマーに比べられれば人間なんて大抵が赤ん坊以下になる、同じサイバトロンに身を置く少年ジャンは呼び捨てであるというのにどうして自分はそんな呼ばれ方なのかと彼女は想い人であるブラッカーに思った
そんな彼女の不満は表情に大きく出ていたようでブラッカーは手の中のかわいい人の髪を優しく撫でた、全くもってそういった顔をしないで欲しいといいたげに
「名前で呼んでくれたっていいじゃありませんか」
まるで壁を作られているような気分だった、ジャンより後からサイバトロンに力を貸しているからかはたまた彼女が仕事が出来るゆえなのか仲間よりも一歩引かれているようなそんな風に感じられ表情を暗くさせた、困ったものだとブラッカーは彼女を見下ろしながら自分の中の不満も伝えた
「君だって俺にずっと敬語だろう」
「それは貴方が副官だからですよ」
「一緒さ、君が俺に敬語を使うように俺も君をお嬢ちゃんと呼ぶのは」
分からないと言いたげな彼女の表情にブラッカーはあぁ全く伝わらないのかと感じて仕方なく素直に言葉にした
「男として見られたいんだ、副官ではなく…ただのブラッカーとして敬語もなく、呼び捨てで」
それは君も同じだろう?とその金属の大きな指先で彼は器用に彼女の髪を掬い見つめれば彼女はブラッカーの言葉を理解し見る間にその肌の色を赤く染めていき顔を俯かせた、今日はここまでかと彼女を下ろそうとする時小さな声が聞こえるがあまりの小ささにセンサー感度を上げて「なんだ?」と問いかける
「私もブラッカーに名前を呼ばれたいし呼び合いたいの」
だからどうかお嬢ちゃんではなく。という震えた声の彼女にブラッカーは堪らなくなったどうしてこうもまぁ彼女は魅力的なのかと"お嬢ちゃん"と呼ばなくては抑えが聞かなくなりそう等と思いもしないのだろうがここまで頼まれては仕方が無いと彼はその瞳を見つめてしっかりと彼女の名を呼んだ、お嬢ちゃんよりもずっと心地のいい音を奏でたと思うとき手の中の彼女は嬉しそうに微笑んで「なぁにブラッカー」と返事をするのだからもう二度と名前以外は呼べないと思うのだった。
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