案外オレは情けないほどダサい男だったし、案外あの人間を本気で好きだと気付いたのは終わってからだった
そもそもオレはいつもそうだ、何事も終わってからこうしなきゃよかった…だとか、もっと考えりゃよかった…と僅かに考える、ほんのわずかな時間、本当に数ナノクリックレベルだ、戦争をしているオレ達にそんなものは不要だし生きてるならそれで御の字なんだからそこまで深く考えなくていい
けれどあの女についてのことは残念ながらどうやらオレは結構本気だったらしくて引きずってしまうのだった。
その女を知ったのは地球に来てスグだ、メガトロンの後ろを小走りで着いていく女は真面目な話をしていてメガトロンはそれに対していいだとか悪いだとか色々返事をしていた
難しい話は分からないが俺は種族問わず女という性別は好きだし、見た目のいいその女を【いい】と思っては隣にいたアストロトレインに「なぁあんな人間いたのかよ?」と聞けば奴も知らなかったらしく首を動かしてみては「初めて見たな」という、人間ってのはいい、小さいし柔らかくて衣類をしっかり身にまとったその下のボディがエロい
特にそいつは女らしい見た目でオレはそいつがいくらメガトロンの客人だとしても関係なかった
「よぉあんたが噂の人間だろ」
「こんにちは、ブリッツウイング」
「オレを知ってるのかよ、そりゃあ光栄だ」
オレは嘘が下手なタイプでよく顔に出るし、女にはよくそのニヤケ面が気に食わないと殴られる程だった。
女は俺を見上げては愛想良く笑ったから馬鹿なオレでもこの女は世渡り上手なタイプだろうと勝手に考えた、煽てておべっかを立てられてもまぁ悪くは無いと話を聞けば聞くだけオレはこいつのことが悪くないとますます感じて普通に仲が良くなった
「遅せぇだろ?送ってってやるぜ」
研究者として招かれた女はスタースクリームと二人で小難しい話をしていたがどうやら盛り上がっていたようで随分と言い合いになっていた、思わずドアをノックしてヘラヘラと声をかけてやれば女の鋭い眼差しが向けられて態とらしくヒールの音を鳴らして「お願い」と怖い声を出して俺の傍に来る
「スタースクリームの言い分はわかるけど彼のやり方はね…」
オレの中であぁだこうだと文句をいう女の話を本当に適当に相槌する、何故ならオレには全く話が分からなかったしコイツもオレがそういう話が分からないことを見越して愚痴を吐くんだ
目的地に近付いて行く度に女の顔色が変わって薄暗くなる、正直こいつは自分の家ってのがあまり好きじゃないんだろう、誰だってそういうのはある
「ねぇブリッツウイングは好きでない女を抱ける?」
「ケツと胸がデカくてデブとブスじゃなきゃ大歓迎だ」
「何それ下品な人」
声を出して笑うこいつにとってオレは本当に楽なのかもしれない、馬鹿だし無駄なことは聞かない、ロボットモードに変形して女を地面に置いてやるオレの手つきもまぁ優しいこった
高いハイヒールでコンクリートを蹴る女はニッコリと笑う、この帰りの笑顔が一番素の笑顔にみえてかわいいと普通に感じた「私も寂しさを埋めてくれる人なら大歓迎」と笑って言った女にオレはバイザーの下でカメラを回した、拡大したり縮小したり、ようやく家に入ろうとドアに手を伸ばした女に「なぁ」と声をかければ振り返られる
「おやすみブリッツ」
ニコリと笑う女は部屋に入っていった
あっ…オレ多分結構あいつのこと好きだな。と気付いてからはダメだった、もうエサを待つ犬のようにダラダラと涎を垂らしてあいつを見ていて、抱きたい抱かれたい接続したいセックスしたいという欲望が溢れていたし周りにもモロバレだ
流石に会議中にアイツのケツばかりをみていれば隣のアストロトレインに蹴られたから出来るだけ気をつけようとしたが目にはきっとハートが浮かんでただろうな、マンガの読みすぎかもだけど
「無茶ばっかりするからこうなるのよ」
「けどよぉ聞いてくれよ」
「ハイハイ、そうね」
今日のサイバトロンとの戦闘が白熱してオレは興奮した、全身のエネルギーがグツグツと燃えていて今すぐ何かをぶち壊してやりたかった
もっと戦闘がしたいとはしゃぐオレを抑えてリペアするこいつは呆れていたがようやく終えたのか立ち上がってもいいと言われて寝転がって硬くなったボディを伸ばせば間接パーツが気持ちよさそうな音を立てるし取れた右腕は元通りだ
「これでまた今すぐサイバトロンの奴らをぶちのめせるってわけだ!」
「そうね、あぁ新しい機能を付けといたからね」
「なんだよ自動追尾砲撃とか?前から欲しかったんだよな」
ようやく付けてくれたかと喜んで口を叩くオレに女は足の間にやってきては足の付け根を撫でて見上げて笑い、そして呟いた「拡大縮小機能」と、そしてその細長いオレ達と違う人間の指先でコネクタのハッチを撫でられてしまえばオレの欲望は性欲に簡単に変化した
「帰る時間だから送って欲しいな」
この女相当だな。と遊び経験がそれなりにあるのに思ってしまった、きっとジェットロンの奴らもビビるくらいにマッハでそいつの家に行ってベッドってやつに初めて転がり込んだ
ありゃあいいな、柔らかくて沈みこんで動きに合わせてギシギシと音が鳴るし、こいつは特別だと感じた
「ふふっ、かわいいヒト」
オレの上でそういって微笑んだそいつにあっ…こりゃあヤベぇわ…なんて思っちまったんだ、仕方ない
女は好きだ、寂しさを埋めてくれるし欲望を吐き捨てられる、オレは相手を好きにできるし後腐れない関係を求める場合は大抵オレみたいなやつが選ばれるしそれで大満足だった
無駄なデートやピロートークは得意じゃないがオレはこいつのベッドから出たくないと思うようになった、話していたいし触れられたいしその時点でまぁ相当女々しくはなっていたと思う。
「そろそろ帰らないの?」
「帰って欲しいならキスでもしてくれたら帰ってやるぜ」
「そう?困っちゃうなぁ…普通にキスがしたくなる」
オレの上で転がって笑うこいつは無邪気なガキのような時もあるし、その反対に手の届かない煙のような大人の女の時もある、それらに振り回されるのもまた良くていつもグダグダと時間を過ごすが結局そのリップの取れた唇にキスをされて帰される
本当はこいつに男がいるのを俺は知っていた、隠す気配もなかったから当然だろう、そういう女も過去にいたし問題が起きても別になんの後悔もないからどうでもよかったがこの人間だけはやはり違った
「ブリッツとの時間が一番居心地がいい」
ベッドの上の女の話なんて聞いちゃダメだ、嘘しか言わないし男のいる女なんて尚更最悪サイテーだ、と分かっていてもオレは溺れた
くだらないミスをするし飯は喉を通らない、そのくせにアイツを見たらデレデレとにやけてしまうし声を掛けられちまえば例えそれがアストロトレインからの誘いでも跳ねのけちまうほどだった
言っちまえばオレは浮かれてたんだ、たかだか人間の女に溺れていた
「そろそろ帰らないの?」
「ンー特に何も無いしな、もう一戦スる?」
「シない」
「ツれねぇな、ヤル気スイッチ入れてやろうか」
ベッドの中でいつものようなやり取りをしてもっと抱きたいもっと触れたいと願ってまた見下ろしてその細い首筋を舐めてやればクスクスとこいつの笑い声が聞こえる、こうした笑い声が好きだ
まるで犬や子供にじゃれつかれた時にのようなかわいい声が次第に女に変わるのはエロくて堪らない、足を撫でて互いに残った熱をもう一度と思っていれば家の電話が珍しく鳴り響いた、オレのことを押しのけて服も着ずに慌てて電話を取ったこいつを見た途端にオレは所詮遊びなんだと気付いた
けれどもそれがまた妙にムカついて猫撫で声で電話をするそいつを抱き締めて腰を撫でたりキスをしたら簡単に顔を手で押しのけられて挙句の果てに睨まれる
「ごめんね、友達の猫を預かってるけどじゃれついてきて」
こんなデカくて硬くてセックスの出来る猫がいるとは相手も思うまいとオレはわざとでかい声で「にゃあん」と鳴いてやればこいつは本気でオレを睨んで電話を切ると同時に出口を指さして帰れと命じた
それからオレはもう本当に不要な存在になった。
まるであれが夢だったかのように何も無くなった、廊下で見かける度に声をかけようと思うのに大抵難しい話を誰かとしていて近づける要素もない
代わりにアイツは前までつけてなかった指輪を左手の薬指に付けて、それを光らせるからムカついてアイツを見ることさえ意識して止めるようにした
それでも聞こえてくる笑い声や話し声が妙にスパークを締め付けるものだから本当にオレはどうしちまったのかな
「ブリッツウイング」
「…な、なんだよ」
久しぶりに呼ばれたと思って振り向けばオレを見つめていた、変わらない綺麗な姿にオレは接続も要らないからまた二人話をしていたいと思うくらいには惚れてるんだが向こうは違う
「拡大縮小機能を抜きたかったり、他に追加したい機能があれば言ってね、あなたに迷惑をかけたからいつでも手伝うから」
そうした言葉が如何に残酷かをオレは知っていたし、こいつも理解している、あの関係はもう終わりなんだと宣告したんだ
「いや…今はいい」と静かに言えば短い返事と共に何処かにあいつは行ってしまうからぼーっと見つめている間に隣にはアストロトレインが立っていてオレの肩を軽く叩いて「人間の女なんて一番厄介だからやめとけと言ったんだ」と知った口調でいうものだから、あぁ本当オレって女運がないのかもな…なんて一人言い訳をしつつ、それでもまだあの背中を求めてしまうのだった、ホントに情けねぇ。