『女遊びには慣れていた火傷には慣れてないだけで』

「アストロトレインって私の歴代の彼氏に似てるんだよね」

その言葉に俺も「お前も俺の歴代の女に似てるぜ」と作ったように平然とした返事をした
派手な見た目と男をそそるスタイル、どこか甘えたようでいてそれでもさっぱりとした性格にそれなりに積極的でギラギラした目、女としてはまぁ…悪かない、いや素直に好みだ。
俺は男として自分がそれなりに優秀なことを知っていた、地位も名誉もまぁ一般兵よりかはあって、かといって堅苦しくは無い、いい女を見れば声をかけるし、いい女に声をかけられたらノった
種族の垣根などどうでもよかった、生憎俺は有機生命体もいけるタチで地球に配備されてつまらないと思う中で現れた俺たちに協力する女が案外遊ぶにはもってこいの相手であった。それだけのこと。

歴代の彼氏に似てる

それは褒め言葉では無いことを知っていたが俺は浮かれていたんだ、どうやら俺はこいつにそれなりに入れ込む程度には惚れていたらしくその言葉に若干不機嫌になった。

「どうしたの?不機嫌な顔しちゃってさあ」

甘いその呼び掛けにふと意識を戻して見下ろせば服を乱したそいつは俺を見て笑う、何が面白いのか…いや可笑しいな、人間でもなく恋人でもない俺はあからさまに嫉妬じみた態度で不機嫌面を晒していたのだから。
女は俺の腰のコンポーネントから胸部の格納庫、そして背中の羽を撫でてはもういいのかと言いたげに目を細めてみつめる

「ここでいうセリフにしては萎えさせる事を言うからだろ」

ここ…というのはこいつのベッドの上で俺はわざわざ不要なはずの拡大縮小機を用いてまでこいつと乳くりあっていた、それは所謂濁した冗談ではなく異種族でありながら本当にだ。
俺たちは接続という人間でいうセックスをする仲で、それをこいつはセックスフレンドと呼ぶ、そんなただれた交友関係が人間には普通にあるのかと初めて聞いた時には驚き面白おかしく笑ったものだが女は「人にもよるけど私は寒い夜が嫌なの」といった
俺がベッドに入っても温もりがあるわけじゃないだろ。と言いたかったのにこの女はそんなセリフを言わせる前に俺の指にその細い指を這わせた

「アストロトレインなら暖かくしてくれるでしょ」

慣れているんだと感じたのはその仕草が一時の迷いや遊びではなく、男を誘うことに長けていたからだ。

「はじめまして、今日からお世話になります」

律儀に頭を下げた女はメガトロンが優秀だからと連れてきた
まるであの方の愛人のようだと全員が思ったほど見た目からは優秀に見えず軽薄そうな女だった、デストロン軍団に人間を入れるだなんてどうかしているという反論はこの女の言動でゆっくりと変わった、日が経つ事にあの女は…から彼女はさ…に変わって、あんまり頭が良くなさそうだよな…という評価から彼女結構勘違いされるタイプなんだよな…に変わった
そうして女の手のひらでコロコロと転がされる男たちは本当に馬鹿だがそれも理解してメガトロンはあの女をここに招いた、そして自分への反乱分子となる存在を抑えたのだ

「ったくメガトロンのやつ、お前からもいえよ俺様がどれだけ凄いことをしてるかって」
「もうスタースクリームったらそんなに怒ってたらハンサムな顔が台無しじゃない、大丈夫メガトロンも分かってるけど今はその時じゃないってだけでしょう?」

廊下で騒がしい声が聞こえて思わず視線を向ければそこにはこの軍一の反乱分子となるスタースクリームがあの女を相手に猿叫するように意見した、しかし女は慣れたように笑みを浮かべてスタースクリームの手の中で宥めてやった

「大丈夫よ、スタースクリームが優秀なのは理解してるから、ね?」
「……本当にお前は分かってくれるのか?」
「当然だよ、私だけがスタースクリームの全てを理解してあげる」

だから大丈夫。と近づいた頬を撫でるあの女はあぁして誰もに甘い言葉と態度をして特別を演出した、全員がそれを自分だけだと思っていることを俺は理解していた

「もう一回、もう一回シて」
「明日から輸送任務が入るから無理だ」
「だから…シたいのに」

暫くしてくれなくなるじゃん。と頬を膨らませた女の顔を誰が見た事あると思う?どうして俺がベッドに招かれたのか、何故そんなチャンスがあったのかは俺が輸送参謀として送迎車代わりに使われているからだった

だからこの関係だけは特別だ、誰にも真似出来ない

どうしようもないクズな女だと知っていてもその甘えた姿がどうしようも無く思えて俺は深い排気音をわざと吐き出して「仕方ねぇな」といった
トランスフォーマーとは違う、血と肉と骨で出来た身体は柔らかく初めて触れた時はブヨブヨとして少しだけ奇妙な感触だった
同じ種族のもの同士はその物理的なものからキスのひとつも出来やしない、けれど女は首に手を回して顔や身体をさらに密着させる、金属同士の聴音センサーに触れる嫌な音もしやがらない

「アストロトレイン…気持ちいい、もっと激しくして、もっと…今日だけ」

艶めいた女が普段とは違う声で呟く、その都度俺の中の回路が加速して興奮して更にこいつを激しくしてやる、腰を掴めば指の後が薄く残ることも唾液と俺のオイルが混じり合うその姿は何処までもエロい
今までどれだけの女を抱いても大抵すぐに飽きたのにこいつは違った、飲めば飲むだけ喉が渇くように求めてしまう、薄く細められた瞳はまるで危険な生き物だろう

「相棒随分とあいつと仲良いよな」
「普通だろ、また何かして怒られたのか」

ブリッツウイングとの任務は暇だとしても多少マシだ、というよりも面倒事が増える確率の方が上がる、こいつは飽き性で多動症かというほど落ち着きがない、しかし戦闘になると途端に大人しくなるこいつは生粋の兵士だし考え自体は嫌いでは無い
だからこそ相棒として互いにトリプルチェンジャーの参謀として仲良くできるものだ、さっきこいつに言った また…というのは大抵あの女にちょっかいを掛けては「もう邪魔!」と言われるところをよく見るからだった
ブリッツウイングは口を器用に伸ばしてはブー垂れていう

「長期任務に入るから一発ヤラせろって頼んだのに『旦那がいるからごめんなさい』って言ってきやがったんだぜ」

旦那?といわれては理解が追いつかずに深い返しができず一言発して黙ってしまう、まるでオウム返しのように呟いた 旦那 という単語を聞いたブリッツウイングは知らないのかよ?と聞いた
丁寧にもこいつは俺に人間同士のパートナーが恋人からさらに先に進めば互いを所有し合う関係になるのだという、紙の上だとしても人間の法律で出来たものは確実だった
だというのにあの女は抱かれていたのかと思わずにやけてしまうのはそれでも俺が求められていると思ったからだ、しかしながらそれは簡単に裏切られてしまう、大した女だ。

長期任務を終えて作戦報告に向かえばメガトロンと共に談笑するあいつの左手の薬指には真新しいアクセサリーが付けられていた、小さい筈なのに大きく見える石はギラギラと照明の光に反射して俺のカメラアイを刺激した

「おかえりなさいアストロトレイン」

任務報告だと察した女は直ぐにその場を離れて行ってしまうのを見て人間時間で約数ヶ月戻ってこない間の地球でのデストロンの様子を聞きつつ自身の作戦報告も終わらせた
これで終わりだと一歩後ろに下がろうとすればメガトロンの赤いオプティックがこちらを見つめていた

「アレはどうやら一人の男の所有物に成り下がったらしい」

軍の下らない男たちの手綱を握っていたから残念だがそこまで縛る権利はワシにはない。というヤツが言いたいことは理解している、お前も所詮は遊びでしかない立場を理解して職務に励め…ということだろう
作戦室を出て直ぐに俺は壁を殴った、中枢回路に逆流したオイルが迫り上がるようで気分が悪い、俺は相当あの女に惚れていたのだと思い知らされる

「アストロトレイン?」

あの女の部屋に行き早々に握ってやった、手の中に広がるのは女の熱と感触で力をもっと加えてやればこの女はこの姿を保つことは出来なくなる

「もう終わりか」

ブレインの中で捻り出してようやく出た言葉はそれで女は苦しそうに顔を歪めながらもこちらをみた、ちらりと覗いた左手には薬指がついていた
ハクハクと何かを言おうとする女に僅かに力を緩めれば酸素が足りなかったのか必死に呼吸をした、ヒューヒューと肺に息を吸い込ませるような激しい呼吸音と床に手をついて必死に肩を整える女はゆっくりと落ち着きを取り戻し、そしてこちらをみた

「やっぱり、アストロトレインって私の元彼たちにそっくり…」

あの人とは大違い。
そう言って笑うこの女はメガトロンが選ぶだけのことはある底意地の悪さと度胸を持っていた、拡大縮小機能を慌てて稼働させて倒れ込む女を掴んで足を開いてやりどんなことが起きるのか馬鹿でも分かるようにしてやれば女は「やめて」「いや」ともがいた
惚れてなんかいない、俺は遊ぶのが好きだが遊ばれるのが嫌いなだけだ、例えこの女の涙にスパークが僅かに傷んでも、女のポケットから落ちたパスケースに挟まった写真の男はどこまでも優しく誠実そうだと感じても、これはただ憎しみによる復讐心で傷つけて俺は悦に浸ってるだけだ

「大嫌い」

熱い視線でそういって、生憎そんなセリフ言われ慣れてるだろ、俺もお前も同じ穴のムジナなんだからよ。