14.曲げられない女の意地





3ヶ月弱だと言うのにあっという間だと感じられた
その中で確かな必殺技があるわけでも、確実に何かをみにつけたわけでもなくただひたすらに練習だけを積み重ねてきた
その結果が実を結べたらいいのにと自分の手のひらを眺めながら思った、緊張しながらも計量日がやって来るが特に減量苦も何も無く問題は無いはずだ
女子の測定のため関係者であろうと全員追い出されての計量は未だに慣れないものだったが2人とも問題なく終えた

「明日はいい試合しようねたづなちゃん」
「はい、お願いします三鷹さん」

スポーツマンらしい二人の握手に報道陣もにっこりと笑顔を浮かべる
何せ2人は絵になる、見た目の華やかさも当然だがリングに上がった時の姿と来たら男性でも顔向けできないほどの力強さを見せる
今回はガチガチのインファイター同士の戦いどうなるのか

【今回はチャンピオンからの指名ですが、なぜ馬上選手に?】

「そりゃあ1位の選手と戦いたいと思うのは当然ですよ、馬上さんは私と同じタイプだしカーニバルとかつまらないイベントは待ってられないし」

【デビュー3年目での挑戦、どうですか?】

「すごくドキドキしています、三鷹さん程の選手はおられませんからすごく楽しみです」

【今回はなぜ試合をすることになったんですか?何かあるんですか?】

報道陣の質問にたづなが固まった、内容だけなら最初に三鷹にされた言葉のとおり返せばいいだけの事だが違った

「鷹村選手を賭けてるんです」

三鷹は真っ直ぐと告げれば計量ルームの報道陣が慌ただしくなる、事を荒立たてたくはない各ジムの会長達が止めるが三鷹は止まらなかった

「どちらが相応しいのか、言わばこれは鷹村争奪戦マリッジバトルなんです、ベルトも男も私は譲る気なんてない、そのために私は彼女に勝つんです」
「勝つかどうかなんて分かりません、それに鷹村さんは私のジムの先輩ですし渡す気もありませんしそういうのは本人の気持ちじゃないんですか?」
「守は同意したの商品になると…それが認められないなら勝って私から全てを奪ってみなさい」

ビリビリと熱い火花が飛び散り会う、2人は強く睨みつけあったあと顔を盛大に逸らして部屋を後にする
報道陣たちはこれは面白いと

"鷹村争奪戦マリッジバトル!?女王と姫が火花を散らす王者決定戦"

夕刊は売れに売れたらしいがたづなは正座をし会長にことごとく叱られた、やって来はずの鷹村まで怒られるしまつであるがチケットは売れに売れたらしく女子にしては珍しく完売に納まったようで八木は有り難そうな顔をしていた

三鷹のいうマリッジバトルは確かに間違えてはいないのかもしれない、21になったたづなもボクシングの世界に来て早三年目だ、よく考えればあと数年で結婚しても不思議では無いどころか遅いと言われるかもしれない
特に三鷹は今年27であり、結婚しててもおかしくない女性だが未だアイドルとボクサーを兼任している異質な存在であった、ボクサーの選手生命は短いのだからいつ引退してもおかしくないとおもえた

「張り詰めてるな」
「鷹村さん」
「夕刊に俺様の写真がねぇのが残念だったな」
「あんなに大々的に書かれたのにたしかにそうですね」
「どうだ?俺様ベルトは取れそうか?」
「取ります」

もうあとは試合にかけるしかない、走ることも殴ることもやめてあとは明日に向けて専念するのみだと言って聞かせているのに身体は落ち着かなかった
王者の瞳というのはあまりにも自分と違い重たく、強く、鋭い瞳だとあの場で感じられた、本当に大事なのは実際は鷹村ではなくベルトのはずなのにたづなは鷹村を想ってしまっていた
それは誰から見てもそうなっていたがたづなは気付いてはいない

「小鳥は強いぞ、なんてたって小鳥じゃねぇ鷹だからな」
「鷹村さんが強いようにですか?」
「俺様と比べるんじゃねぇよ…まぁ、中の上くらいか」
「私はあなたの目から見て、どうなんですか」

怖かった、足元に及ばないのはわかっていても万が一彼の目から見てもはるかに下の場合何もかもを失うのは自分なのだから

「それは明日リングの上で確認してみな」

頭に手を置かれて彼は去っていく、それだけで頭の中の雑念が消えてしまう気がした
たづなはその日深く眠り、翌朝身体の疲れも何も感じずに起き上がり体を動かした

「絶好調だ」

あまりの身体の軽さに思わず声が漏れてしまうほどだ
東京ドームに足を運び自身の戦闘服に着替える、いつもとは違うその衣装を手に取れば用意をしたであろう八木が小さく微笑んだ

「こ、これって」
「いやぁなんかこの試合の意味を知ってね、つい」
「は、羽織るものってありますか?」
「えー、着ちゃうの?」
「だって恥ずかしいじゃありませんか」
「似合うと思ったんだけどなぁ」

八木の言葉に苦笑いを浮かべながら更衣室に向かいガウンを羽織る
前座の試合が盛り上がりをみせているのか客の声がよく聞こえていた
ふとドアが開き出番かと思いきや仲間たちに思わず緊張の糸が解れてる
話題はやはり鷹村のことばかりでどちらが勝っても面白いという青木村の2人と反対に必ず勝てる相手の弱点は…などと冷静に分析し背中を押してくれる一歩と板垣の違いが面白く感じた

「俺様は今日特等席で見るからな」
「ベルト着ける用意してくださいね」
「ジジイにしてやれ、俺様は要らん」

そうして言い合っていれば時間はすぎて前座の試合も終わりの合図が聞こえる、もう時期出番だと呼びに来た会長の声にたづなはぐっと拳に力を込めれば背中を優しく叩かれる

「取りに来い」

そう言い終えた彼はいってしまう
静かな控え室で思えた、あぁ鷹村さんが好きだと
これが終わったら必ず勝ったら思いを伝えよう、負けたらこの恋は終わらせようと
ボルテージのあがった会場に向けて続く廊下を歩き出す、負けられない戦いがあるのだから




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