8.高嶺の花



※モブくんがよく出るし話す


中学一年の頃の入学式
友達はみんな別のクラスで知らない人ばかりの僕は緊張で潰れてしまいそうだった
そんな中出会った彼女はまるで一輪の花のようだった

馬上たづな

クラスの中でも人一倍綺麗で可愛くて、高いポニーテールが特徴的だった話しかけられれば優しく答えて微笑んで僕はその表情に目を奪われた、でもきっと相手にされないと分かっていたから遠目に見るしかできなかったのだ
1年生の夏休みが近くなり、友達も程よくできた席替えがあり番号札を引けば嬉しいことに1番後ろの窓際だった、そして隣には

「よろしくね」

僕の好きな馬上さん、相変わらず綺麗な栗色の髪に高いポニーテールは馬の尻尾のように揺れて綺麗だった、水泳部に入ったと噂を聞いていてあぁ似合いそうだなぁなんて勝手に思っていた
授業中に消しゴムが彼女の足元に落ちれば拾われて手渡される

「ありがとう」
「どういたしまして」

それだけの会話なのに僕はもう人生バラ色みたいな気がしたのにあっという間に席替えで僕達はバラバラになった、まぁそんなもんだ
僕は美術部に入って絵を書いた、沢山デッサンしていろんなものをかくのに本当に描きたいものは彼女だ…けれど恥ずかしいから全然違うポニーテールの女性をモデルにして絵を描いた

「なにそれ面白い」

放課後の廊下で聴こえる女子の声、その中に馬上さんがいるのが分かるくらいに好きな僕は気持ちが悪いのは100も承知だった
水泳部だから髪の毛は少し濡れていて、プールの匂いがしていた、変態だと思われても構わないだって中学生なんてそんなものだろう
中学2年クラスは変わった、残念なことに彼女ともクラスは離れた、そんな中である日兄からチケットを渡された
僕の大好きなボクシングの試合だった、ミドル級タイトルマッチには最近よく聞く鷹村守が挑戦するらしい、テレビで見るだろうなぁって思ってたから本当に嬉しいけどチケットは2枚だ
どうやら兄ちゃんは彼女に振られたらしい、2人で行こうと誘っても傷心中には無理らしい

「水飲んでから行くね」

放課後の廊下で彼女は友達と分かれた、髪の毛が下りないように手で抑えて給水器に顔を寄せた、まるでひとつの絵みたいで綺麗だった、水泳部だけど室内プールを使ってるからかあまり焼けてない白い肌に制服の裾から見える二の腕のほくろに水を飲んで小さく動く猫みたいな喉、全部が僕を駆り立てた

「あの馬上さん」
「はい?」
「突然ごめんね、興味無いのはわかってるんだけど良かったら一緒にこれ行ってくれませんか」
「…ぼく、しんぐ?」
「あっうん、僕のお兄ちゃんがチケット取ったんだけど行けなくなってさ…友達もみんな都合悪いから良かったら、本当良かったらなんだけど」

早口で話してしまったから余計なことも言ったかもしれないし、そもそも聞こえたのかな?なんて思ってチケットを差し出したら彼女はその細い指先で1枚チケットを掴んだ

「ボクシング分からないから、教えてね」

僕は恋したんだ
完全に

あの日々が懐かしいと頑張っていた過去の自分を思い出してはため息をこぼす、今だに絵を描くために美大に入ってしまった
相変らす僕が描く絵はポニーテールの少女だった、そんなある日毎月それとなく読んでいる月間ボクシングを開いて驚く
栗色のポニーテールに、白い肌、綺麗な顔立ち、笑顔なんてまるで無くてそこに映るのはただ1人のボクサー

馬上たづなだった

慌ててパソコンで調べる、そうすればたくさん記事が出てくる掲示板にも何件かスレッドが立っており"美人ボクサーについて" "新人ボクサー可愛すぎンゴ"などといったコメントで溢れていた
そして2回目の試合があると知って慌ててチケットぷあに電話をかけるのだった。




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