この世界には三つの界がある。
神々や選ばれた人類が住まう場所・天界
人々が暮らす場所・地上界
そして天界にて裁きを受けし者が隔離される場所・冥界─ヘルヘイム─

天界と冥界は選ばれた主神級の者しか出入りができない扉がある。
彼女はただのしがない海の処女神であり、その場所に踏み入れることはない。
天界においてもその場所に近付くことは許されず、冥界にいけばその魂が帰って来れなくなると言われており、遊び半分に近付いてよい場所ではないと、幼少より教えられていたはずの彼女はその日初めて近付こうとしていた。

ゼウスから手渡された手形は通行証となり、例え彼女がどのような身分であれど二つを繋ぐ扉を開くことが許されるのだという。

彼女には恐れはなかった。
恋した乙女を止める術はこの世にはない。
たとえ何人たりとも愛を奪えず。
たとえ何人たりとも恋を止められず。

男が拳─ステゴロ─で戦うのならば、
女は心─ハート─で戦う生き物。

常に美しく、気高く、かわいく。
それこそが彼女──ルナリアのポリシーである。
自分が"かわいい"と思うものを極めることこそ、最高級の愛を得ることであり、愛の女神たちはそんな彼女を好んだ。
まだ無垢で若い青い少女のような女神は数時間前に出会った彼を忘れられないでいた。

海王神・ポセイドン

孤高の王たる王。
誰もがみな、彼を恐れ、口を閉ざし、静かに頭を垂れる存在。
彼女もその名を知っていた。同じ海にまつわる神の中でも彼はトップであるが、あくまでも人からの言伝で聞く神でしかないと思っていた。

夜の中、あの城のテラスで静かに佇んでいた彼にたった一言「好き」と伝えたかった。手形を手にした彼女は自分の左手の小指を見つめた。赤い糸なんてついていないけれど、ハッキリと心でわかる。
糸はグイグイと引っ張られてあり、運命は確実に自分を彼に導こうとしている。女神に対して運命とはまさに不思議なことかもしれないが、彼女にとって神も人も変わらない。みんな同じ気持ちを抱えて生きていると思って生きていた。

真っ暗な道を歩くと冷たい風が彼女に吹雪いた。
まるで人の悲鳴のように聞こえる長いトンネルの道は青い炎が小さく照らすのみ。
暗闇と青い炎はとても薄暗いのに、彼女はどこか深海のようで安心できた。彼女がそう呼ばれるようになったのは、苦しい恋をした娘が海に身を投げたからだった。娘を追いかけてきた青年は必死に娘を助けて深い海の底へ向かおうとするのを見た彼女はほんの少し手助けしてやった。
人の愛の美しさを本でしか知らなかった彼女は、それ以後、海にやってくる娘たちの恋を応援した。

時に告白をする場所にされたり。
時に悲しみに身を投げようとしたり。
時に乙女たちの恋の話をする場所になったり。
時に恋が叶ったからと海に向けて贈り物を送ったり。
時に愛し合う者たちが唇を重ねて愛を朝まで語り合ったり。

ああ、恋って素敵だなぁ──と思う時、いつか自分にもそんな恋が訪れるのだと思った。
運命の人がいて。その人と結ばれる。それは最後までハッピーエンドか分からない。それでもいい、ただ情熱的な恋をしてみたかった。

そして出会ったのだ、自分の運命の"王子様"
キラキラと輝く姿はまるで夜闇の中で星と月を照らした海のように眩くて、儚く静かに佇む姿はまるで乙女たちが思い描く理想の人のようで。
胸が強く締め付けられた。

ああ、早く会いたい!
はやくポセイドンに恋してるって伝えたい!

「って訳できたんだけどぉ〜、マジマジ女の子に対して酷すぎるよ!何ここ!めっちゃ寒いし余裕で女の子(あたし)のこと縛るし、平気で槍向けるじゃん!!あたしパーティ帰りに来たからまじでそのバッグしかないってば!!」
「怪しいな、ひっくり返せ」
「あーーー!!ちょっとDiorのリップとか入ってっから!リファのヘアコーム傷入りやすいからね!?財布の中見ないでよ!!乙女のプライバシーっしょ!」
「クラブアトランティスのドリンク券、ドリンク券、ドリンク券、スタバのカード、プリクラ、レシート、レシート……小銭、酔い止め」

───終わった。
彼女は長い冥界のトンネルを陽気に鼻歌を歌いながら歩いた。
そしてようやくたどり着いたところ、冥界の兵達に囲まれていた。

当たり前のことでもあった。
主神級でもない一般の下級女神が酔った勢いで来るとしても考えられないことであるからだ。
冥界は常に危険と隣り合わせの場所であり、どれだけ彼女が派手な見た目をした若い女神でも、冥界にいる以上は何か危険があるかもしれないと思うのだ。
そうして取り押さえられた彼女は兵に縄で縛り付けられて地面に膝を立てていたが騒がしく文句を言うばかりで、兵たちはなんの用でここに来たのかと彼女に問いかけた。

「なにって、ポセイドン様の連絡先聞きに来たの、ゼウスがさぁハデス様に聞けって言うからここに来たんだけど、いない系?」
「なんたる言葉遣い」
「なんたる不敬」
「なんたる恥知らず」
「そんなのどうでもいいからハデス様ってマジいないの?あたしめっちゃ歩いて足痛いから、ガチ凹むんだけど」

ハイヒールなんて歩くもんじゃないと彼女は足場の悪い冥界の土を踏んで文句をいうが、兵士たちは彼女と言い合いになるのもつかの間。

カツン──
カツン──

足音が響いた。
兵士たちはすぐに片膝をついたが、反対に立ち上がった彼女は音の先を見ると、そこには一人の……一人の……

「え!やばっ!めっちゃイケメン!!絶対ハデスじゃん」

兵士は思った、黙れ──と、しかし彼女は腕を後ろに拘束されながらもぴょんぴょんと飛び跳ねては「えーまじイケメンじゃんやっばーい」と笑うため、現れた冥王──ハデスは一体何事なのかと女を見つめた。

突如として現れたその女は誰が見ても下級女神であり。
随分と若い女神であり、ハデスをみても特に驚いた様子もなく平然とした態度を取っているが、兵士から彼女が持っていたとされる手形をみると、それは彼の弟であり、最高神・ゼウスの力の籠った特殊な通行手形であった。
ハデスでなければ分からないようなその特殊な通行手形、そもそもそんなものが無ければ冥界に来ることはできない。冥界にいる兵たちはみんな冥界で生まれ落ちたからこそ、そこにいるが天界へ行ける者はハデスからの許可が出なければ許されないほど。

「それで……貴様は何をしに来た」

ハデスは静かに女を睨んだ。
人畜無害な平和しか知らなさそうな女だが、ゼウスに手形を持つということはなにか特殊な事が天界に起きたのか。
ふと彼は今晩ゼウスが珍妙なパーティをして、そこに誘われていたことを思い出すが、残念ながら彼は自身の職務の兼ね合いで参加することが出来なかったが、この女が来たことはそういう事なのかと警戒するが、彼女は大きな目を丸くしてぱちくりと瞬きをする。

「だからさっきから言ったんじゃん、あたしポセイドン様の連絡先聞きに来たのに、ここのおにーさん達がすごい怖い顔してあたしのこと縛ったり、バッグの中めちゃくちゃにしたりしてきたの、まじ訴えるからね、あたしいい弁護士知ってるし……」
「……ポセイドン?我が弟か」
「そう!!連絡先教えてってゼウスに聞いたらハデスに聞けって言われてさぁ、それでここまで来たの。足痛いし遠いし最悪すぎるんですけど、マジ有り得ない、てかゼウスのお兄ちゃんってまじ?全然ゼウスのがおじいちゃん過ぎて、ハデスって普通のイケメンじゃんね」
「何故連絡先を知りたい」
「え?一目惚れしちゃったから」

ハデスはそこからしっかりと彼女の話を聞いてやった。
話のほとんどは彼女の無駄話であったものの、簡単に要約すればポセイドンが好きになり、話をしたいから連絡先を教えて欲しいという事なのだが、そのために冥界に来たのかと兵もハデスも驚いたが、彼女は「まじタイプなんだよね」と照れくさそうに言う姿は嘘偽りはなさそうであった。

「しかし余も奴の連絡先は個人的には知らぬ、教える気もない、悪いが帰れ」
「あんた達兄弟だよね?実は犬猿だったりするの?えっ、じゃあさ、ポセイドンって今彼女いる???」
「知らぬ」
「過去の彼女とか、好みのタイプとか、まじちょっとヒント欲しいんだけど」
「分かることは」

そなたのような女はタイプでは無いだろう。

その一言だけで彼女は黙ったがその場の全員が思った。
あの寡黙な孤高の王たるポセイドンがこんなにも騒がしくて野蛮な知能の低そうな派手な見た目の女神を好むはずがない……と、しかし彼女は「そんなの分かんないじゃん」と頬を膨らませるため、ハデスは聞き分けの悪い子供を持ったような気持ちになり。兎に角帰れと命じて通行手形を返して拘束を外して扉まで送り届けた。

送り届ける……というよりも追い出したかったのだが問題が発生した。
天界に続くドアが開かないのだ。
彼女は来た時のようにドアに手をかけるが一ミリも動かない。
ハデスは仕方なく開けてやるが、何故か彼女だけが天界に拒絶されたように通らなかった。

「ヤダーー!!こんなジメっぽいとこでスタバもない場所で住むとか無理すぎる!ヤダヤダヤダヤダ!!マジで帰してよッ!!」
「少し黙れ、これはどういうことだ……」
「ねぇまじヤバいって、あたし来週美容院予約してんの、メデューサがやってるところ、予約取れなくて毎回大変なのにどうしてくれんの」
「それは知らん、というより余も貴様には帰ってもらいたいんだ!」

ギャイギャイと言い合うハデスの背中を見て、あの女のせいで冥王もおかしくなってきた気がすると兵士たちは思いつつ。

結局、彼女は冥界で暮らし始めた……END、ではもちろん無かった。
原因はわからなかったが通行手形などの力も含めて冥界屈指の研究をしている、とある男にハデスは彼女を連れて会いに行った。

「これ……ゼウスさんのイタズラだ。行きはいいけど帰りはしばらく扉に弾かれるんだ、あの人らしい、あの扉に関しては」

蝿の王・ベルゼブブは興味深そうに話をしたが、当の本人はよくわからず、ハデスは時間経過で収まるのならばしばらくは彼の城で生活させれば良いかとうるさい客人を迎えてやることとなった。


……
………

「起きなさーーい!まじ暗すぎないここ?まじベルぴ(ベルゼブブ)ヤバくない?あっ、コーヒー入れといたよ、ハデス誘ったから三人で朝ごはん食べようよ。アダぴ(アダマス)は誘ったらガチギレされてマジ焦った、あの人怖すぎてウケるよね、でも朝ごはん食べてったから悪い人じゃないと思うだよね。てか昨日も夜更かししてたっしょ、マジお肌に大敵だからやめな〜?」

騒がしすぎるとベルゼブブは布団を剥がされるなり思った。
そもそも女性が男性の部屋に入ってくるとは何なのか。
冥界は薄暗いのに彼女だけが明るすぎるとベルゼブブは感じて怯えつつも「早く来てね」といって去っていった彼女に二度寝しようものなら、またあのテンションで突撃されるため、ベルゼブブは面倒だと思いつつも冥界の城を歩いて、食堂に向かうとキッチンの周辺で以前までは聞かなかった笑い声が聞こえ、それを通り過ぎて食堂に入ると、既に天界新聞を読みながら座っていたハデスがいた。

「起きたか」
「ええ、おはようございます」

ちょうど控えていたメイドが濃いめのコーヒーを注いでベルゼブブに差し出すが、隣のハデスは紅茶を飲んでいる頃「はいお待たせしましたー」と陽気な声で入ってきた彼女が台座を押してやってくる。
その後ろにはメイドたちが「ルナリア様ったら」とくすくすと笑いながら見守っているものの、彼女はハデスとベルゼブブに自分の分を含めて皿を置いていく。
ホイップとフルーツの乗ったパンケーキはクマの方に切られており。フルーツもハートや星の形にされて、それぞれしっかりチョコレートで顔まで描かれていた。
さらに蜂蜜の入ったヨーグルトにサラダとスープまで並べる彼女に当初メイド達がしたものかと思っていたが、どうやらいま客人として招かれていた彼女が用意したものだといわれ、二人はそれを食べるようになった。

「二人とも写真とか撮らないよねぇ、冥界もネット繋がるんだからSNSとかしないの?ほらベルぴとか研究のこと載せるのとかよくない?人類のみんな結構ふつーにコメントくれるよ?」
「興味無い」
「ハデスとか顔いいし、絶対インフルセンサーになれるし、天界も今どきモデルとかしてるし、そういう路線で冥界売ったら人増えるくない?ここなんか暗いしメイドちゃん達も雰囲気悪いと思うんだよね」
「路線……?冥界はそういうものじゃない、だが従者のことは考えよう」

奥でメイドたちの声が小さく聞こえたことに彼女は「流石分かってくれんじゃん」と笑って返事をした。
あれから数日、わかったことはこのうるさい女はうるさいだけに留まらず、兎に角待つことができないということだった。あっちへこっちへと城の中を歩き回りアダマスに見つかって殺されかけたかと思ったが「やっばー、超絶ロマンなメカボディじゃんかっこいいー!」と言ったことに難を逃れ、悪態をつかれつつも生活をした。

そしてその騒がしさがいつの間にか当たり前になる頃、兵士や従者がこぞって「ルナリア様」と言い始めたのである。
ハデスはその姿を見て、彼女が海の処女神という名の乙女の女神であるのだと知った。そうした乙女に関わる女神というのは穏やかで人を自然に惹きつける。うるさくも悪くはないと感じてしまい、いつの間にか人の中心にいる。

「ベルぴ、野菜残したらまじおこだかんね。パンケーキ食べてるんだから野菜も食べなよ、温野菜は朝にめっちゃいいんだよ、腸活しなきゃ大変になるんだからね、美容は腸から始めるんだよ」
「別にそんなの興味ないから」
「でもご飯残すのはよくないから、ふつーに食べてね、ほらハデスはちゃんと食べてんじゃん、お兄ちゃん食べてるんだし見習いなよね」
「ハデスさんは僕の兄じゃない」
「言い訳いらないって、ほら食べな食べな食べな〜ッ!」

元より城の研究室で生活をさせていたベルゼブブとハデスは最低限の交流だけだった筈が、彼女が来たことによりまるで三人は当たり前に生活をした。
ベルゼブブやハデスやアダマスなど、冥界に属する神は皆、天界の神よりも恐れられた存在であったが、彼女は何も気にせずに他の神に接する時と同じ形で触れるのを見るとハデスは少なからず彼女が悪くはないと思った。

無礼だとは思ったが完璧に礼儀作法がない訳ではない。
自我が強く、自分の信じる道を進む、それはまるで王に似たものだが、彼女は「乙女(ギャル)のマインドだから」といって長い爪で器用に裁縫をしたり、掃除をしたりと暇を潰すために冥界で生活を堪能した。

「そういやケルベロスのとこ赤ちゃんもうすぐっぽいよ、めっちゃソワソワしててヤバイからハデスからもなんか王様っぽく慰めなよ、アダマス様もなんか心配そうにしてたし」
「奴が……そうか、そうだな」
「三つ首のわんちゃんが産まれんのかな?それとも増えてたり?お医者さん?呼ばなきゃ出産大変そうだよね、てかケルベロスってメスいたんだね、まじ普通の犬とかいって噛まれたからびっくりしたよね」
「噛まれて笑っていられるそなたが恐ろしいがな」
「そんな褒めないでよ、てかさぁハデス仕事忙しいのか知らないけど休みなよ?あたしが誘わなかったら休み無しで夜まで仕事してんでしょ?みんなガチ心配してたからね、部下の人達みんないい人だからあんたに言わないけどめっちゃ不安そうだったよ」

午後になり執務室に現れた彼女がスコーンを焼いたからお茶にしようといって休憩になったものの、そのことをいわれたハデスは驚いてしまう。
確かにここ数日忙しかったのは確かだが顔に出したつもりはなかった。
部下たちはよく見ていてくれているのかと思いつつ彼女とたっぷり休んだ後に、そのことを告げれば「え?知りませんでした」といわれ、彼女がただハデスを見ていてくれていたのだと気付いた頃には彼女は中庭で花の手入れを手伝っていた。

そうしてベルゼブブもアダマスも彼女に絆され。
冥界の者たちも彼女を気に入った頃には天界に戻れる状況になり、名残惜しくも別れを告げる頃となる。
彼女は毎日髪を丁寧に巻いて、バッチリとメイクをして、少し伸びたネイルをみて「サロン行きたいよぉ」と泣いているのをみてハデスは彼自身この女を認めてしまっていた。

確かにうるさい女だ。
しかし、その芯はとても強く真っ直ぐとしており、彼は彼女に弟を紹介してもいいと思うようになった。

「マジ?」
「あぁ連絡を取ってみたところ、来週であれば来られると」
「……じ、じゃあ、あたしポセイドン様に会えるってこと?」
「そうだな、というか何故弟は様で、余は呼び捨てだ」
「だってハデスとあたしってマブ(親友)じゃん?嫌ならやめるけど」

真っ直ぐそういわれてしまうとハデスは小さく笑ってしまう。
この女は本当に面白いと思えた。
自分のことしか見えていないのに周りを優しく灯してくれる。
台風のようだがその暴れっぷりは、人々の悪い感情を奪い去るような優しい台風であった。

「いや、そうだな、友人だ」
「へへっ、義兄さんって言われる覚悟してなよ?」
「断る。そもそも奴はお前のようなタイプは好まないと思うが」
「ハデスとアダマスにも言われてる。でも……恋ってそういうもんじゃないから。好きって気持ちをちゃんと伝えることが先ずは大切だし、答えてもらえなくても仕方ないし、答えて貰えたらちょーーーっ嬉しいだけだよ」

だから大丈夫。人の気持ちなんてわかんないしね、と笑う彼女にハデスはそれならいいと思いつつも、ポセイドンが彼女を気に入ってくれたら少しだけ友人として嬉しいと思いつつ小さなデパコスブランドの紙袋を差し出した。

「これは余からの城で尽くしてくれた礼だ」
「……えっ、まじ?やばっシュウウエムラのクレンジングじゃん、ガチ神すぎる、選択まじ天才だって、ハデスって女にほんとモテるよね」
「知らんが無難らしいのでな」
「まじ完璧だよ、来週ガチで気合い入れてくるから」
「あぁまた何かあっては困るから余が天界の入口まで迎えに行く」

その言葉を聞いては、それじゃあね〜と手を振って帰って彼女はこの後美容院予約を入れているからと急ぎ足で帰ってしまい。
ハデスは静かになった冥界で息を吐いた。
城の中はどこもかしこもルナリアの話になってしまっており、帰すのはよくなかったかもしれないと、メイドの夕飯をベルゼブブと二人で食べるハデスは考えつつ、来週のポセイドンと彼女が無事に引き合わせられるのかと要らぬ兄心を働かせながら思うのだった。

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