第十五話
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「成功だ──パスが安定したようだ、それもこの魔力量と安定感からしてマスターとサーヴァントの正式契約並だな、カルデアを介したものよりも強いぞ」
「え?私と博士ってマスターサーヴァントの関係なんですか?」
「いや……令呪が見られないから違うな、多分パスを仮で繋いだ反応と魔力供給のせいだろう、それにしても驚いたな、あの行為がこれほど効率よく反応するとは、それに理論値を遥かに超えているな、何故だ?君との相性値か?いやしかしここまでの出力上昇は」
ブツブツと顎に手を添えて考え始めるテスラに彼女は呆れつつも「博士」と呼ぶとテスラは彼女を見た。
彼女は少し困ったような表情をしつつ「服を着てください」といった、確かに彼女はシーツを胸元までしっかりと抱いていたが飛び起きたテスラはベッドから立ち上がりいつもの調子ではあるものの、白いソックスとソックスガーターのみの全裸の格好であり、彼女も流石に視線に困ると言うとテスラは「あ……」と呟き二人は背中を向けあっては着替えを始めた。
パスが繋がり安定した魔力を得られたテスラはどうやらこの地との相性も相当いいらしく、ニューヨークの電力全てが自分に流れているのを感じられ、それは不安定なパスが安定化され、すべての電力が彼を認知したからだろう。
テスラは着替えを終えると久方振りのコーヒーを飲みながら満足そうな顔をした、エクレールも着替えを終えてホテル内が完全に稼働してることを察しつつコーヒーを片手に外を眺めるがやはり街は死んだように静かだった。
カルデアとの通信も未だに繋がらないかと感じながらも数時間前の不安は消えていた、反対にパスが繋がったという感覚は互いの熱を直に感じ合うようであり、しばらくすれば収まると言うがどこか落ち着かないと彼女は思っていた時。
────ビィィィーーーーーッッ!!
ホテル内にけたたましい警告音が鳴り響いた。
それはテスラが設置していた危機感知センサーであり、何に反応したのかとテスラはエクレールが持っていたデバイスを手に取り確認するが街中に適性反応が見受けられ、さらに轟音と地震のような感覚に何事かと思い再度外をみるとそこには先の戦いで襲ってきていた機械兵が何十体も街を歩き、空には巨大な機械兵が覆うようにいた。そしてローブを着た魔術師たちが儀式を行い次々と機械兵を呼び出していたことにテスラとエクレールは言葉を失った。
魔力は安定したもののこの数をテスラ一人で相手取ることは容易では無いはずだ、二人が険しい顔をする時、突如別の電子音が響いた。
「きゃあっ!なんですか!」
「むっ、これはカルデアの通信だ!」
それはテスラが用意していた小型の通信デバイスでカルデアに繋がるようにしていたがそれまで一切繋がったように電波を立てていなかったが今ははっきりと繋がっているため、エクレールは慌てて受信ボタンを押して「こちらカルデア記録係エクレール・アヴニールとニコラ・テスラです」と声を上げた。
外の轟音は激しくなり、まるで何かを探すようにあらゆる建物を機械兵が壊していく様はまるで昔見た怪獣映画のようにも感じられるがエクレールはテスラがいたかもしれないその街が壊れていく姿に胸が痛く感じられた。
『エクレールさん?!よかった…通信が繋がったんだ、こちら藤丸です!どちらにいますか?僕らも今ここの特異点にたどり着いたんですが、敵が突然現れてッ』
「私たちは今ニューヨーカーホテルっていう地下鉄からすぐのホテルにいるの、地下鉄からトンネルが繋がってて……あっ、博士?」
「そちらの戦力は?」
『適正のあったメンバーでエジソンさんやエレナさんや、あと何名か」
「ふむ、いけ好かないが条件に合った男を連れている。……であればエジソンに道案内を頼むといい、ホテルのロビーで待っているぞ」
そういってテスラが簡単に通信を切ったことによりエクレールは驚いてしまうが魔力からは辿られていないが通信から居場所の検知をされている可能性があるとテスラが言うため、二人は彼らと合流するためにすぐに用意をはじめこれまでから推測できることを話しながらエレベーターを降りて、広いロビーで互いに外のことを話していれば騒がしい音が地下階段から聞こえ、テスラが彼女を背後にやると地下階段からは見覚えのある面々が雪崩のように現れた。
「エクレールさん!!」
「藤丸くん!マシュちゃん!みんなっ!」
よかったと嬉しそうな顔をして駆け寄ったエクレールにカルデアのマスター藤丸立香は安堵した顔をして、マシュと二人で泣きそうな顔をした。無理もないだろう、彼らはこの場所にエクレールが連れてこられるのを目の前で見て何も出来なかったのだ。
時間にて二日近くだったがその間のカルデアは緊急事態となり、それはパニックになった。何せマスターが拉致されることは多々あったが(本来それも良くは無いが)カルデアのスタッフ、それもアヴニール家の"観測者"が拉致されたとなれば大事件であった。ニコラ・テスラは有無も聞かずに彼女のところへいったが、通信は完全に途絶え特異点を見つけることは困難であり、相当な知恵ものが犯人であるのだとカルデアでは話し合いが続けられた。
エクレールは戦闘能力も持たない、魔術師としての腕もない普通の人間であるが、その奥に秘められた血筋が狙われることは可能性として非常に高くあったが本当にそれが起きるなどとは思いもよらない出来事であった。
そして数十時間の末、ようやくシオンたちが観測出来たのはテスラの強い魔力だった。そこから場所を特定しレイシフトさせる形であったが、敵はしばらく出てこず、静かな街で彼らは索敵していたところ、突如強い電力供給が街で起きたかと思うと同時に敵が現れ初めて今に至ったという。
「それにしても、安定したメンバーって言うか不思議なメンバーだね、特に一人」
「フヒヒサーセン、拙者なんか適正あったしなぁんか面白そうな気配がしたのでつい…ネ?」
「あっちは早速なんか言い合ってるみたいだし」
呆れたような顔をする彼女たちの少し離れた場所では既にカルデアで何百回もみてきた「この直流バカがー!!」「なんだと交流まぬけー!!」という騒がしい声が聞こえて、エクレールは呆れつつも安心した。
どうやら今回やってきたメンバーはマスターとマシュ、そしてエジソン、エレナ、バベッジ、プトレマイオス、黒髭という面々で、主に知性のあるメンバーでこの特異点にはふさわしいメンバーであるのは理解できた、黒髭に関しては例外として深く気にすることはなく、外の喧騒も少し落ち着いた様子でロビーのソファにエクレールは招いてやり、忙しかったであろうカルデア一行にドリンクを差し出した、これまでの経緯を話すに際してカルデアとの通信が繋げられることになり、テスラは少し考えたあと繋ぐようにいった。
『ようやく繋がったエクレールちゃ〜ん!無事かい?怪我は無いかい?』
『合流出来たようでよかった、そちらの様子はどうだ』
「ご心配おかけしましたダ・ヴィンチちゃん、エルメロイ教授、私の方は大丈夫です、事の経緯と私と博士で推測することを話させてもらいますね」
まずこの特異点は自分たちの知る凡人類史とは違うパラレルワールドの時間軸の二十世紀である可能性が非常に高いこと、相手は科学知識のある魔術師、または両者が手を取っている可能性があり、以前オブセルが説明していた"観測者(アヴニール)狩り"が起きてしまった人類史であり、それ故にこの世界に観測者が完全に消滅した。
結果として観測者のいない世界は滅亡を辿ろうとしている状態で、聖杯を手にした彼らは別世界のエクレールを呼び出し、それを更に聖杯に捧げて機械的で永久に消えない観測者を作ろうと目論んでいる状態であった。
「そういえばエクレールさんが目的なのにこのホテルにはこないんですね、というかこの場所にこのホテルがあるのも僕ら全然気付かなかった」
「気付かなかった?こんな分かりやすいホテルなのに?どうして……」
藤丸が不思議そうにするがマシュも観測できなかったという。
地下から来た際もエジソンを先頭にしてみてトンネルを通ってきたがということに、ちょうどコーヒーを飲んでいたプトレマイオスが静かに声を出した。
「ここはどうやら、そちらの雷霆博士殿の強力な工房となっているようだ、それも特殊な固有結界が貼られているようだが、博士が行ったわけではないと」
「あぁ私はこのホテルの一室を工房にはしたがここ全体はしていない、そもそもここには導かれるようにやってきた、生前の私と縁深いこともあるからと思っていたが、何か考えられることでもあるのだろうか」
「特異点自体が与えた穏健か、はたまた消えた観測者たちが作り上げた記憶の一部か、吾でさえ魔力のひとつも感じられず認知もできなかった」
「我もだ、外の機械兵はニコラ・テスラの電力を感じた」
プトレマイオスの推測とバベッジの言葉にテスラはエジソンともみ合うのをやめて考えるような反応をした、起動したタイミングも含めてまるでテスラの魔力に反応するようだった。その上短期間とはいえ機械兵は対テスラ用にも対策を打たれており、まるで彼を理解しているようでもあった。
まるでこの街全体、この特異点自体がテスラの記憶の中の一部か、それとも彼のモノを模範して作ったのかと聞きたくなるようなものである。
「聖杯かなにか関連してるんじゃないかしら?敵の位置はここから少し離れてるみたいだけど、強い魔力源がこの街の地下にあるみたいなのよね、地図はあるわね……ここだわここ」
「ここは私たちが的に接触した公園ですね、そこで多分黒幕っぽい人と話したんです」
「外にいる大きな機械兵たちを動かす動力源と考えたらいいですかね、あんなに動かすとなると普通の魔術師では難しいと思いますが」
エレナはホテルのカウンターから取ってきたミッドタウンの地図を広げて、細い指でブライアント公園を指さした、実際サーヴァントの面々はあそこに強い動力源があるのを察知しているが、サーヴァントの気配がないこの街であれらを動かすのが魔術師なら相当な魔力量を持つというがエジソンは「テスラの電力に反応して敵が動くというならば、それを利用して、さらに何かを通してあの巨大な機械兵が動いてるのでは?」といった。
「ねぇ博士、一度魔力を完全に遮断することって出来るんですか?」
「いや、出来ない、だが重力を制限してみたが止まる様子はないようだ、このホテルの地下発電室も正常稼働している、私がいる以上なのだろう」
「じゃあ消えてもらって」
「貴様それでもここまで助けてきた私に言うのか!!」
何たる助手だとテスラがデコピンをするとエクレールは嘘ですよぉと返事をしつつ、とにかく作戦立てをしようと決めてそれぞれを話し始めた、まずはニューヨークの街がこれ以上被害に合わないようにするため外の機械兵や魔術師を倒すこと、そして聖杯を持ちエクレールを狙っているであろう黒幕を捕獲すること、エクレールは安全のためにホテルで待機、念の為にテスラが用意した安全装置たちがあることやホテルが敵から検知されてないことからの判断で話はまとまった。
しかしながら彼女たちがそれを話している奥でエジソンはエクレールとその左腕のブレスレットを眺めたあと向かいに立っているテスラを見つめた。
非常に物言いたげな視線がぶつけられるのを彼は無視していたが、エジソンは震える手で彼女を指さして、そしてロビーに響く声でテスラに声をかけた。
「この花畑交流男、きっ貴様、彼女になにかしただろう、あの子からとんでもなく貴様の香りがしているぞ!いいや香りだけではない、魔術回路自体か?開いた、開いたのか!?」
「必要なことをした迄だ何も問題ない、全く少し鼻のいい野生ライオンは多少のことで騒々しい」
『おや、テスラ博士、"多少"では済まなさそうに感じることをしてるようだけど?』
エジソンとテスラの会話に割って入ったのは通信機越しのダ・ヴィンチだった、そしてその通りにいるエルメロイ二世も眉間に皺を寄せて珍しくも全員がテスラを責めるような顔をしており、当の本人であるエクレールは富士丸とマシュに挟まれて三人で小首を傾げていたが、マシュがじっくりとエクレールをみると「確かにエクレールさん、随分魔力が強くなられてます」と感動したように声をあげることに彼女は照れくさそうに「博士にちょっとね」というものの、サーヴァント達はそんな可愛い話ではないとテスラをみていった。
『一体何をしたんだニコラ・テスラ博士』
重たい時計塔の講師の声が響くとテスラはふぅ…とひとつため息をこぼし、そして反省する気はなく当たり前のことをした迄だと彼らの前で論文を発表するかのごとく堂々と説明をした。
まずこの血においてカルデアとの供給が完全に立たれたこと、急ごしらえしたものの敵との大きな戦闘から宝具を放つしかなく、魔力不足に陥った。そして最終手段として以前から観測していた彼女の魔力量や魔術回路の拡張をさらに進めさせてもらいパスを繋ぎ合わせたということだった。
「みなさん何を危惧してるか分かりませんが博士は私を守るためでした、あまり責めないでください!」
「エクレール……」
鋭い視線がテスラに向かうのを見てエクレールは慌てて彼の前に立ちはだかり、あくまでも自分のためでテスラは悪くないと主張するが全員それは理解していた。しかし理解しているもののこの男は実に匠に相当なことをしてくれているのも事実であるとき、エレナが素直に言った。
「それは分かってるわよ、だけどミスター・テスラはあなたと簡易パスを繋いだ訳じゃなくて、本格的なパス、いわば本契約を結ばせたってわけ」
「え?」
『いま確認してるけど魔力供給はカルデアからではなく完全にエクレールちゃんから行ってるね、マスター権限こそ藤丸くんにあるようだけど、これじゃあ契約が重複しかねない、というか……そのつもりだねテスラ』
「博士?」
それぞれの言葉にエクレールは驚いたように後ろのテスラを見つめると彼は少し顔を逸らした、そしてしばらくしてごほんと咳払いをしたあと、いつものような堂々たる姿で返事をした。
「Q.E.D.まさにその通り!彼女との魔力供給ごときでは私の現界は難しい、さらに簡易パス程度では弱く彼女の回路を開くためにはより深い繋がりが必要だった、だから私はブレスレットから回路を気付かぬように広げていき、そして最終的に回路を繋ぐ電力を流したということ!」
「電力(意味深)でござるな、流石変態博士やることが違う、そこにシビれる憧れるぅ!」
「黒髭さんは黙ってて!つっつまりなんですか??博士と私の繋がりって魔術回路の開通を目的として、さらに一時的なパスを繋ぐためじゃなくって……」
聖杯戦争と同じようなシステムで繋がってる。と蒸気を出しながら呟いたバベッジにエクレールは唖然とした、それはマスター契約と同じではないかと困惑していればテスラは「しかしまだ令呪もないんだ、マスターではない、安心するがいい」というため、エクレールは叫んだ。
「そんなことじゃないー!!このバカ博士ー!!」
死した街ニューヨーク、その一角に響いた彼女の声はあまりにも悲痛な叫びで、外を徘徊する機械兵たちは一度動きを止めたが気のせいかとまた動き出すのだった。
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