第十六話



テスラの行いは何にせよ、それを言っていられる暇もないと一同は冷静に外の状況を解決させようという話し合いに戻した、エクレールは「帰ったら雇用契約を見直します」と睨みつけていうことにテスラの背中に嫌な汗が伝ったが、それ以上に外の様子にすぐに真剣な話に戻った。
エレナがいったようにブライアント公園の地下に巨大な魔力反応が見受けられ、その周囲から次々と機械兵が増産されており、さらにニューヨークのビルをも凌駕する巨大な機械兵を動かす原動力もそちらのようであり、崩れる街の音は激しくなり地面がさらに揺れる。

「僕とマシュに博士とプトレマイオスで動力源の確認、また停止、他の四人で周囲の足止めをお願いします、エクレールさんは安全のためこのホテルで待機を」
「了解、モニターで管理させてもらうし、カルデアとの供給も問題なし、通信も繋がってるから必要ならこちらから指示を飛ばさせてもらうね、それでそちらはどう?」
「うむ、いい具合だ、この交流電流馬鹿と地形有利の電力、ブラヴァツキー夫人の魔力同調により溢れんばかりだ、それにしても本当にこのホテルは不思議だ、懐かしいのにどこか違う」

広いロビーの中央でエジソン、テスラ、エレナ、バベッジの四人は外の大量の敵を足止めするための機械兵の作成をしていた。主にテスラの現在の地形よる魔力の相乗効果を利用し、エレナの魔力同調にて更に増幅させ、エジソンの大量生産スキルを強化して機械兵を作り、バベッジが一意専心スキルにて補強の上手伝いをするのいう短時間での瞬間的な作業だった。
プトレマイオスは今回の特異点の原因究明を考えており、一人残された黒髭はソファに横になりながら「あーつまんねぇ」と鼻をほじる中でエクレールもまた椅子に座りながら考える。

自分にできることをしている、それは誰もが皆おなじだ、それでも彼女は前線に立てない。ここで座り続け今もほんの少しの手伝いのみで彼らを見つめるのみ。思わず膝の上で拳を握るが今更何を悩むことがあるのかと自分でも感じられた。カルデアにいた時からそうだ、その前からもそうだ。アヴニールの観測者という役割を得たからと言って特別なことは何もない。いつものように自分の不甲斐なさを感じながら他人が傷つくのを眺めるのみ、力の無いものはそうするしかなかないのだ。守られて当然だという理解して邪魔にならないようにするだけ。

「何を思い悩んでいる、恐ろしいのか?この私と繋がっているのに」
「それは博士が勝手に……あぁいえ、怖いですよ…私のせいでこんなことになってるんですから」

これが漫画のヒロインなら喜べたのかもしれないが現実は甘くは無い。
サーヴァントたちはまだいいが、生身の人間である藤丸には大きな期限がある。しかしその反面信頼がある。人理焼却も人理修復も白紙化も何もかも全て守ってきてくれたのはカレだった。記録係として彼の肉体についても知っているが、到底その年の普通の人間とはもう遥かに遠くなろうとしていた、元々毒耐性がある時点でおかしいのだが、それ以上に彼は経験しすぎている。
マスターとしても異質なタイプだが、前線に立つ彼を考えると、自分が決してそうなれないのだと彼女は感じて考えてしまうものの、テスラは彼女を見たあと「そんなことか」と一蹴して彼女の頭に手を添えて優しく乱雑に頭を撫でた。

「私のせい?それは違う、この世界の者たちは自分たちの手で滅ぼうとした、そして君にしか救えないからと言って無理やりに連れてきたんだ。私から言わせればそれは人類の進化、人類の歩みを止める言い訳でしかない。人の過ちがあるのは仕方ないことだ、だがそれを乗り越えるのもまた人だ、"観測者"は確かに偉大だが、君達だけがこの世界の責任者ではないだろう」

だから君のせいではない、歩みを止めるものたちの罪だ──そう断言するテスラにエクレールは目を丸くした。明確に他人がダメだと避難するとは珍しいと感じたが、彼はいつだって人類に希望を抱き未来を見ている。その中で今この世界はテスラにとって歩みを止めようとしているように感じられるのだろう。

「そんなものなんですかね」
「ああそうだ、仮にそうでなくても君が自分を責めることはない、以前から思っていたことがあるんだが、君は私という天才の隣に並ぶ未来(アヴニール)のはずなのにあまりにも後ろ向きだ、もっと前を向け、堂々とするがいい」
「博士みたいには無理ですよ、私は失敗が怖いんですから」
「なるほどな……では私からひとつ教えてやろう」

なんですか?と腕を組んで見下ろしたテスラを見上げていうと、彼は楽しそうに笑って告げた。

「昨日の驚異は今日の一般的な出来事に過ぎない───とな」

その失敗も恐怖も何もかも明日になれば普通になるのだと彼は告げると最終確認の話になり、エクレールはテスラの言葉を胸に抱きながら集まり最後のチェックをした。
疲れきったエジソンが水を飲みつつ全員が作戦を理解すると、彼らはホテルの地下トンネルから最寄りの位置に出た上で公園の地下にある魔力動力を探すとなった、場所の把握から制圧までは多少時間がかかるかもしれないが街中の電力がテスラに集中しており、それをほかのメンバーにも分け与える形となったため通常よりも無茶な魔力仕様が出来るとなっていた。広い街であるため豪快に暴れることも許可されており、生身の魔術師にだけ気をつけるように伝える。

「それじゃあみんな気をつけて」
「あぁ決してあの部屋から出ないように」

地下へと続く階段の前で最後の挨拶をした、黒幕にはまだたどり着けていないがまず大掛かりな作戦が今から動き出す。ロビーには巨大なテスラコイルが複数台設置されており、それらが彼らのカルデアよりも強い魔力動力の一つとなり、入口にはいくつものセンサーや機械が並んである。
それはエジソンとテスラが用意した検知システム付きの自動攻撃機器で、味方以外の存在には問答無用で高出力のレーザーが放たれるというものだった。エクレールは左手のラピスラズリのブレスレットに手を添えては「大丈夫ですよ」と小さくはにかんで答えた。
本来は一人くらいサーヴァントを待機させるべきだが、それも敵の数で難しい状態のため苦肉の策であり、テスラは少しだけ不安そうに思いつつも彼女の肩に手を添えて「では必ず戻る」といって最後に頭を優しく撫でて階段を降り始めた。

「拳銃を向けられない限り女性の髪を撫でるなんて無理とか言ってなかったかな〜?テスラくぅ〜ん?」
「黙れ!彼女は別だ!貴様のたてがみに触れると考えるだけで電気を吹いて倒れるかもしれないがな!」

地下九メートルへと向かう階段から聞こえてきたいつもの声にエクレールは少しだけ安心してエレベーターをあがり、一番安全なはずといわれた三三二七号室に戻った彼女はカーテンを開けて外を眺めた。
まるでSF映画の終末世界のように巨大な機械兵が街を覆うように歩いて破壊して、空飛ぶ機械兵が何かを探している。地面にはエジソンが作った機械兵が既に戦闘をはじめている様子で死んだ街ニューヨークはますます形を変えてしまいそうだと思いながらベッドに腰掛けた。
ほんの少し前、テスラと肌を重ねたそのベットで彼女は不思議な感覚を感じながら左手のブレスレットを眺めた。パスが繋がったせいかいつもより輝いて見えるそれを見ていると星空を眺めている気分だと思いながら、テスラたちの安全を祈るように部屋のモニターを眺めた。すでにそこは戦闘が始まっていた。

──ブライアント公園周辺。

崩れた車両。割れたアスファルト。
摩天楼の合間を縫うように巨大機械兵が進み、空中には無数の飛行型機械兵が旋回しており、エジソンの作成した機械兵も含めて乱戦が始まっている。
エレナのマハトマが炸裂し、黒髭ティーチの『アン女王の復讐(クイーンアンズ・リベンジ)』が既に火を吹いて数多の敵を大砲で破壊し、エジソンのビームがニューヨークの街を照らし、バベッジの蒸気が激しくなる。
プトレマイオスが魔力検知の上、入口を探し出し場所をみつけるとルートを確保して足を進めていく。

戦闘をしてみてわかったことは相手の機械兵はテスラの理論を模範としたように作り上げられており、まるでテスラが作ったものを使われているようだった。

「アイデアを盗まれることは今更だが、私の理論をここまで正確に利用してるとは、全く天才というのは困ってしまうなぁ!」

駆動音、電流の波長、どれもが完璧にテスラのものと一致し、さらにそれに悪趣味な手を加えられてることが彼を僅かに苛立たせては雷霆を放ち敵を殲滅しながら進んでいく。
プトレマイオスが足止めを代わってくれるとマスターとマシュ、そしてテスラは魔力動力となる地下へと走った、広い公園の中心部にその巨大なテスラコイルが置いてあり、そこからは街の電気を吸うかのように稼働して赤い電流を放っていた。

魔術師が複数名と機械兵が守護しており、マスターを背後に回してテスラとマシュが戦闘態勢に入るがテスラは早くに決着をつけようと決めて宝具とは別に彼は右手のガントレットを向けると「今日の私は珍しく急がせてもらうぞ」といって電流を強く纏い、大きな声を上げては周囲一体に高出力の電流を放った。青白い電流はまるで踊るように機械をショートさせる、それはローブを着ていた魔術師たちもであり、テスラは思わず驚いてしまう、その電流は機械にだけ流れるようにしていたはずだったから。

──その頃・ニューヨーカーホテル三三二七号室。

戦闘は上手く行っていると安心して彼女はモニターを眺めながら待機をしていた時だった、まるで小さな電流が身体に触れるように感じた。嫌な予感がしたがホテルの中に設置したセンサーや機械は何も反応をしない。それでも何かが近付いている気がした彼女は思わずベッドから立ち上がる。
廊下から絨毯を踏む足音が聞こえ、彼女はモニターをみつめるが全員がまだ戦闘中であることは確認できて、近くの通信機を起動しようとすると強い静電気と共にモニターが落ちて、通信機は煙を出してショートした、部屋の電気がヂヂッと音を鳴らして少しだけ不安定になるとドアが開かれ、入口のセンサーが反応するが問題ないという反応を示した。

黒いスリーピースのスーツを着た上背の高い男、彼は公園で鳩に餌を与えていた男であり、今回の黒幕であると彼女は理解しては身構えた。男は部屋を見渡しては見知ったような態度をして、狭い部屋の中に足を進めてコーヒーを淹れると彼女にマグカップを差し出したが首を振って断った。
外はまだ戦闘が続いている、どうにか何かで助けを求めなければならないと考えて彼女が魔力をラピスラズリのブレスレットに注いで伝えようとすると何かが飛んでは壁に穴を開けた。

「君を傷つけたくはない、来てくれないだろうか観測者」
「断ります、私を生きたまま殺すっていった人について行くわけないでしょ」
「あぁ驚かせすぎたな、大丈夫だ、そういったことはするつもりは無い、君の身体を借りるのは勿論だが、痛めつける気はない。君はあのサーヴァントと魔力を繋いでくれたお陰で街が稼働した、あの機械は電力で動いているんだ、それもニコラ・テスラのものでな」
「……じゃあ、あれが動いたのはここの電力ではなくてテスラ博士の魔力が戻ったから?」
「そうだ、君が十分な魔力を持てた、魔術回路を広げたのか君の可能性はとても大きい、だからちょうど条件にも問題なく当てはまるようになった」

───条件って?
───聖杯に君を捧げて、この世界で永遠の観測者となってもらう事だ
───魔力は関係ないのでは?
───一般人に近いと観測者の能力が低い、今の君は魔術師と同じだ、私の作った観測機のパーツに足り得る存在になったんだ

そういった男に彼女は左手を向けた。ラピスラズリのブレスレットから魔力を放出してガンドの勢いで攻撃する。それは前回の時に機械兵相手にできたことだ、要領を理解している彼女は目の前の相手に攻撃出来るだろうと思いながらみつめる。

「君には出来ない、君は平凡な人間だ、一人と十人どちらを助ける?と聞いた時、悩み果てて両方殺すタイプだ」

優柔不断で流されやすくてあまりにも普通の人間すぎる。
どちらかを選択できるならまだしも両方出来ないから無くすのだという男は彼女をよく知るようであり、ベッドからさらに彼女に近づいていく。
エクレールは「来ないで!私はあなたを撃ちます!」と声を上げた、しかし男は歩みを止めずに傍によるとその左手を自分の胸に押し当てた、確実に外さない上に彼を殺してしまうと分かっていた。
エクレールは魔力を得たが使い方が分からない、それゆえに唯一の使い方として知っている攻撃方法を利用すればこの人間を殺すことになるのは明白で、顔を青白くさせるとおとこはほおをなでた。

「人の形をした記録媒体、観測者、君たちは本当に悲しいほどに"人間"だ」
「……あなたもしかして?」

一瞬の男の顔にノイズが走ったと同時にエクレールは強い電気ショックを受けて倒れ込み、男の腕に抱きしめられた時、その電気ショックに反応して適性反応にて攻撃を仕掛ける機械が攻撃をしたが男は避けてペンを手に取り文字を書き始める。そして青白い光が溢れると転移魔術が作動して三三二七号室は空になった。

「罠だ、これは私たちを引きずり出すためだ!目的は彼女だ!確認……パスが遠ざかって、いや、途絶えようとしている!?クソッやられた!」
「どういうことですか博士」

ブライアント公園の地下にて声を荒らげたテスラ、周囲は一斉に静まり返り通信機越しに地上から敵が動きを停止したことを報告に受ける。マシュはローブの魔術師を確認すると中身は人間ではなくオートマトンである事が確認できた。
しかしテスラはそれ以上にエクレールが拉致されたことについて声を荒らげるため、初めからそう仕組まれていたのだと理解する彼らはすぐに地上のブライアント公園の中央に集まり、彼女の魔力などから検知しようとする時、空は突然の雷鳴と共に暗く変わり、それはまるでテスラが雷霆を放つ時のようだが、雲は一箇所に流れていき集まろうとしているため、居場所を確認した。

そこはニューヨーク州ロングアイランドのシェアハム。
かつてニコラ・テスラが"世界システム"を作るために建設した電波塔──ウォーデンクリフ・タワーのある場所だった。

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