スマイル∞円


あれよそれよという間にバイトを無断で辞めてしまった
心残りはないと言えば嘘になる、なぜならボクには好きな人がいるからだ、19歳でハンバーガー屋のバイトを始めた時の新人研修を担当してくれた子は17歳でありながらハキハキとしていて人から好かれるような人だった

「坂水さん慣れました?」
「いや…まだ全然」
「そうなんですね、最近新人さんが沢山だから聞にくいとことかも沢山聞いてくださいね」

そう言って笑う彼女は21:30ピッタリに申し訳なさそうに上がっていく
ほとんどバイトリーダーのような彼女は店長がいない時にバイトのみんなにナイショでまかないを食べさせてくれた、分からない部分はメモをしてくれたり何度も教えてくれる、優しくて可愛くて好きになったのだ

「あれ坂水さん」
「…ぁ、こっこんにちは」
「この時間だとこんばんは、じゃないですか?」
「そっ…そうだよね」

久しぶりに出会った彼女は21:30を超えてもバイトをしていた、オススメはこれだとかこの新メニューが美味しいだとか伝えてくれるとまるでボクが突然抜け出したことなんて嘘のようだった

「坂水さんが抜けたあと亜久里さんも来なくなったりして少しこの店も治安が良くなったんですよ、あのバカ店長も辞めて今すごくいい環境になって」
「その件はすみませんでした」
「大丈夫ですよ、やりたいことみつかったんですよね」
「まぁ…そんなとこ」
「いいなぁ、私なんてなぁんも考えずに学校行ってるだけだし、そういう情熱が欲しいな」

950円です。と彼女はいうのでお札を出せば彼女は簡単にレジに打ち込む何も言わないが自然に社員割引を使ってくれているのにありがとうのひとつもいえず、少し成長した彼女の美しさに見とれてしまう

「はい、ビッグバーガーセットです」
「…これ」
「サービスです、ナイショですよ」

ちょうど後ろに人が並んだせいで後ろ髪を引かれつつも席に着く、あぁかわいかった…ご飯を食べて少ししたら上がり時間を聞こうでもって暗いから帰り道くらい送ってあげよう
気持ち悪いかもしれないけどボクはもう前のボクじゃないから