「ちょっとベリティこれなぁに」
「何って新人歓迎のパーティドレスよ」
「要らない要らない、私が着るよりあなたが着た方が似合うんだからやめてよ」

もう…とリアンは溜息を零しつつも愛らしい娘のような年頃とも取れなくは無いベリティ・カルロに苦笑する、ウルトラマグナスの船の一室で騒ぎ声をあげる人間の女が2人
うら若き少女ベリティ・カルロはリアン・マラカイトの前に派手な赤いボディコンを広げてニッコリと微笑むが向けられた彼女は勘弁してくれと苦しい顔をした、37時間ほど前に合流したウルトラマグナスはベリティをリアンに託した、数年ぶりの地球人に感動さえ覚えるリアンだが若い彼女とどう接すればいいのか分からない上に忙しいのだと内心ウルトラマグナスに愚痴を吐いた

「ほらそろそろ新兵達のお迎えなんだからあなたもここで遊んでないで準備して、私も忙しいからそろそろお部屋から出ていってね」
「あぁん、もうつれない!」

かわいい彼女の背中を押して部屋から追い出してやる、静まった部屋の中であとほんの少し数ヶ月、もしかすると数週間数時間でG-9だと考えれば心臓が痛む、どうか無事に帰還できるようにと願いながらその為には今できることをしなくてはと彼女は忙しくモニターの画像を眺めながら手を動かし始めた。それにしても娘がいたらあんな感じかしらと内心思いながら


リアンが部屋を出たのはバブ・ヤールのイグ湿原燃料庫にあと数十分で到着するというアナウンスを受けたからである、彼女はその報告を受けて部屋を出ればちょうど迎えに来たらしいスプリンガーと顔を合わせる

「台本の準備は要らないの?リーダー」
「なんだリアンがが書いてくれたのかと思ったが用意してないのか」
「今から用意しましょうか"死ぬぞ"って書いといてあげる」
「そりゃあいい注意喚起にもなる、レッカーズ候補生のマニュアルに載せるのがいいな」

軽口を叩き合う2人は艦橋に向かった、懐かしいバブ・ヤールを眺めながらリアンはスプリンガーの手の中から目の前のガラス張りのそこに食い入るようにみつめた、出会ったことの無い新兵3人に友人が1人彼らはどのような気持ちでレッカーズに来るのか
少なからず胸を高鳴らせてくるだろう、だがそれはいいようにならないことをリアンは知っている、出来ることならば今すぐUターンでもして彼らが帰ればいいのにと思えたが期待とは裏腹に船は近付いていけばまるで戦場に来てしまったのかと言わんばかりに暴れていたようだ

「歓迎の花火かな?…それとも、お別れの」
「随分新人共が気になるんだな」
「そりゃあ、友達になれるかもしれないから」

いつ消えるか分からないスパークだからこそレッカーズになるのならば家族は難しくとも"友人"になれればとリアンは願う、キミアの面々と違ってレッカーズはまた難しい性質の者ばかりであった、だが命を預ける中で確かな友情が出来上がりいつしか家族のようにも感じられるほどだ
1機の戦闘機が飛び回り爆撃しているものだからこれはまた相当ヤンチャな子供たちが来るなとリアンは察した頃船は到着した
ベリティの姿が見えないとウルトラマグナスに問いかければ誰よりも先に迎えに行ったというものでここにもまた1人可愛い子供、それもやんちゃなお嬢さんがいたなと思い出した

スプリンガーがパーセプター、カップ、ツインツイスト、トップスピンを呼びリアンを抱き上げて新人に挨拶に行こうと歩き出す
丁度搭乗口にて4人と早速口論混じりの話をしているベリティにリアンは眉を下げてスプリンガーを見上げる、全くこの部隊は血の気が多いことだと2人して笑う

「で、マグナスに清掃員の仕事を貰ったのか?」
「今時、性差別?私はちゃんと役に立ってるし、一緒にやってかなきゃならない以上、慣れてもらうわよ、ヒットマン!」
「でもお前はレッカーじゃない!」

珍しいローズピンクのようなバイザーをしたスレンダーなトランスフォーマーはローターストームだなとリアンは察する、気の強いベリティだがどうやら人間であることや女であることに対して差別的な発言が聞こえたリアンは自分も当てはまること故に何を言われるやらと思えるがその2人に割って入ったのは当然スプリンガーである

「今はまだな、念の為に紹介しておくが・・・」

スプリンガーをみるなり4人は姿勢を正すが彼は気にも止めずにそのまま仲間と自分の説明をする、彼らは当然知ったような顔をするが最後にスプリンガーの手の中の人間を見つめては小声で話をした凡そ噂の人間だということを言われてるのだと察する

「彼女はリアン、知ってるだろうがレッカーズの優秀な武器整備士だ、万が一舐めた真似をしても彼女にやり返されるがその前に俺たちが出るから態度には気をつけろ」

過去にそういった態度の面々に会ったことがあるスプリンガーは注意深く説明した、リアン自身は慣れてはいるが家族がそう言われていい気分には当然なれず何度か手を挙げたこともある、普通であれば処罰を下されるがリアンへの罵倒等である場合は大目に見られることもある程彼女 というより人間に対してのトランスフォーマーというのはいつだってそういうものなのであった

「まぁ普通に接してね、フィズは大丈夫だとおもうけど…ね?」
「リアン…あぁ久しぶり」

レッカーズを目の前にして興奮を隠せない様子のアイアンフィストをみてクスクスと笑うリアンにようやく気付いた彼は目を丸くするがやはりその目は歴戦の勇者カップに夢中になっていた
レッカーズに来たんだと興奮を隠せぬ新兵たちだがスプリンガーは彼らを現実に引き戻すように低い声で伝える、今回の任務は現状戦況がこちら側に不利であること…その為にレッカーズは収集されたと
G-9から通信が途絶え一年以上であり、DJD-ディセプティコン司法局-に侵入中のエージェント113の話では敵味方問わずにG-9に接近するものは排除されておりスペースブリッジも破壊された以上ワープも不可能…ともなれば特攻を決めるしかない
スプリンガーの演説は完璧だ、リアンはいつだって彼の言葉を聞く度に仲間達の身体中のオイルが沸騰する気持ちが分かる、かつてインパクターは彼のことを「グリーンでかわいい俺のサーキット・ブースター」だといったのを思い出しながら顔を上げた時スプリンガーは重々しいセリフを吐いた

「ようこそ、覚悟を決めろ。初日が命日になろうと不思議は無い・・・それがレッカーズだ」



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