フィジトロンって知ってる?とリアンは問いかけた、知らない奴の方が少ないんじゃないか?とローターストームは笑った。
データログ113、ポヴァの頂上決戦を読んだことは。という問いに愚問だなと彼は口を開く

「あの話は全員が呼んで全員が好きになる話だ、レッカーズvs宿敵スコードロンXの決着…あれをみて胸が湧かないやつなんざいねぇ」
「そうね、私もね…胸が湧いたよ、あの話は」
「あの時はレッカーズか?」
「あの時までね」

ディセプティコンの目を潜りながらリアンは手持ちの通信端末を見つつ道案内を続ける、彼女は呟いた本当はあんなに素敵な話じゃないの…と
もっと残酷で非道で最悪な日だった
あの頃のレッカーズは俗に言う"荒れ"ていた、タイレスト合意のグレーゾーンばかりをみつめて彼らは暴れていた、リアンは彼らが直接どんなことをしていたのかはあまり知らなかった。それは彼らがリアンに見せなかったからだ
レッカーズの中の良心、白い光、柔いスパークのようだった彼女にこれ以上悲惨で残酷な姿を彼らはみせなかった
けれどスコードロンXが猛威を振るえば振るう程に彼らは怒りに火をくべた、特にインパクターは彼らに対してどうしようもない憎悪を感じていた。

「俺はいつか怪物になるかもしれない、その前に離れろ」

オイル塗れの彼がかつてレッカーズの宇宙船、ゼンティウムに戻ってきてリアンをみつめたときそういった。もう戻れないこの怒りもオイルの心地良さも全て…この無垢なる少女を巻き込みたくないと彼は言うがリアンは首を横に振り彼の脚にしがみついた

「離れない…レッカーズが、貴方達だけが私の居場所だから」

堕ちるのならば深い底までついて行くという彼女を突き飛ばせればよかったのにインパクターは出来なかった、縋り付く彼女を抱いて覚悟を決めたのだ必ずかのスコードロンXを捕獲すると…その為ならばどんな犠牲をも厭わない何世紀もかけてきたこの戦いに終止符を打つのだと
改めてインパクターはスコードロンXの打倒が悲願となった。リアンも含めレッカーズ全員が同じ目標をみてその道を歩んだ、例えそれが狂気と破壊と死と別れだとしても

「ねぇローターストーム、私の話を聞いてくれる?」

あの日の想いが溢れた時リアンはローターストームに告げた、彼女の決心したような顔に何かを察して「あぁいくらでも」と彼は神父のフリをして迫り来るディセプティコンの頭を撃ち抜きながら懺悔を聞いた


スコードロンXがポヴァにいると知った時、レッカーズは怒りに燃えていたスプリンガーの熱のある演説はまるで全員に燃料をくべるようであった。
リアンとてスコードロンXの所業を赦せなかった。民間人も兵士も問わず残虐な限りを尽くし和平勅使を吹き飛ばし、彼らが邪な快楽に眈っているかスプリンガーは皆に語った。その話を聞いた時リアンとて自身の握る銃に力が入る

「リアン、お前は船の中だ」
「そんな!今回だけは一緒に行く!絶対にそう決めたの…お願い」
「ダメだ、万が一があったらどうするアイツらは人間だろうが殺すし犯す」
「自分の身くらい自分で守れるから…どうせ死ぬならみんなと一緒がいい、置いていかないで」

降下口にて言い争うリアンとインパクター、リアンの瞳には覚悟が出来ていた
レッカーズはそれをみて誰一人拒否できなくなった、彼女はレッカーズだったのだ。必ず俺から離れるなとインパクターは告げて彼女を肩に抱き上陸した
彼らがまた悪事を働いているところを捕獲するつもりが彼らはただ燃料を補給しているだけだったが関係なく攻撃を初め反撃してきた為戦闘をした、あの時反撃がこなければレッカーズはただの一方的な暴力を働いた集団になるのだから言い訳がましいがよかった
ブロードサイド、サンドストーム、ホワールの三人が空中で戦う中、残りのレッカーズは塹壕に釘付けで、リアン、スプリンガー、インパクターの三人はまた別のことが起きていた

「行くな!すぐに奴らが来る、ここにいてくれ」
「ガキが泣き言を言うな!こうなったのは俺のせいか?」
「自業自得だと言うのか!?」
「インパクターお願いだからそんな事言わないで助けてあげてよ」

クラスター爆弾が破裂し、スプリンガーがリアンを庇い崩れたバリケードに挟まれた。スコードロンXは喜びながら3人に近付いてくるのをリアンは叫び、スプリンガーは恐れ、インパクターは苛立ちを声に出した
インパクターも決して彼を犠牲にしたいわけではなかった為にある提案をした、胴体に弾を打ち込むと…死にはしないはずだと。そうしなければ敵を倒せないのだ
向かい来るスコードロンXのマカーブレ、アースクエィク、トルネードは勝利を確信したニヤついた顔をして近付い

「やめて、インパクターそんなのしたらスプリンガーが死んじゃう!」
「黙ってろリアン、こうするしか助かる方法がねぇんだ」

安全性のないその行動を止めようとするリアンをインパクターは胸に押し込めば彼女の声は彼のエンジンルームの中に籠り雨と銃弾の音で消された

「やめて…やめて、2人ともお願い…」

インパクターはスプリンガーの腹に銃口を当て、回路抑制器を入れれば何も感じないというがスプリンガーはそんなものは無いと否定した、三人が助かるためにはこれしかないというインパクターは無惨にも用意をする
スプリンガーがやめてくれと悲痛な声を出すのもつかの間

「レック&……ルール!」
「スプリンガー!」
「ぐあ"ぁ"ぁ"!!」

リアンとスプリンガーの叫び声は同時だった、その作戦は上手くいきスコードロンXのリーダー、マカーブレに直撃した。そして形勢逆転した末彼らを一斉に打ち倒したレッカーズ達は即座に抑制ハーネスを彼らに着けた

「リアン、悪かったな」
「…いいの、それよりスプリンガーは大丈夫?」
「わからん、みてやってくれ」

リアンはインパクターの胸から解放されようやく落ち着いた戦場で捕縛されたスコードロンXをみたあとすぐ様再起動に入ったスプリンガーに気付き駆け寄った、意識は戻るが重症でまともに動ける様子もない
インパクターはプロールに通信を入れたが揉めあい始めた為に仲裁に入ろうとリアンは通信機を受け取った

「どうしたのプロール」
『リアンどうしてお前がそこにいる』
「スプリンガーが怪我をしたから今見てるの、それより何?」

折角全員が勝利を確信したところでプロールは説明した、ポヴァでは中立条約六条により介入不可であるため直ぐに解放しろと。万が一そこで問題を起こせばポヴァ人とオートボットの間に亀裂が生じてしまうと。兎に角彼らを説得して解放しろとリアンに告げて通信を切った頃インパクターは突如ロードバスターに銃を強請った

「ダメ…ダメだよ、インパクター考え直して、そんなのをしたら!離してっ!離しなさいよロードバスター、行かないでお願いインパクターやめて!」

リアンが叫ぶ中インパクターは背後を見ず捕縛したスコードロンX達のいる倉庫に向かう、慌てて止めようとする彼女をそばに居たロードバスターが掴み手の中に閉じ込めた
カチャン…と静かに倉庫の錠前が閉まる音がした

「ダメ…やめて、みんな止めてよ」

分かっていたのだ、こうする他ないことを…それでもリアンはインパクターを呼び続けた

「インパクター」

一発

「インパクター」

二発

「インパクター」

三発

「……インパクター」


全員が顔を背けた、誰もインパクターと同じことを願いながら出来なかった、だから彼は動いてくれただけだ
スプリンガーは重たい機体を叩き起し倉庫のドアに体当たりをした、銃声が7発鳴り終わる頃、ドアは開きスプリンガーの悲痛の声が上がった
ゼンティウムに乗ってからリアンは彼女の部屋に閉じ込められた、船の中は静寂に包まれ時折リアンの部屋の前を通れば啜り泣く声が聞こえるだけだった

そして彼はG-9にてエクイタスの裁判を受けて今現状にいるのだという
ローターストームは彼女を運びながら言葉にならなかった

「現実って本当嫌になるよね」

迫り来るディセプティコンをローターストームの腕の中で撃ち殺しながら彼女は言った、俺もそう思う。とはいえなかった



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