カレンダーを眺めれば数ヶ月先には派手な赤色のペンで落書きがされていた"ハッピーバースデー姐さん"と書いたのは多分ホワール
彼女は自分のことを姐さんだなんて嫌味な言い方と思いつつも彼のことは案外嫌いでは無い、純粋なるレッカーズらしいからかもしれない
部屋のモニターに通信機を繋ぎプロールの個人回線番号を入力する、多忙な彼でも通信となれば大方出てくれる為急ぎの時のみは直接連絡を取ることにしているリアンは繋がるまでのほんの間を落ち着きなく指でリズムを取りながら待っていた

『こちらプロールだ』
「こんにちはプロール、リアンだけど」
『どうした新しい武器でも?』
「ねぇ下らない話やめない?」

似合わない。と付け足せば彼はいつも通りの気難しい顔をして続け様にG-9の事かという、ハナから分かっているなら回りくどいやり方を似合わないのだからしなければいいのにと思いつつそうするということは少なからずプロールは今度の任務の同行には反対だということだ

「次の任務に同行許可を」
『それは当然船の中にいるということだろうな』
「いいえ、前線に出るってこと」
『人間の身だぞ』
「ポヴァでも私は前線だった筈だけど」
『あれは間違いだったな』

確かに間違いだったのかもしれない、何度か彼らの任務に同行したことはあったがあくまでサポートとしてだった、だがしかしスコードロンXを追いかけ最終的にポヴァでの戦闘の時全員の頭は青い炎のように燃えていたその熱にやられ許可されていないにも関わらず前線にて戦闘の補助を行ったことはリアンもよく覚えていた
お陰で謹慎処分として10年程キミアでの従事になったのだから反省はそれなりにしている(彼らからしてみればキミアにいる時点で天国だとはいうがリアンにとっての居場所はもうその頃にはレッカーズだったのだ)

「兎に角同行許可をくれないなら貴方が言えないことをしているのを告げ口するわよ」
『誰も許可しないと言っていないだろう、急かすなリアン』

普段と態度が真逆だとプロールは思いながらも彼女の焦りを知っていた、これも彼にとっては予想通りであり内心計画通りに事が進むのは毎度の事ながら心地いいものだ
その場で同行許可証にサインをしているプロールに一先ず彼女は胸を撫で下ろす、万が一許可が降りなければ密航者のように行くしかないと判断していたからである

『許可をするが代わりに頼み事だ』
「今ならなんでもしてあげる」
『いい返事だ"エクイタス"を持ち帰って欲しい』
「・・・エクイタスって、あの」
『本当にお前は人間には勿体無い頭脳だ、そうだあのエクイタスだ』

彼の言葉を聞いてからG-9奪還の理由を理解した、仲間たちの救出以上の価値がアレにはあるのだとリアンはキミアに所属していた頃に説明されたエクイタスの話を思い出しながら詳細を伺う
そしてエクイタスを奪還する為に必要であろう情報を入手する為にキミアに1度向かう旨を伝えれば彼は僅かに口角をあげて『仕事熱心な事はいい事だ』と告げた

「貴方には負けるけどね、早くこっちに帰っておいで」
『帰れるものならな』

それもそうかと地球にいる彼からサイン入りの同行許可証のデータを受け取ったリアンは苦笑いを浮かべ素直に彼に感謝の言葉を送る、彼女以外プロールにきっと感謝の言葉なんて今はもう言わないだろう。

通信を切り終えたあとプロールは過去を思い出す
彼はリアンという女を中々に気に入っている、優秀で冷静で感情的にならずに仮に殴られても痛くは無い、男と女という性別で分けた時"女"という生き物の方が優秀だと彼は僅かに感じるほど。

彼の性格は基本的に人の神経を逆撫でるからなのか、はたまた相性なのか、ともかく仲間達と合わない中で彼女とは上手くいけているのは何故か…まぁ当然後者と彼女の性格だろう

『ありがとうプロール、きっと私みんなの役に立つね』

無垢に笑う彼女の顔はいつしか消えたがあの頃の眩い笑顔は好きだったと彼は思いながら自身がサインした書類を睨む、出来れば生還するといいのだがと彼らしくもなく思いながら彼女の顔を思い浮かべる



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