毎日吹雪の降り頻り薄暗いこの職場で恋愛している暇などとは思いつつも男と女、娯楽もなければ休みもない環境で気付けばそういう関係になるのも不思議とは言い難いことであるがどうやら恋人は本当に周りからみると他人に興味もない冷徹な医者に思われているようだ
「ちゃんと好きで付き合ってるんですよね」
そういったのはバイザーが特徴的なファーストエイド、彼ら相変わらず私の恋愛事情を知りたがる、まぁそもそも異種族の恋愛なんてみんな言わないだけで気にはなるだろうが案外付き合ってわかったことは種族は異なっても大抵同じだということ
告白はどっちからとか、どんな過程で付き合ったのか、なんて私達は約16時間ぶりの休憩を取っている時に話していたがその質問を曖昧に流していた何故なら私とその恋人はそういった話もなくなんとなく大人として"流れ"とやらで付き合ったからである。
「そりゃあ好きだから付き合えてるんだよ」
「好きとか愛してるっていわないのに?」
「子供じゃないんだし言葉がなくても」
「本当は欲しいくせに」
意地悪な物言いは私と彼がそれなりに親しい間柄だからだろう、きっとファーストエイドが私の彼と話す時はこんなに軽口は叩かない、案外中身が似てるからか私たちは結構話をするしこんな職場じゃ笑い話のひとつもあまりないけれどこの子とは笑う会話をしてる
「で?ちゃんと好きって思われてるんですよね」
グサグサと私をフォークで刺してくるファーストエイドにもういいじゃんかと睨みつけていれば私たちのおもちゃ…ではないけどからかうと結構楽しいアンブロンが前から歩いてきた
「ねぇアンブロン、ファーくんがパトハラしてくる」
「2人とも仕事が詰まってるから飯を食ったなら早く戻ってくれ、というかパトハラってなんなんだ」
「パートナーハラスメント略してパトハラ」
適当に私が名付けたハラスメント用語にアンブロンは案の定本気で分からない顔をしてる、結構冗談が通じないところがこの人のかわいいところだよね。と私とファーストエイドが昔いっていたのは内緒にしておく
「だって思いません?あのファルマをパートナーにしてる時点でまぁ…アレだけど、普通恋人同士って好きって言われたいでしょう」
「人によるだろ」
「僕なら毎日愛してるって言いたいし聞きたいけどな、アンブロンはどうです?」
「まぁ俺も毎日とは言わなくてもそれなりには」
「ほらね?」
ほらね?じゃないだろ何だこの失礼バイザー野郎おっと危ないお口が丁寧になるところだった、そんなくだらない話をしていても私とファーストエイドの仕事はてんこ盛りでそろそろ人間でもトランスフォーマーでもターボフォックスでもいいから人手を増やして欲しいレベルだと思いつつ患者のカルテが大量に増えたデータパッドを片手に私たちは休憩室から出ていくのだった
それから3日後だった、珍しく恋人と休みが重なった
彼は2ヶ月4日と21時間勤務していたらしい、人間とは体の作りが違うからなんとも言えないものだがきっと彼のストレスはとんでもないものだろう
私の活動時間は決まっていて地球と同じ勤務時間でその分睡眠やら食事やらも徹底されている、医者の不養生がなんとやらというから彼らは私の生活にだけは特に厳しい、今医者が減るのは困るから余計だろう。
「お疲れ様ファルマ、もう寝る?」
「いやデータログをまとめるのだけでも」
「休みなんだから仕事関係はダメっていつもいってるでしょ、ほら通信も切って何かあったら私が対応するから」
「悪いな」
「それで何か食べる?」
それとも寝る?と聞く前に彼の表情で察してしまう、伸ばされた青いその大きな手に身体を寄せればそのまま私たち二人して充電スラブに落ちていく
確かにファルマは私に好きだとか愛してるといったことなんてないし、そもそもの始まりはあまりの激務ゆえか彼のメンタルがあまりにもすり減ってるのが見えて声をかけた時だった何も言わず私の身体に触れてきてあのオプティックでじっくりとみつめられていわれた
「いやなら逃げていい」
どれだけ体格差があると思うんだとその時言いたかったけれど私は案外強い男の弱い部分というギャップにやられてしまった
ファルマは決してその言葉を私の意識がある時は言わない、どれだけ私が好きだとか愛してるとか吐きそうな甘い言葉を送ってもいつもと変わらない女王様みたいな態度で短くそうか。なんて返事するくらい、2人で繋がり合う時どれだけ私がその熱に浮かされて言葉を吐いても彼は目を見つめるだけだけど猫みたいだと思った
『好きって思われてるんですか?』
数日前の同僚の言葉をあの時濁したけど本当は言ってやりたい
ファルマは私のことをとても好きだということを、彼は決して言葉を吐かないしみんなの前なんかじゃ尚更距離を開けたような態度を取る
けれど今みたいに私が寝ていると判断した時彼はその大きな指先で私の髪を絡めて愛おしそうに優しく撫でながらいうのだ
「愛してる」
短い短い言葉を言われてるのに気付いたのは少し前だけれど私はとても嬉しかった、きっと彼は私が起きていることに気付いていないからこそいっているのだ大きな金属の腕に抱きしめられ身体全体を包まれて彼の心地いい程セクシーな事後の声でいわれるのは私をとても熱くさせるけどきっと起きてることは気付いていないと思っていた
「起きてるんだろ、なぁアイリス」
続いた言葉に思わず動揺するけど私は狸寝入りをする、なんだか嫌な予感がするから
私の髪を撫でて耳にかけて、そしてゆっくり形をなぞるファルマの顔が近付いているのは彼の呼吸でわかった
「ファーストエイドと随分楽しそうな会話をしてたらしいな」
「寝るようで残念だな、面と使ってたまにはお前に言ってやりたかったのに」
思わずその言葉に私は顔をゆっくり向ければ彼の顔が思ったよりも近い位置にあった、楽しそうにファルマはわらった
「愛してるなんてチンケな言葉をお前に直接言えるもんか」
ファーストエイドにいっておくことがある、私はどうやら相当彼に愛されてるって。
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