地球全体が彼らの戦争に巻き込まれて何年経過したのだろうかと彼女は思った、戦争を引き起こしたのは彼等で地球全体がめちゃくちゃにはなったが彼女を救ってくれたのは彼等でもあった
恨むよりももっと平和的解決を望んだ彼女は彼らと共存することを決めた、彼らの知識をその小さな頭で身につけて人よりも付き合いのいい彼らとの生活に慣れてきたころだ

「お前さんの性格ならあのサウンドウェーブも少しは懐くかもしれねぇな」
「サウンドウェーブ・・・って、貴方達側だった情報参謀さん?」
「あぁ奴さんはあんまりにも人を信頼しなさすぎたからな、アイリスみたいな優しい奴に触れたら少しは変わったのかも」

懐かしむようにそう言った友人であるサンダークラッカーに彼女は珍しそうな顔をした、地球文化に染った彼はテレビに夢中かと思っていたのに彼の生活用品を持ってきたり定期健診をするアイリスをいつの間にか見下ろしていった

「お前さんは誰にでも好かれるタイプだからな」

確かに愛嬌はまだある方だけれどトランスフォーマー相手じゃあまり意味もないようなと思いつつも彼女はサンダークラッカーの話に困ったように笑うのだった。

短い挨拶を交わして彼女はボロボロのスクーターを走らせた、サウンドウェーブといっていた存在を思い出してはどんな人なのだろうかと考えた
無口で無愛想で忠誠心が高くてと聞けば何処までも自分のような薄っぺらい人間性をもつ存在はあまり好まれないんじゃないかと笑った、ふと人のいない寂れた中古ショップの窓際に飾られた古めかしいラジカセを見て噂の彼はコレに変形するのか。なんてしみじみ思ったのがよくなかった

目を離してしまったせいで目の前にはほかの店の壁が迫っており彼女のスクーターはそのまま綺麗に正面衝突を決め、ヘルメットを被った彼女の体は宙を浮いて壁に叩きつけられた
あまりの勢いに骨を何本か折ったかもしれないと感じていれば頭上から嫌な音が聞こえた、先程の刺激で揺れたビル一部が彼女の上に降りかかるのだった。


「生きてる」

アイリスは薄く目を開けた時そこは先程と随分景色が違っていた、全くもって何なんだと思っていれば突如ボロボロの状態の2体のトランスフォーマーが何か喧嘩のように掴み合いをしていた
巻き込まれてはひとたまりもないと慌てて体を縮めた彼女は一体全体ここは何処なんだと地球にいる時に友人のラチェットに渡されていた通信機を起動するも先程の衝撃のせいでそれはうんともすんとも言わなんだ
動けるあたり骨は折れていないらしいが脇腹の痛みに顔を歪めて思わず彼女は顔を顰めて床に蹲った、どこか分からないこの場所でもしかすると先程の喧嘩のような事態に万が一巻き込まれて踏み潰されるという恐怖、久しぶり味わう生の感覚に冷や汗さえ溢れそうな時ふと首元を掴まれる

「・・・あれ」
「こんなところで死にたいのか」

目の前でそう語る黒い猫のようなトランスフォーマーにアイリスは目を丸くした、首元というよりもシャツの襟首を掴んでいるのは鳥型のトランスフォーマーのようで彼も小さく鳴いた

「とにかく此処はジャンキーの巣窟だからいくぞ」

そういって彼らに連れて行かれアイリスは自身が現在地球ではなく、サイバートロン星にいるのだと知った、それも戦争が始まる前だと
彼らに戦争があって地球に襲来した旨を伝えても不思議な顔をしていたから判明したことだ、仮にこれを夢だと仮定してアイリスは目覚めるまでは楽しむことに決めた
彼女の強いところはポジティブかつ楽観的な所だろう
ラヴィッジ・バズソー・レーザービークという3匹はこのスラムで生きているらしい、生まれた時から階級制度の強いこの星で動物の姿である彼らは迫害される存在なのだという

「酷い・・・どうしてそんなこと」
「それがこの腐った星だ、仕方ない」
「きっといつかそんな環境も変わるよ、少なくとも私はみんなの味方だからね」
「そういうなら自分の餌くらいは自分で取ってこい」

それを言われるとなると困るなと彼女は苦笑いを浮かべたがラヴィッジも彼女に対して加護欲を感じていた為意地悪で言った訳ではなく冗談である、決して天才発明家や科学者でもなく少し彼らの医療知識のあるような平凡な人間である彼女はこの金属の星で一人で生き抜くことは生憎難しいものだった

彼らと過ごすことに慣れて来た頃"彼"はそこに居た。

スラムと呼ばれるその場所の隅で彼は震えていた、頭を押さえ込んで苦しむその一体のサイバートロニアンはこの辺りにいる者たちとは違っていた

「助けてくれ・・・聞きたくない・・・嫌だ」

ラヴィッジの背中に乗っていたアイリスは彼を見た時助けねばならないと感じた、あまりにも大きな体が小さく見えて震えて泣いている、薬物中毒者とは違う怯えきった彼の姿をどうにかしなければと仲間の静止も聞かずに慌てて駆けつけた

「ねぇ貴方大丈夫?具合が悪いの?」
「ッ・・・え、と誰、有機生命体?ウッ」
「どこか怪我してるって訳じゃなさそうだけど、ねぇラヴィッジこの子どうしたんだろう、なにか内部モジュールがおかしかったりしてるのかな」
「勝手に近付いて潰されたらどうするんだ」

あぁどうしたらいいんだろうこんなに苦しんで可哀想に助けてあげなきゃ。その時サウンドウェーブの頭の中にはその小さな人間の思考が届いた
彼が今まで聞こえていた声の中で一番柔らかく優しくそして彼自身を心底心配した声だった、痛む頭が少し和らぐ頃ラヴィッジは力のコントロールについてを教えた
何か一つに集中すればその音はゆっくりと消えるだろうと、彼はその言葉をどうにか拾って理解した時目の前の自分と異なる姿の彼女に集中した

「大丈夫?(大丈夫?)」
「痛いところはない?(外傷は無いからやっぱり内部に何かあるのかな)」
「もし怪我をしてるなら嫌かもしれないけど私少しくらい知識があるから直せるかも(それでも無理なら何処かからお医者さんを連れてくるしかないよね)」

この汚い路地裏でこんなに柔らかな他者を労る言葉など聞いたことは無いと彼は思った、自身が製造されてから永遠に続く耳鳴りのようなマインドスキャンは彼のブレインに響き渡る
優しい振りをしても本当は違うことを思っている、自己の利益のために動く連中ばかりだと彼はその能力で知ってしまったが故に心は壊れてしまいそうだった

「苦しいんだ、声が頭に響いて」
「頭が痛いの?ねぇ少し抱き上げて貰えるかな」
「・・・あ、あぁ」
「イヤだったらごめんね、でも私達の場合だとこういう時はハグするのが落ち着くっていうから、ゆっくり呼吸して大丈夫あなたを傷つける人はいないよ」

彼女に命じられるがまま抱き上げて同じ目線の高さになった時その小さな体は両手を広げサウンドウェーブの頭を抱き締めた、冷たい細かな傷だらけの彼の頭を優しく撫でるアイリスはどうか彼がこれ以上苦しまないようにと強く願った、もうこれ以上誰かが傷つく姿をみるのは苦しくてたまらないのだ
サウンドウェーブの頭の中には彼女の声が響く、まるで子守唄のように気持ちのいい声に彼はゆっくりとスリープモードに切り替わってしまい降りれなくなったアイリスは少ししてからどうしようか・・・とほとんど家族か保護者の如く世話をしてくれる3人をみつめた

呆れ返った彼ら三体と一人はなんとか大きな彼を連れて自分たちの隠れ家になっている小さな家に彼を連れ込んだ
アイリスは念の為彼の体を一通り見てやはり過酷な環境下で傷付いており出来うる限りの修理をした、ラヴィッジは彼をどうする気だとアイリスに問いかけたアイリスは困った顔をしてもし許されるなら彼を匿いたいといったので彼らは困った様子を見せつつも了承したのだった

「目が覚めた?」

スリープモードから目覚めたサウンドウェーブは未だオプティックには起動中の文字が出ているものの自身をのぞき込む小さな生き物に驚いた様子で勢いよく立ち上がった
マインドスキャンのせいでブレインに直接殴り込まれるような他者の思考は生まれてから彼を傷つけ続けた、そのため出来る限り他者と距離を取り誰の声も聞こえないようにと逃げ込んでもその声は止むことはなかった、だがしかし今この部屋は彼が生まれて初めて静寂だと感じる程の静けさを感じた
小さく聞こえる声は自身を心配したような安心したような声で不快感などは無い

「君は誰なんだ」
「挨拶してなかったよね、私はアイリス、訳あって地球って星からここに来ちゃったの貴方は?」
「サウンドウェーブだ、地球・・・か」

彼の名前を聞いたアイリスは目を丸くした、サウンドウェーブといえばあのディセプティコンの参謀の1人であり名前などはよく聞いていた
だがしかし今は時間軸が違うということを理解していたアイリスはこれは過去の彼なのかと現代でもあったことの無い彼に少しだけ驚きを感じた、こんなにか弱い青年がディセプティコンのましてや参謀になるだなんてと思ったのだろう

「ディセプティコンって」
「えっ私声に出てた?」
「いや声には出てない」
「どうしてわかったの」
「・・・気味が悪いとは思うが生まれた時から他人の思考が直接聞こえるんだ、アイリスの場合は人だからハッキリとは聞こえないんだが小さく聞こえた」

それを聞いた彼女にサウンドウェーブは気味悪がられたなと自傷気味に笑う、昔からそうだ彼らのような存在をアウトライアーというらしいが異端な存在でありその為にフォージドでありながらも彼は社会から捨てられた存在である
実際彼自身もこの能力を持った自分のことを良くは思えない、知りたくもない他人の思考を読み取ってしまうしそれは決していい言葉ばかりではなくスラムなんかにいれば特にスパークを蝕まれるほどに嫌な言葉しか聞こえないのだ

「・・・ごい」
「ん?」
「凄いんだねサウンドウェーブって、私のお友達にもね貴方みたいに特殊な力を持ってる子が何人かいるのワープしたり凄い強いソニックムーブが出せたりとか」
「人間もなのか」
「違うよサイバートロニアンだよ、でも貴方の能力が飛び抜けて凄いね。ねぇねぇ私の今の考えってわかる?」
「嬉しい、すごい・・・サウンドウェーブって天才」
「本当にわかってるんだ、凄いね」

きっと彼女が地球人だからそう思うのだろうがサウンドウェーブはスパークがじんわりと暖かくなった、こんなに優しい人物に出会うのは初めてだったからだ
彼の1/4くらいのサイズしかない生き物が飛んだり跳ねたりして興奮気味に話しかけてくる、マインドスキャンで拾う声はとても小さいはずだが彼にはとても大きく聞こえたそしてそのデータを厳重に保管したこれを糧にまた明日から1人で生きていけると思ったから
丁度そう思っていた時部屋のドアが開きそちらを向けば三体の動物型サイバートロニアンがいた、猫型(正式にはジャガーか)と鳥型の三体は2人をみていた

「おかえりなさいラヴィッジレーザービークにバズソー、すごい今日は沢山取れたんだね」
「なんだ彼は起きたのか、仲間が増えたんだ祝いに今日は奮発してみたんだ」
「仲間って」
「サウンドウェーブのことだよ、勿論嫌ならいいんだけどね」

貴方さえ良ければよかったら一緒に暮らそう


サウンドウェーブは椅子に座りながら過去のデータを思い出した
地球という星に行くと言われた時一番に考えたのは自分の恩人であり家族のひとりだった人間のアイリス、誰よりも大切で大事な人だった
あの日から4体と1人は本当の家族のように生活をした、有機生命体を生かすことは中々に難しいがそれなりに上手く生活が出来た
彼女はスラムに居ながらも困った者に手を差し伸べて、上手くコミュニティを作っていた、誰からも好かれ誰もが彼女に救いを求めた、地球の言葉で言えばきっと彼女はマリアだったのかもしれない

「未来ではまだ貴方と会ったことがないから会ったら今みたいに仲良くできるかな」

少し寂しそうな顔で彼女は問いかけた、サウンドウェーブは当然だと二つ返事をする
例え彼は自分が今の自分でなくなっても彼女のことだけは忘れないと誓えた、カセットロン達とアイリスさえいればどんなに困難な環境だとしても確かに小さな幸福があそこにはあった、ラヴィッジがいったひとつのことに集中すれば音は勝手に消え去るというアドバイスに彼女のことだけを考えれば嫌な音は何も聞こえなかった、ただ幸せなエフェクトのない心地よい音だけが彼のブレインに響くだけだ

「アイリス、お前は今どこにいるんだ」

地球に行っても彼女はもう居ないかもしれない、もし居たとしても自分のことなど忘れているかもしれないとサウンドウェーブは悪いことばかりを考えていたがその考えも直ぐにメガトロンの命令によって消えていくことになる



「サウンドウェーブ?」

彼は名を呼ばれた時まるで機能停止装置でも使われたかのように固まった、戦争が終結して数年、様々な困難がやって来たもののようやく落ち着きを取り戻した彼は諸事情でサンダークラッカーに会いに来ていた
ふと奥から聞こえたその声を彼が聞き間違えることなどない

「アイリス・・・」

サウンドウェーブの声は震えたことだろう、何百万年も前に出会った彼女の姿は変わらずあの頃のままだった
あの時の生活は人間で言えば数年だったというのに変わらない彼女に驚きはしつつも素直に喜んだ彼女の友人であるサンダークラッカーの声など聞こえずにサウンドウェーブは小さな彼女を抱きしめた

「ずっと君を探していたんだ、俺を救ってくれた君を」

ある日サウンドウェーブがいつも通りエナジョンを調達して帰った時アイリスはいなくなっていた、どれだけ探しても聞いても彼女はおらず元の世界に帰ったのだろうと考えても受け入れられなかった
どうして生きていけばいいのか分からないサウンドウェーブを叱咤したのはやはり家族達でお前は今生きて何万年後だろうと彼女を探し出せばいいといったのだ、頭の片隅では彼女のことを想ってもくまなく探せるほどの時間はなかった
万が一見つけても自分を覚えてなかったら、同じ見た目の別人だったら、その恐怖がサウンドウェーブを支配する時もあった
そのため彼は過去のデータを見返しては夢のようなあの日々に思いを馳せる

アイリスはサウンドウェーブ達と過ごす事に慣れ、少なからず彼に想いを寄せていたがまるで運命のイタズラのように夢は覚めてしまった
みんながエナジョンの入手をしに行っている間に彼女は部屋の中の片付けをしていた、その時彼女の頭上にはサイバートロニアンサイズの道具が落ちてきて夢から覚めた
道端でボロボロのスクーターと共に横たわっていたと言われ現実味のあったサウンドウェーブの話を聞いたサンダークラッカーは不思議な顔をしつつも「プライマスがお前たちを巡り合わせたのかもな」と笑っていった、またいつか出会えるようにどうか彼らが幸せであるようにと願った、この世界にも彼がいるのは知っていたがきっと自分のことなんて忘れていると思っていたからだ。
そんな彼が今目の前で自分を抱き締めて確かめるように何度も名前を呼ぶものだからアイリスは彼のフェイスプレートに両手を伸ばした

「ねぇサウンドウェーブ顔を上げて」

自分の胸で泣きそうな彼はきっと多くのものを失ったのだと察した苦しみを味わってきた中で隣にいられなかったことを彼女は後悔したのだ
赤いバイザーが彼女を映した時アイリスは心底幸せに微笑んで彼をあの時のように抱きしめた

「私はここにいるよ、もう二度と貴方から離れない」

これが夢であってもしがみついてやるとアイリスはいった、その言葉と響くマインドスキャンの声にサウンドウェーブは見せたこともないように柔らかく出会った頃のように笑ってみせた
そして音を立ててフェイスプレートが外れたと思えばその小さな彼女の頬に彼は金属の唇を落とした

「あぁ俺も二度と離さない、ずっと傍にいてくれ」

もう一度あの頃のように生活をしようと誓いあって2人は新しい道を手を取り歩みはじめるのだった。








この度はTF再熱企画に参加下さり誠にありがとうございます
Xにおかれましてもいつもうるさくツイートしておりますがフォロー、また閲覧下さりありがとうございます。
はじめこそ幼馴染?となったもののそのリクエスト主様の素敵な設定を読ませて頂いた時とても感動致しました、自身では考え付かない設定でしたがとても筆が乗り楽しく書くことが出来ました
ただ少しサウンドウェーブ以外のキャラも多く書いてしまったなと今更ながら反省しております
この度は企画参加してくださり誠にありがとうございます
今後ともどうぞよろしくお願い致します。

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