これのロディマスバージョン

「アイリスには1番に説明したかったんだが、正式にCEを結んだんだ」

ある日突然先生は私に大切な話があるといって部屋に招き入れてくださった、入り慣れた先生の部屋にいたのは顔見知りどころか親友とも言えるくらい親しい程の関係であるドリフトがいた
2人ともどこか気恥しいような顔をしていてそう告げたが私はまるで鈍器で頭を殴られた気分だった、分かっていたはずだ2人が並々ならぬ関係と感情を持ち合わせていることを…そして私はそんな2人にやましい程の好意を寄せていた

「そうなんですね、おめでとうございます」

私は笑って2人に拍手をした、今日はお祝い事だと告げてロディマスから許可を貰い貯蔵庫の中の高濃度エンジェックスを1本貰って運ぼうとした

「平気かアイリス」
「・・・変なこと聞きますねロディマス、平気も何もなにもありませんよ」

私にとってラチェット先生は人生の師であり恩人だった、地球にいたラチェット先生に助けられた私はどうにかくっついて学びを得て彼の隣に立つことを許してもらった、まるで父のような先生に私は尊敬とともに好意を抱いた
私にとってドリフトは命の恩人だ、ラチェット先生と一緒に過ごしていた時事故にあい他のトランスフォーマーに命を脅かされていた際に彼に救われた、それ以来まるで専属看護師のように彼の命を第一に考えて生きるようになった、そして同じように好意を抱いた

「おめでとうございます、これは船長達からです2人で楽しんでくださいね」
「お前さんもどうだ?」
「まさか私に新婚さんのお邪魔は出来ませんよ」

そういえばラチェット先生は少し気恥しそうな顔をしてありがとうといって私の頭をその大きな指で撫でてくれた、あぁ私はこれだけで幸せだなと思いながら部屋を後にしてその足でスワーブスに向かった
珍しくひとりでやってきた私にスワーブは話しかけてくれるけれど生返事で私専用の冷蔵庫から度数が高い順にお酒を開けて珍しく下品にお酒を胃の中に押し込んでいくのを少しだけ引いたようにスワーブがみていた気もしなくもない、けれど私の荒れ方をみて何も言わず彼は自身のグラスにエンジェックスを入れて乾杯。というので同じくグラスを掲げて私はロディマスの真似をした

「Till All Are One」
「オレの決め台詞を取らないでくれよ」
「いたんですか」
「あぁ寂しい背中がみえたから、追いかけたくなって」

彼はどこまでも優しかった、その優しさは私のトゲついた心をゆっくりと包んでくれる、彼とはじめて出会った時あまりトランスフォーマーを知らない私は彼を得意な性格では無いと思ったし彼もそこまで人間にいい思い出はなかったらしい
けれどある日怪我をした彼を先生の代わりに治してあげた時、素直に彼は私を尊敬の眼差しでみてくれるようになり私も彼を悪い風に感じなくなったしどちらかといえば友人のような関係に変わった

「アイリスに来て欲しいんだ」

ナイツオブセイバートロンを探す旅に出ると言った日、私の元にやってきた彼は真剣な顔をしてそう言った
きっと私が乗れば必然的に先生もやってくるからだろう、乗るメンバーを聞いただけで頭が痛くなりそうなほどだったので医者は必要だとも感じた、私は回答に悩んでいればロディマスは「旅をするのも大事なもんだろ」といった、宇宙旅行に行くような気軽なものでは無いだろうにと思いつつも彼の言葉に答えは出せずにいればその数時間後に顔を合わせた先生に船に乗ると言われてしまい結局はロディマスの狙い通りになってしまったことはよく覚えている

「CEって具体的にどんな風なことを行うんです?」
「なんだラチェットに聞いてないのか」
「うん、だってまさか先生がするだなんて・・・思いませんでしたから」
「だよな」

ドリフトと先生が並々ならぬ関係であることは何となく思っていた、彼をよく案じていたし口に出すのは彼の愚痴ばかりなのにその目は優しい、ドリフトも反対に先生のことを話す時は楽しそうに嬉しそうに時々難しそうだったからきっとあれは地球で言えば恋する人のものだっただろう
苦しくてたまらない2人が幸せならば自分も幸せだと笑顔を繕わなければならないのに上手くいかない、こんなに苦しいのがつづくのならば考えはひとつになる

「ねぇロディマス船を降りようと思うんです」

その言葉に彼は酷く驚いた顔をした、先生がいる限り私もいると思ってくれてたのだろうかそうだと少し嬉しい。
けれど私はこれ以上あの2人を近くで見れない私の付け入る隙もなく手を取り笑い合うことが羨ましいことこの上ない嫉妬という一言ではあらわせないものだがそれ以上にうまい言葉もなかった
ロディマスは私の顔を見ては酷く困った顔をして俯いて唸り顔を上げたと思えば彼は私の手に自身の大きな手を重ねた

「降りなくていいしもし居場所がないならオレがアイリスの居場所になる、いや・・・なりたい、ダメか」

思わぬその言葉に私は息を呑んだ、だってロディマスは普段の表情と違っていたって真面目に私を見て言ったからだ
あのマトリクスブルーの瞳が私を捉えて離さない、けれどここで簡単に頷けるほど甘い考えも出来ずに「ありがとう」と一言言い残した
船からの下船許可は降りなかった、人間1人での生活の厳しさとこの近辺の治安の悪さやらまぁ様々な理由もあった、タイミングが合う時でいいといってるがなかなか合わないらしい、ロディマスはあの日から気遣いをよくしてくれて医療チームが現在豊富なため彼の補佐に私を指名したはじめは先生が苦言を呈したが私が大丈夫だといえば渋々了承してくれた。

「なぁそろそろ考えてくれたか」
「考えたかって・・・変わりませんって」
「いいだろ?本気なんだよオレ」
「わかってますから、ほら遊んでいないで仕事仕事」
「アイリスがそばに居るのは嬉しいけど案外真面目すぎる」
「それなら医療チームに戻りますけど」
「ダメだ」

ロディマスは私に困る提案を最近持ちかけてきている

「オレとCEになったらいい」

そんな例えば下手だがソースの代わりに醤油くらいの軽いノリで言われれば流石に同意しかねた、全く彼にとってのCEはどんなものなのだと深いため息をこぼしてしまう
それでも最近少しだけ悪くないと思うあたり私もきっと彼に絆されていたのだろう、先生は私に会う度に身体を案じてくれたし最近メディカルルームに世話になる連中が減ったことや健康診断も終えて落ち着いてきた時期だという話をしてくれた、私が居なくても現場は充分に回るんだとおもえば益々自分の価値なんてと卑下してしまう

この船に乗る乗務員達の中でCEになった者は何人かいるらしい、まるで熱いカップルのようにイチャつく者もいればまるで熟年夫婦のような者までそれは当然彼らの性格によって様々だった
当然ラチェット先生とドリフトは後者だ、多分先生がそういうのを人前でということなのだろう。

「アイリス・・・見るな」

ロディマスがそう小さく呟いて私の目を覆った、私は廊下を曲がろうとした時ソレが目に入った
あの二人の私室の前だったのもあるだろう、彼らは手を絡めて笑いあって口付けていた、どこまでも幸せそうな2人をみた時もうそこに私なんて付け入る隙なんてあるわけが無いと漸く納得できたのかもしれない。
呆然と立ち尽くす私を抱き上げてオルトモードに変形したロディマスは私を車内に乗せてその場を後にした、そして彼の自室に迎え入れられ私は小さく泣いているのを彼の優しい手が私の背中を撫でた
知っている、あの2人にとって自分は子供で人間は守るべき存在だと、2人に好意を寄せている私は何処までも浅ましい存在だと
普段ならば口うるさい程に話したがるロディマスは静かに私の背中を撫でて優しく身体を抱き寄せてくれた

「ねぇ、どうして優しいの」

私はあなたを好きじゃないと言っているのに、今は彼の優しささえ苦しく感じるのは自分自身がとてつもなく醜い存在に感じるからだろう

「好きな奴に泣いて欲しくないから」

短い彼の返事に私は思わず彼を見上げた、柔らかいマトリクスブルーのオプティックが私を見下ろして小さく光を強めた
彼の明るい黄色の指先が器用に私の涙を拭う、まるで慈しむようなもので私は顔を逸らした

「なぁ好きなんだ、愛してる・・・冗談じゃあない、オレのスパークはアイリスの為に光るしお前の為ならなんだってしてみせる」
「やめてロディマス、今の私はそんなの言われたら」
「絆されてくれていい、忘れろなんて言わない」

まるで私の思考を読み取るように彼はそういって私の顎に手を添えて上向かせた、彼のその美しい瞳を見つめていると甘い考えばかりに逃げてしまいそうで怖かった

「オレがアイリスのことを愛するんだ、お前はその甘い言葉に身を委ねるだけでいいだろ」

何も考えなくていい。というように彼は私にキスをした


ロディマスから贈り物がされた、薄いピンクの石が付いた指輪でどうしたの?と問いかければ彼は少し恥ずかしそうに自身のインナーモストエネルゴンで作った指輪だという
どうしてそんな貴重なものをと反論しそうになるが彼がCEになりたいと口癖のようにいっていることを思い出していよいよ本気なのかと熟考した

「指輪なんですからつけてくれますよね」

私のその言葉に彼はそれまで不安そうな顔をしていたのを一変させて嬉しそうな顔をした、まるで鼻歌でも歌いそうな程で彼の大きな指が私の手を掴んでそのピンクゴールドの指輪を薬指に嵌めてくれた
そんなこと知ってたんだと思わず見上げれば彼は「アイリスの文化だ、そりゃあ調べるに決まってる」と得意げにいわれた
彼の私を重んじてくれるところはとても嬉しいものだ
以前彼に秘密の話を教えてもらった、私が最後に出す回答を彼は心待ちにしてみつめてくるので小さく笑った

「私もロディマスのことを愛してますよ」

そういえば彼はまるでジャックポットと言わんばかりに私を抱き締めてキスをした、私の心にはもうあの2人は居ない・・・というのは少し嘘にはなるがあの頃の恋心は目の前のかわいい旦那様に向いた
ねぇロディマスと呟けば不思議そうな顔をする彼の唇にこちらからキスをしてみれば彼は固まった、機能停止でもしたのかと軽く叩けば彼は少ししてから機体温度をあげていき心底緩んだフェイスパーツでいった

「あぁもうオレの奥さんって最高にかわいいな」







この度はTF再熱リクエスト企画に参加下さりありがとうございます
更新をいつも心待ちにしているという嬉しいメッセージをお読みしたので早くご提供出来ればと思っておりました
ラチェドリの両手…は私自身気に入っており、ロディマスバージョンもいつか書けたら。と思っていた中でのリクエストでしたので大変嬉しく思います
また難しければフォトマ夢もと記載がありましたのでまた機会があればかければと思っております、この度はご協力下さり誠にありがとうございました今後ともどうぞよろしくお願い致します。

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