わたしの1番のしあわせはなにか?と問われれば決まっている、わたしを拾ってくれた2人こそがわたしの幸せの形そのものだ

今から数年前わたしは産まれて直ぐに宇宙をさ迷っていた、リワインド曰くあれは奴隷商人達で売ろうとしていたんだってさ
わたしの本当の家は地球という星で、そこにはわたしの本物の家族っていうものが居るかもしれないらしい
けれどそんなものに興味はなかった、何故ならわたしには地球の記憶は無いし家族というものは2人以外居ないし別に必要ないからだ
ロストライト号っていう船に乗って旅をしていてわたしは2人に連れられてその船に乗り始めた、言葉もあまり分からないしずっと前の船にいた時は掃除とかご飯の準備をしていたからそういうのはしなくていいんだよとクロームドームにいわれたときは驚いた、じゃあ誰がするの?っていうとみんなでするんだよ といわれた

「地球に帰れる?」
「そうアイリスがよかったら船長に言って寄り道してもらえるんだ」
「ちょうどその辺の星域に用事があるからだけどな」
「帰らないよ2人とずっといっしょがいいもん」

本当は邪魔だったかもしれない、だってその時のわたしは拾われた人間で2人は特別な関係だったから
どれだけ優しくしてもらってもわたしはただのロストライト号の乗務員だから兎に角捨てられないように頑張って船の中で仕事をした、窓拭きとか床掃除とかスワーブのお店のお手伝いとかボブのお散歩とか色んなことをしたけどリワインドが危ないからダメだという

「わたし前の船だともっと仕事してたよ」
「だとしてもダメ、もしアイリスのその小さな体で怪我でもしたらどうするのさ」
「大丈夫だよ?」
「アイリス、リワインドは心配してるんだわかってくれ」
「でも働かなきゃ捨てられちゃう」
「そんなわけないだろ、お前を捨てるような奴がいたら俺たちがやり返してやるさ」

結局2人に強くお願いされてしまうとわたしは諦めざるおえなかった、そんなある日わたしは2人に挟まれて映画を見てる時に家族っていうのがいいなとおもったのだ
壁に映された地球の映画は案外面白くて娯楽には長けてるよなとクロームドームがいった、捨てられた女の子が2人の同性カップルに引き取られて家族になっていく話で思わず食い入ってみてしまう、無意識に 家族っていいな という言葉が零れたのは画面の中の女の子が幸せな笑顔を浮かべていたからだ、演技だとしてもこんなに幸せそうなのだから本当ならどうなるのだろうと
後日2人はわたしにかわいい大きなくまのぬいぐるみをくれた、大きすぎてちょっとばかし抱きしめられないくらいでこんなのどうしたの?と見上げたら2人はとても困ったように言葉を濁しながら言い出した

「僕たちの家族になって欲しいんだ」

2人はコンジャンクス・エンデュラという誓いを建てていてそれは人間の言葉でいう結婚みたいなものらしい、彼らの種族だとそれをするのは本当に珍しいことで特別でなければ行わないらしい

「まぁ家族ったって何をするとかじゃないんだけど、ずっと3人で過ごそうっていうだけなんだ」
「役名が必要だっていうならドーミィはお父さんかな?でもって僕はお母さん?いやお父さんでいいのか、でアイリスは僕らのかわいい"娘"子供だ」
「そ、それってクリスマスとかニューイヤーを一緒に祝えるってこと?」

そういったわたしの言葉に2人は顔を見合せたあと声を出して笑った「そうだよ誕生日もクリスマスもニューイヤーも全部一緒に祝うんだ」といわれてわたしは大きな2人の足に抱きつけばリワインドに抱き上げられて、そのリワインドを抱き締めたクロームドームによってわたしたちは家族の誓いを結んだ

朝決まった時間に2人に起こされてご飯を一緒に食べて大体どちらかと一日を過ごす、予定がない時は3人一緒でわたしたちは家族よりもスパークを分けた兄弟のごとくくっついてるとからかわれる程
わたしの身体だけは柔らかくてみんなみたいな頑丈さもないから少しだけ嫌になるけれど2人はそんなわたしをかわいい特別な子だといってくれるから嬉しかった

「もうすぐドーミィ帰ってくるって」
「本当?じゃあ用意しなきゃ」

クロームドームは記憶臨床医?だとかなんだと難しいお仕事をしているらしくてロストライト号にいても度々呼び出されることがある、大体2〜4週間は毎回かかるし本当は危ない仕事も多いからリワインドはやめてほしいとは思ってるけど生活の為とかそうじゃなくても色々あって行くしかないらしいからわたしたちはいつもクロームドームが出ていく前日の夜はそれこそいつもよりもギュッと近付いて抱きしめて寝る
硬い金属の身体に挟まれておなじく硬いベッドなのにわたしはそれに慣れているから2人の調整してくれた機体温度が気持ちよくて毎日快眠だ、今回は3週間ほどで帰ってくる彼にわたしたちは早速クロームドームの好きなものを用意したりちょっといいエンジェックスを出したりした早く帰ってきて欲しいねとリワインドと話をして勝てないポーカー勝負をして笑いあってたらドアが開く音がして慌てて入口に行く

「おかえりなさいパパ」
「おかえりドーミィ」

そういうわたし達を捉えた黄色のオプティックバイザーはドアを開けた途端は床を見つめていてあの大きな身体も猫背状態だったのに一気にシャッキリと立ち上がってわたし達を力強く抱きしめた

「あぁ〜もう2人に会いたくて堪らなかった恋しかったよ俺のエンジェルたち」

バイザーやマスクがあるのにクロームドームの顔は喜色満面といえよう表情がみえるのはいつも不思議だけれどその躍るような声色にわたし達は嬉しくなって抱き締め返してすぐに食卓に案内してあげる
彼らの食事はわたしと違って種類が少ないけれどその中でも彼の好きな物をわたしとリワインドで用意した、長い期間開いてしまうからこそネットで頼んだりも出来るからいつもよりも豪華な食卓にはなっているはずだ
嬉しそうに沢山ありがとうといってわたしたちの頬にキスをしてくれるクロームドームにこのままじゃ3人ともご飯が食べられないからといってようやく解放してもらいご飯をして、終われば水着に着替えて洗浄ルームへ、わたしと違って毎日はお風呂が不要な2人だからこういうのもとても大事なコミュニケーションだったりする

「そうだアイリス、頭洗ってあげようか」
「ええークロームドームが?」
「なんだ俺だって器用な方なんだ、前より上手くなってるはずだし」
「そういいながらアイリスの頭取れそうだったけどね」
「意地悪いわないでくれよ」

じゃあ仕方ないな。とわたしは頭を濡らしてクロームドームの前に立てば大きな指が私の頭を撫でてくれる
2人とも大きさが全然違うから手の感触も同じ金属なのに随分と違うように感じた。ふと2人がくすくす笑ってるから何かな?と思って鏡を見ればわたしの髪の毛は逆立てられたり星みたいな形にされたりして遊ばれていた、似合ってるよというリワインドもすごく楽しそうにしてて次は僕らとおそろいにしようといって2人の頭のような髪型にされて洗浄ルームではいチーズと写真を撮った
たくさん笑って疲れきって髪の毛を乾かされてる最中に眠たい顔をしているわたしを抱っこしてくれたリワインドとクロームドームによってすぐに寝室に連れていかれる

「まだ寝たくない」
「大丈夫、明日からはまたずっと居るから」
「そうだ明日はホットケーキ焼いてあげるよ」
「メイプルシロップたっぷりね」

ちいさなリワインドの手がわたしのお腹をぽんぽんと優しく叩いてくれる、地球にいる子供たちはみんなこういうことをしてもらうんだってと言っていた
絵本を読んでもらったり冒険譚を聞かせてもらったり歌をうたってもらったりそんな寝方を沢山教えて貰っては2人は実践してくれるのがわたしはとても嬉しい2人に貰ったおおきなくまちゃんを抱っこしてわたしは気付けば夢の世界に落ちていってしまった

ふと目覚めた時2人は隣に居なくて、隣の部屋の灯りがうっすらと付いていた寝落ちしたのが早すぎたせいだと気付いて今日は少し夜更かしもいいかもとわたしは隣の部屋を除き見ればソファに座る2人がなにか映像を眺めては嬉しそうな顔をしていた、時折2人がキスをしてるのを見てなんだか見ちゃダメなものを見た気分になってベッドに戻ろうとしたら暗くて足を絡ませて転けてしまう

「大丈夫かアイリス!」
「アイリス怪我は?」

大きな音を立てて近付いた2人に目を丸くして(といっても分からないけど多分そんな感じ)わたしは平気だよ。といったけど心配した2人にソファに連れていかれて全身スキャンされた、特に問題はないと分かれば胸を撫で下ろした様子だ

「こんな時間に起きてる悪い子にはもっと悪い子になってもらわなきゃね」
「え?いいの?」
「今日だけだよ」

そういってホットチョコレートを渡してくれたリワインドに「ありがとうダディ」といえばとても嬉しそうな顔をしてくれた、その横で小さくクロームドームがわたしに「アイリスが欲しいなら俺がいつでも作ってやるさ」というから喜んでたら「人間は虫歯になるしそこから大きな病気どころか死に直結するんだからダメだよ」と怒られた
人間だから体が脆いのはとても嫌だけどその分大切にされるのは嬉しかった、そういえば2人は何を見ていたの?と聞けばこれだよと映像が流れる

「わたし?」

今よりもっとちいさいわたしがいた、とはいっても多分2年前も行かないくらいだろう
リワインドの撮影だから大抵映るのはわたしとクロームドームだけど古いビデオカメラみたいなものに切り替わって3人で映る時とかリワインドとわたしの時もある

「アイリスが先に寝た時いつもこれみてるんだよ」
「家族になる前のも、家族になってからも」

これがあるとエンジェックスが進むんだよなと愉しそうにいう彼らにそうなのかな?とおもいつつも確かに見た目は変わらないけど少しよそよそしかったりする2人は今だと新鮮にみえる
ホットチョコレートを飲み終える頃には映像はまぁまぁ進んでいた、きっとこれからもっともっと映像が増えるんだろうなと思った反面ほとんどリワインドがいないのが寂しくなった

「わたしね、今年の誕生日ほしいもの決まったかも」
「ん?珍しいね何が欲しいんだい」
「なんだって用意するぞ」

あまり欲しいものがないわたしだからか嬉しそうに聞いてくる2人にビデオカメラが欲しいと強請ってみた、出来たら容量も大きくて使いやすいやつがいいなと注文も多めにしてみたらどうして?とリワインドがきいた

「だって今だと2人の映像全然ないから、わたしやっぱり2人の姿をもっとみてたいな・・・サイバートロン人じゃないからきっと大きくなるともっと記憶も薄れちゃうから」

そのうち痴呆症で2人がわたしを呼ぶ姿さえ忘れるかもしれないし、そんなことよりも2人がずっと笑いあってる姿を撮っていたいとおもった
黙り込む彼らにダメかな・・・とおもっていれば優しく抱きしめられる

「うん、とびきり上等なカメラを用意しようね」
「あぁブレインストームとかパーセプターに作らせたらいいしな」

わたしは嬉しくて約束だよ!と大きく声を張り上げたら絶対にと指切りをしてくれた、もう遅いし寝ようといわれて無くなったホットチョコレートのマグをリワインドが片してくれてクロームドームにベッドに連れていかれて3人していつも通りベッドの上で並んだ、真ん中はもちろんわたしだ

「ずっとずっと一緒にいてね」

わたしの言葉をきいて2人は何も言わないけれどきっと顔を合わせて頷いてるのがわかる、2人の暖かい手がお腹をとんとんと叩いてくれて眠気に誘われる中でくまちゃんではなくて空いてる2人の指をそれぞれつかんだ
あぁ2人がわたしの家族でよかったと今日も思って

数日後渡されたビデオカメラを片手に動き回るわたしをみたスワーブになんだパパ達の真似事か?と言われてそうは考えてなかったから嬉しくてうん!と返事をしたら後ろにいた2人もとても嬉しそうな顔をしてエンジェックスを頼むから慌ててカウンターにあげてもらって自分のグラスを握って乾杯した
大好きだよわたしの家族

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