アストロトレインが彼の相棒程ではないにしろ無類の女好きというのはそれなりに有名なものだが、彼の女好きはどうやら同族だけに収まらなかったことには流石に仲間達も驚きはするもののそれがデストロン軍で飼われている(というより雇われている)アイリスだと判明した際は納得すると同時に非難轟々であった
アイリスは優秀でトランスフォーマーだとて愛想良く接する、おまけに人間でないならまぁ善悪などどうでも良く自分に利益があるならどちらでも…なんていう性格故にまぁメガトロンにもその性格を好かれた

話はそんな女と男(?)の話である
2人が交際を初めて早3ヶ月、ある日の夜寝室にいつも通り潜り込んできたアイリスはアストロトレインにいった

「きみ達ってセックスできるって本当?」

セックスという単語に疑問を抱いたもののすぐ様意味を理解した彼はこの女が興味本位だけでそれを聞いてきていることを知っていた為呆れてしまう
ブリッツウィングがまた要らぬことを言ったのだと察しのいい彼は理解して重苦しく溜息をつき自身の上に跨る女を見上げる

「あぁ繁殖目的じゃねぇけどするよ」
「へぇどんな感じで?ブリッツウィングとオクトーンがビデオ貸してくれたんだけど通信室で見ようとしたらサウンドウェーブに壊されちゃってね」

そりゃあそうだ。なんてところで見てやがるんだと頭を抱えそうになる
この女は発明や修理に関してはプロだと言えるほどの腕前だがどうも頭が少し抜けている、だがしかし恋は盲目、そんなおかしな女をアストロトレインは初めて好きになった、どうでもいい興味だけでの付き合いならば1度繋がって捨てるだろうに3ヶ月もしていない
それはひとえに彼女を大切にしている他ないだろう、人間流に例えるならなんだと考えた、雌しべと雄しべがくっついて…なんて例えが検索すればでてきたがまぁそんなところだろうと説明をするも不思議な顔をした

「人間とすることは同じだ、部位があまり無いから入れて終わりなだけだけどな」
「ってことはトランスフォーマーにもペニスやヴァギナがあるの?」
「お前・・・分かった、実践で教えてやるよ」

こうなれば盛り上がった者勝ちだとアストロトレインは不敵に笑ってアイリスの体を自身の寝台に寝かせた、人間のベッドよりも硬いそこに組み敷かれる姿は恐怖や恐れなどではなく純粋なる好奇心に満ちたもので少しだけ気分が滅入りそうだった
それでも惚れた女の体に触れるということ自体に興奮しない訳もなく優しく口付けて彼女の衣類に手をかけて直ぐにアストロトレインは服を直した

「どうしたの?しないの?」

今か今かと楽しみにしているアイリスだがアストロトレインはもう一度服を捲りあげた後に戻した、もしかするとトランスフォーマーなりの愛撫なのだろうかとアイリスはポケットからメモを取り出そうとした時に彼は酷く情けない小さな声を出した

「死ぬだろ」

死を見て与えてきたはずのデストロン軍の悪名高きトリプルチェンジャーが何を言っているんだといいたくはなるがアイリスはそんなことよりも早く次の行動を。と期待に胸をふくらませたがそんなことも気にせず大きな恋人は寝台に腰掛けるものだから流石にこれは愛撫ではないなと気付き起き上がり背中に腕…は回らないので腰付近に手を添えて顔を付けて恋人の顔を覗き込んだ

「やっぱり萎えちゃった?」
「ああ」
「人間だもんねぇ仕方ないよね、うんうん」
「じゃねぇよ、薄すぎるんだよお前何だこの体!この細さ!ペラペラじゃねぇか!」

勢い余って片手で人形を握るように抱かれればあまりの起伏の激しさに目を丸くする、そしてアストロトレインは歩き出した
到着したのはメインルームでありそこにはメガトロンも含めて様々なメンバーが揃っており2人を見つめた
アストロトレインの持ち方が雑だとか、女の扱いがなってないだとかいう批判を今は耳に入れずに勢いよくアイリスの服をまくった

「おいテメェらみやがれ、細すぎねぇか」

最初こそ冷かそうとはやし立てていた連中もアイリスのその体を見ては思わず絶句して全員が近付いては腹回りを撫でた
確かにアイリスの食生活は最低限でしかない、主食はカロリーゼリーと棒状の簡易的な栄養調整食品である、時折腰を据えて食事をとるとしても大抵はサラダひとつ程度で終わるほどこの女には食欲がなかった
その時間があるならば自分の研究に勤しみたいというのが本音であるがおかげで出来た体はサウンドウェーブのカセットロン達がカセットになった姿よりも薄い程だろう、例えるならば"紙"であった
恋人同士とはいえ突然人前で肌を晒させるアストロトレインにメガトロンが怒声をあげるかと思えばアイリスに普段よりも赤いオプティックを光らせた

「ちゃんと飯を食え十分な睡眠を取れ、でなければ今行っている実験発明含め全て中止にする」
「そっそんな殺生な」
「メガトロン様の言う通りだ、お前昨日も2時間睡眠だろう」

その言葉その部屋にいた全員の赤いカメラがアイリスを捉えた、何を言いたいのかが嫌という程感じられて思わず背中を丸めたくなるがそうは出来なかった
それから彼女を真ん中に全員でどうすればいいのかという話し合いが始まったがアストロトレインが一蹴して告げた

「こいつは俺の女だ、俺が管理する」

とりあえず運動がいると思うから毎日交代で散歩に行こうだとか、アストレトレインじゃダメだから持ち回り制で寝ようだとか、食事を取れてるか確認するために一緒に取ろうだとか、気付けば奴らは自身の恋人を共有しようとしていたためだ
当の本人は疲れきったのか真ん中の席で大きな欠伸をして「発明が…」なんていう次第だった
それからのアストロトレインは実に真面目に生活を始めた、朝8時夜22時という生活にアイリスの3食の用意に決まった時間の運動
まるでこれじゃあ有料会員向けのダイエットジムのようだとおもったがアイリスは早く終わることを切に願った、でなければ自分のしたいことが出来ないからである

「アストロトレインは私みたいな貧相じゃなくてナイスバディな人が好きなんでしょ?」
「あー?まぁ男だからな」
「そういうのきみ達でもあるんだね、じゃあそういう子と付き合ったらよかったんじゃ?」

ある日の夕食を作っていた恋人にアイリスはもういい加減この生活が飽きてきたのかそんな軽口を叩いたがアストロトレインは自身の手に握った包丁を思わずまな板に叩きつけた
ここまで料理姿が似合わない存在ってのも面白いと彼女は密かに思っていたが内緒にしておこう

「お前本当に俺を苛立たせるのが得意だな」
「だって好みに合う人と付き合うのが普通は有意義な時間の過ごし方でしょ」
「じゃあ俺は好みなのかよ」
「そりゃあもう」

その回答に呆れたのかそれとも満足したのか小さく排気してテーブルの上に人間サイズの料理が置かれた、彼らは機械生命体故に計算などに優れている為か摂取カロリー等がまるで教科書通りであった
とはいえ数ヶ月前の彼の料理の腕前は下手なんてものではない、そもそもあの巨体のまま人間のものを使っているのだから当然だろう、質量変換マシーンでも作ろうか?と声をかけるも一刀両断されたのはまだ記憶に新しい

「うまいか?」
「とっても」

アイリスは案外いまのこの生活は悪くないとも思った、食事をする姿を見る目の前の恋人はとても柔らかい表情をしているためだろう
自分の発明品が役に立った時と同じ気持ちなのかもしれないと料理のできない彼女は考えた、アストロトレインは案外料理を作るのが楽しくなってきたらしく栄養士の資格なども取れるほどの知識と料理人としてのスキルもあげてきた
そして今まで引きこもりであったアイリスにデートと称して外に連れ出しては2人は前までよりもずっと恋人らしい時間を過ごしてもいた。
そうしてはや3ヶ月、メガトロンに頼んで買ってもらった体重計を前にアイリスは嫌そうな顔をした、目の前の大型機はさぞ期待に満ちた目をしている

「乗れよ」
「レディの体重測定をこんな風に見守るだなんて」
「そんな感情あったのか」
「多少は」

彼女の言葉を鼻で笑っては急かすように腕を引いた、バスタオル1枚の小さな彼女がそこに乗れば数値は初めて見た時よりも明らかに増えていた
純粋に喜ぶべきなのかアイリスには分からないがアストロトレインはどうやら嬉しいらしく小さくガッツポーズをしていた

「目標まであと5キロだ、早けりゃ1ヶ月で終わるがまぁアイリスの場合なら3ヶ月か?」

鬼軍曹だ。とアイリスは思ったがその頃にはこの大きな恋人が作ってくれる食事は美味しく共に過ごす時間は楽しいと人並に思えた
そして自身の月経が不安定だったものも治ったり、前よりも顔色や肌質が良くなったりとまぁいい事尽くしなわけでデストロンのみんなにも褒められるほどだった
夜間のデートと称した健康のためのジョギングは人間の歩幅に合わせる彼の小さな歩幅だとか、腰が痛くなるほどしゃがんだ体制だとか、自分の手でいっぱいに握る人差し指だとかそんなものさえ愛おしく感じた、そうしてアイリスは幸福と共に自分の恋人がガサツながらも愛情満点の彼でよかったとおもっていた
そうして2ヶ月と3週間にして目標体重にいよいよ乗った、前よりも顔はふっくらとしたが健康的で手足もむっちりとしていた、とはいえあくまでこれは彼女にとっての平均体重であるため見た目が大きく変わったことはない、ようやく自身の使用していた研究室の解放をしてもらったアイリスの目の輝きようとはクリスマスプレゼントを貰った子供のようだった
また彼女は研究に没頭するとしても以前の様な生活にはならないだろうと思えた、その日の夜遅くまで研究をしようとしたアイリスを止めたのは当然アストロトレインである
いつも通りに夕飯を取り風呂に入りそして

「なにしてるの」
「最初に誘ったのはお前だろ」
「あのさ、アストロトレインひとつきいていい?」
「あぁ」
「料理を作ることにおいて楽しいことってなぁに」
「そりゃあ美味く仕上がった時や作る過程だろ」

どうやら彼女が気付いた時には少し遅かったようで狼は着々と餌を育てていたらしい
紫の大きな機体に覆われながら彼女は考えた、人間とトランスフォーマーの初性交なんてとても貴重なデータが取れるのではないかと
ギラギラとした異性の目をした彼はろくでもないことを考えているなと察しながらそんな彼女の唇を奪った、自分好みになった身体を撫でながら

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