ふと目覚めたのは外の騒がしさに気付いたからである
デストロン軍団の捕虜兼科学者のアイリスはいつの間にやら昼夜逆転しただらしない生活の中起き上がり、毎朝(現在は夕方である)の習慣となったコーヒーを入れる
濃い黒の液体の中に冷蔵庫から取りだした牛乳を並々と注ぎ入れ最後にこぼれない程度に3.4つ程角砂糖を入れれば完成である
さあ今日も良き発明をと思っていれば騒がしかった音は気にならなくなった時部屋のドアが開いた、この基地にいる者は大抵ドアをノックしない、異星人であるためそう言う習性がないと言い聞かせてアイリスはコーヒーを口につけていれば3人の青年が勝手知ったるや否や入ってくる
3つ子のように似た彼らの顔はよく整っており肌の色こそ違えどまるで瓜二つの顔をしていた
「よおアイリス」
「おはよう私はあなたと初めましてだけど」
「なんだよ俺様のことが分からないってのか?」
凡そ身長178cmほどだが更に3cmほどのヒールを履いている青年は彼女に馴れ馴れしく肩を組んで楽しそうに笑っていた
「おいやめておけよスタースクリーム」
白い肌の青年が困ったような顔をしていう
そしてふとその青年が呼んだ名前を復唱した、スタースクリーム、スタースクリームとは聞いた名前だ、彼女の知る限りそんな名前の人間はいないが異星人ならいる
デストロン軍航空参謀自称ナンバートウーのスタースクリームのことだ、ふと肩を組む男を見上げれば彼は楽しそうに赤いその目を三日月のように歪ませて口角をあげた
少しつり上がった目と生意気そうだが整った顔、歳は凡そ20代中頃か褐色の肌とあわさった黒い髪が短く揺れた
「ってことは、こっちはサンダークラッカーであっちはスカイワープ?」
「おうそうだ、っていうかあっちやこっちって俺たちのこと雑に言うなよな」
「まぁいいじゃねぇか、ほらそろそろ解放してやれよ」
「ふん仕方ないな、それよりアイリスどうだ俺様たちをみてなにか思わねぇか」
お洒落さが目立つポップなデザインのパイロットスーツに似た衣類に身を包んでいる3人のスタイルは当然良かった、これで中年のようにお腹でも出ているものならかっこいいとも思いはしなかったがデストロン軍での花形なんて言うだけのことはあった
「うん、やっぱりかっこいいね」
「やっぱり?俺のこともか?」
「えっえぇ、スカイワープって肌も黒いのね、エスニックな感じですごくかっこいいとおもう」
「それなら俺は」
「サンダークラッカーはやっぱり元の見た目通り3人の中で1番爽やかな王子様っぽい見た目だよね」
「な、なら俺は!」
「スタースクリームもそりゃあ当然リーダーなんだからかっこいいに決まってるでしょう」
まるで子供のようにはしゃぎ回る彼らに一人一人感想を告げる
実際の感想を言えば
黒髪に濃い褐色のスカイワープは1番目元がきつい割には瞳が大きくて童顔にみえてかわいい
黒髪に真っ白な肌のサンダークラッカーは上記の通り1番爽やかで紳士的で多分モテそう
黒髪に薄い褐色のスタースクリームは少しつり上がった目と眉が自信を表しているけれど長いまつ毛や通った鼻筋などまるでモデルのようで王道的な美しさを持っていた
ジェットロンという存在は元から眉目秀麗だとよくスタースクリームはいうがアイリスは人間になった彼らを見てなるほど理解した、機械生命体の時の彼らに対しては何も分からないが人間になればわかりやすい
「まぁそういうことがアイリス、人間になった今ならいいだろ」
「ん?なにが」
「そんな格好だ、俺の事を誘ってるんだろう」
ふと両肩をスタースクリームに掴まれて見上げれば彼は楽しそうな顔をしていた、なにか怪しい気がして離れようとするも背後にはいつの間にかスカイワープがいる、そして横にいたサンダークラッカーが手に持っていたコーヒーのマグを取り上げて優しくテーブルに置いた
その6つの赤い瞳はまるで蛇のようだと思い唾を飲み込んだ時
「なにしてるんだよ!」
「やっぱりここにいたぜサウンドウェーブ」
ドアがまた音を立てて開いて入ってきたのは幼い子供が2人と大きな黒猫と2羽の鷹が入ってきて3人を攻撃し始める
そして後から入ってきたバイザー姿の男を見てアイリスはすぐに指さして名前を呼んだ
「あっサウンドウェーブだ」
「ソウダ、ヨクワカッタナ」
「あなた以上にわかりやすい人いないと思う」
入ってきた男性はジェットロンの3人よりかは歳上に見えた、紺色に近い青い髪と特徴的な赤色のバイザーと大きなヘッドセットなどこの軍の中では多分1人しかいない
となればいまジェットロン3人の脛を集中的に攻撃する小さな子供たちの正体も理解したアイリスは少し楽しそうに片方を抱き上げた
紫色のパーカーと暑そうな帽子をかぶるバイザーの少年を抱き上げて顔を見つめてはかわいがるように頬にキスをした
「あなたフレンジーでしょう?」
「ああそうだぜ!さすがアイリスはすぐわかるんだな」
「そりゃあこんなにかっこいい子フレンジーしかいないもん」
きゃあきゃあと笑い合うアイリスに釘付けになるほかのメンバーを他所にもう1人のカセットロンであろう少年が彼女の足元に抱きついた、歳にしてみれば凡そ10歳ほどかそれ以下か
アイリスは案外子供好きだったらしくフレンジーを下ろしてもう1人を抱き上げた、双子のようにフレンジーと同じ服を着た少年の頬にキスをして彼女は名を呼んであげた
「ランブルでしょ?そんな悲しい顔しなくてもわかってたよ?」
「そっそうかよ、別に悲しい顔なんてしてないぜ」
「にしてもかわい…かっこいいね、みんなどうしてこんな姿になったの?」
普段からかわいいと言う度に怒られるアイリスはグッと押えて未だ小競り合いをする彼らにどうしてそんな姿なのかと問いかけた
事の発端はアイリスが目覚める1時間ほど前、今日もデストロン軍は莫大なエネルギー源のある発電所を狙いに行ったがやってきたサイバトロンと一悶着起きてしまった、そこまではいつも通りだがあちらの発明家ホイルジャックが突然ばら蒔いた新薬それは敵味方問わずに有機生命体に姿を変えてしまうものだった
薬は一晩で戻るということだったがとんだ災難だと敵味方問わず全員がげんなりとした顔を見せ今日はどちらとも静かに引き下がった
「だがアイリスとこうして話せるのは嬉しいもんだぜ」
「そうだね、私もみんなと同じ目線なのは嬉しいよ」
サンダークラッカーがそういって優しく肩に触れればアイリスも安心した顔をして微笑む、その二人の間には僅かながらも優しい春のような温もりが広がろうとしたが「ジャガーアタック」といって攻撃を仕掛けるものだからジェットロンvsカセットロンの戦いの幕開けであった
「あぁもう暫く帰れないな」
小さなため息を吐いて足元を見ればそういえばまだ寝起きでTシャツ1枚だけだった。と思い出すもののどうせ彼らからしてみれば自分はただの異星人であるため何も問題は無いと判断した
そうして適当に広い廊下を歩いている時ふいに背後から下半身、正確に言えば臀部あたりを勢いよく叩かれ情けない声が上がってしまう
「なんて声出してやがるんだ」
「ええ…っと」
「さあ俺は誰だろうな」
楽しそうに笑う短い紫髪にメッシュのような金髪の入った男はえらく大きな体をしていた身長だけで言えば190は優に超えており体全体が先程までのメンバーと比べて遥かに大きい
顎に手を当てて少し考えた後にアストロトレインと名前を呼ぼうとした瞬間また臀部が触れられた、次は叩かれた訳ではなくその脂肪を知るように掴まれたのだ
「ちょっとなにするの…ブリッツウイングでしょ」
「なんですぐわかるんだよ面白くねぇな」
「面白くないじゃないってばおしり触んない、ちょっとアストロトレインからもいってよ」
「なんだ気付いてたのか」
「答えようとしたのに彼が邪魔したの」
赤いバイザーで派手な肩くらいのブロンドヘアーそれはもう楽しそうに笑う体格のいい男が分からないわけが無い、恰幅のいい男二人に挟まれ揉みくちゃになるアイリスは今すぐ誰か助けてくれと隙間から手を伸ばせばその手を掴み引っ張り出される
「はぁっ助かった」
「大丈夫かアイリス」
「ええっと」
もうダメだ分からない。とアイリスは匙を投げそうだ
なぜなら目の前には多分合体戦士集団がいるからである、服のカラーからして自身を助けてくれたのはビルドロンチームでマスクがなくバイザーのみの黒い髪をしている彼は多分リーダーのグレンだろうと察する
だがしかしだその後ろに控えるビルドロンチームは当然だが、更にまだまだメンバーがいるがそれぞれ同チーム同士似たような服装をしているのだけが唯一の手がかりでありコンバットロンやスタントロンのメンバーであろう、言い合いを始める彼らに挟まれるばいいがさすが合体兵士たちとトリプルチェンジャー、人間になってもそれはもう体格がいいもんだとアイリスは冷や汗をかいた
「こんな格好してたら襲われるぜ」
「いや、寝起きだったから」
「寝起きなら尚更だろ?」
「そうだね、これからは気をつけます、はい」
「俺たち今は人間の男なんだぜ」
アイリスは人間社会では上手く生活ができなかった、コミュニケーションが苦手だからだ、相手の言いたいことがあまり理解できないでいた
彼らが人間では無いからなのかはたまた別なのかは分からないが今自身の身には危険なことが怒ろうとしていることだけはわかっている
誰かに服を引っ張られるのを必死に止めていれば胸元をあけられようとするし、彼らが改めて柄の悪い悪の軍団の一兵士たちだと気付いた
「テメェらなにしてやがる!」
甲高いヒステリックな声に今日ばかりは感謝した、先程アイリスの部屋にいたはずのジェットロン3人とカセットロン部隊が彼女を探しに出てきていたのだ
さあ戦いだ。と言わんばかりに広い廊下で何十人もの男達が殴り合い始めるのを横目にまた逃げ出す
もう今日は散々だとため息をついてやってきたのはメインルームである、誰もいないのか静かであり思わず床に腰かけていれば足音が聞こえそちらに顔を向ければ初老とも取れる男性が1人
「めが、とろん様?」
「ああそうだ、事情は聞いたのか」
「ええ先程伺いましたよ」
その結果今どうなっているかというのは黙った
50代半ばか後半ほどの白髪混じりの銀髪は後ろに撫でつけられ、顔の皺が彼の歴史を語るようでどんな姿になっても彼は彼のままなのだと何となく思った
「えらく疲れた顔だな、ワシの部屋で休むか?丁度人間サイズに調整したばかりだ」
「いいんですか?」
「ああ当然だ、こんなところにいても仕方あるまい、ゆっくり…ゆっくり人間の体について教えてもらうとしよう」
そういって突如お姫様抱っこをされたアイリスはメガトロンがここまで人の体を気にするだなんてと嬉しそうに呑気に笑う
数時間後彼の自室でじっくりと人の体について教えたアイリスはサイバトロンのホイルジャックを恨むのだが今はまだ分からないことだろう。
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