メッサテインの白い雪の中で笑う彼女はまるで幻覚のようだった、いや事実幻覚だろう、何故なら彼女がその星の自然の大地を踏み締めたことなどただの一度もないのだから
フォートレス・マキシマスと共にデルファイに現れた有機生命体である少女、アイリスの説明は輸送される前に送られてきたデータにて確認していた、彼女はオーバーロードに飼われた哀れなペットであるがその自覚が無いのかはたまたストックホルム症候群に苛まれ気を病んだのかヤツを"オーバーロード様"と呼び慕い親兄弟のように感じていたらしい
「ファルマせんせいおはようございます」
「おはようアイリス」
彼女を看護助手として使う事になったのは一様にデルファイの人手不足からであり、フォートレス相手に毎日健気に行う看護姿は傍から見ても完璧なものであり何故彼が地獄の園で生きていたのか理解してしまう
そして自身がそんな有機生命体の担当になるのはこの場で一番高い地位と責任を持っているからである、正直な所アンブロンやファーストエイドに託したいところでもあるが仕方がないことであった
身体的な部分以外に彼女に困らされることは殆どなく、仕事もそつなくこなし愛想もよくニコニコとしては殆どフェーダーばかりの患者一人一人に挨拶をしてやる姿は健気なものだ
「ご褒美はないんですか?」
彼女が来て早一ヶ月、二度目の健康診断にてそういった、看護助手としての知識の確認の為のテストも満点で健康面も問題は無くそうした子供が褒美を欲するのは至って自然のことだとも思いつつまったく欲の深い生き物だと僅かに嫌悪を混ぜた呆れを感じ人間用の嗜好品は無いと告げればそのちいさな頭(かぶり)を横に振るい変わらぬ笑みを浮かべて告げる
「自慰と口淫です、知りませんか?」
その言葉に思わず手を止めて見つめれば彼女はオーバーロードはくれたのに。というものだから僅かにブレインに痛みが生じる
オーバーロードさま と甘い声がその部屋に響く度に不思議な心地にされてしまう、まるで幻覚や幻聴でも聞いたような、ねっとりとしたその独特のオンナの声、代替案を用意するといえば不満足ながらも納得した顔をして彼女は ファルマせんせい 大好き と無邪気にわらった
「あぁっ…あぁ、オーバーロードさま」
彼女専用の狭い隙間のような部屋を見れば薄くその声が聞こえた、何をしているのかは言われずとも理解が出来ており、そんな彼女に構う暇もなく病棟を歩き回った
暗い霊安室の中で元は患者であった者たちを見下ろしては背後を見て誰にも気付かれぬように彼等の内部を漁る
ない
ない
ない
そうだ、この辺りの患者は全て抜き終えたあとなのだと気付いては深い排気を漏らす、次いつ自身の通信機が鳴るか気が気では無い、あの音がなる度に神経が擦り切れ、相手の名前が表示される度に叩き割りたくなってしまう、デルファイに勤務がはじまりDJDの縄張りであると理解した時、何故こんな場所に医療機関を作ったのだと言いたくなりつつもニュークリオンを採取できる鉱山では怪我人も多いため仕方がないものだった
仲間達は誰もこの一帯がDJDに荒らされないことに気付かない、それどころかディセプティコンでさえ時折逃げてこようとする程でありここを楽園だとでも思っているのかと全員に問いかけてやりたいほどだった
「ファルマせんせいってわらわないんですか?」
「笑える状況があればな」
「ニコニコしている方がいいですよ、オーバーロードさまもよく笑っていました」
その方が気分が良くなるでしょうという彼女の口から出る言葉の次は大抵オーバーロードという単語が紡がれる、いっその事この人間の語尾なのではないかと感じる程だ
ディセプティコンに嫌悪感を抱くと伝えていても彼女は変わらずにオーバーロードの名をいうことに苛立ちを感じて暴力的に脅しても何も感じないのは彼女の精神が完全におかしくなっていたせいだろう、全ては奴のせいで地球に戻れば多少の感性も戻るのではないかと提案をしてもいつかオーバーロードが"仕事"から帰ってくるかもしれないからといい受け付けなかった
彼女は現実逃避をすることによって生に執着する
実際オーバーロードがレッカーズにより捕獲されたと説明をしても生きているのならば問題との判断なのだろう、張り付いた仮面のような笑みの下に何を思っているのか分かりはしなかった
「そんなに恐れることがあるんですか?」
霊安室の中に響いた声に思わず振り返ればスグそこには姿はなく、音の発生源である入口の地面に近い場所を見つめれば彼女はいつも通りの笑みを浮かべ近付いた
何故ここにいる、就寝時間のはずだ、別に私が霊安室に来ることだってある、様々な回答がブレインを過ぎる中で明確な答えは声帯シンセサイザーから故障した訳でもないのに漏れ出すことはなかった、トランスフォーマーとの生活に慣れた彼女は隣に並びそして地面に置かれた数多の棺の中で唯一開封されたソレをみつめる
「あなたは何も間違っていませんよ」
「なにを、知っているんだ」
「何も?けどファルマせんせいは間違えません、私は私の愛する人が間違えた姿なんて見たことはありません」
「…オーバーロードがそうであったように?」
「ええ、恐れないでくださいあなたの行いは間違いではありません」
だから罪悪感なんて抱かなくていいんです。
あまい あまい あまい
ねっとりしたスピーダーのような声がブレインを支配する、一度も決めたことなど無い薬物の様な危険なその声が頭の中を駆け巡り彼女に言われるがまま死体の胸元を開けて必要なそれを抜き取った
何度対峙しようとも足が竦みそうになる存在だと感じた、万が一にも答えを誤れば自分も仲間も命は無いことは明確でありこの取引を拒否した暁にはどうなることかなど想像もしたくないものだろう、機嫌よくブツを受け取る仮面の男に次はこれの倍を…と言われ思わず思考が停止する
「無理だとは言わないだろう」
無理に決まっている、死者からコグを抜くだけでも冒涜である、私は医者だ、モノフォーマーのように自らコグを抜きたがる者たちから取り上げるならばまだしもそんなこと
「守る為ですよ、先生は間違っていません」
ニコリと微笑むその彼女の笑みがいつからか天使という生き物に感じるようになったのは何故か、自分の罪を和らげてくれるからなのか
ならば何故自分は彼女に"褒美"をやらないのか、何故彼女に応えてやらないのか、私はとても酷いことをしているのでは無いのか
まるでこちらの罪悪感を理解してなのか隣に立つ彼女はフェーダーの胸元から手馴れたようにモノコグを取り出してこちらに差し向けた
「これは救済です、もう消えゆく彼らには不要なものをせんせいは取り出してるだけ、ね?そうでしょう」
そうだ彼等はもう助かる見込みなどない、生命維持装置に繋いで無理矢理にこちらの都合で生かされているだけで目覚める事など無いのだ、そしてその些細な行動によって救われる命があるのならば、守れる場所があるならば間違いでは無い
医療用綿棒よりも細い彼女の両手から受け取りつつ彼女を片手に抱いた褒美をあげなければならないと告げれば彼女は嬉しそうに笑みを浮かべて指に顔を擦り付けた、あぁ愛おしいかわいい私の天使よ
「アイリス、もっといい褒美が欲しくないか?」
「もっといいご褒美?」
「あぁそうだ」
彼女の行うことは所詮自慰であり、自身を慰めるに過ぎないが心を満たすには互いを繋げ合う方が効率的でいいと言い訳をした、体格差だとかそんなものはこちらの技術でどうとでもなれる
自身で慰めてこちらのものを懸命に奉仕する姿も悪くは無いが生憎と私はオーバーロードでは無いため尽くしたかった、その天使の秘所に顔を埋め人の柔い肉の体を抱く…いや、溺れたかった
「はぁ、ぁ♡きもち、ぃ♡こんな…の、しらなっい♡♡ふぁるま、せんせぇ♡せんせぇっ♡」
「あぁアイリス、ちゃんと感じろ、ちゃんと私を覚えてくれ」
カメラを一度閉じれば広がるは白い雪の中で笑う彼女だった、何も間違っていない何もおかしくは無い、ただこれは彼女の望んだものであり治療であり最前の行いだった
自身の無意味な生殖器を見立てたその部品の一部をその肉の中に沈めた時なんとも言えぬ心地を味わった、彼女ははじめこそ破瓜に顔を歪めたものの直ぐに快楽に変換させ両手を伸ばし名を呼んだ
ファルマ先生
ファルマせんせい
ふぁるませんせい
ブレインサーキットがうるさい程に音を立て体格差のある行為は愛し合う生き物ではなく弱者を蹂躙し食らう様であるというのに見下ろす先の彼女は薄く笑みを浮かべる度に食われたのはどちらだったかと思わされる
ふと行為中通信機が音を立てた、特殊な回線のソレに顔色を変えれば彼女は腕の中で「どうぞ」といった
いつしか聞き慣れた声は数日後にまた受け取りに行くという内容であった、そしてまた同じ量のコグを用意して欲しいという、トランスフォーマーを解体して売り飛ばすような連中と何も変わらない最低な行いをしていると思っていれば通信を切り終えて直ぐに彼女が優しく頭部を撫でる
「大丈夫、大丈夫、せんせいは"お仕事"をしてるだけ…ノルマが多いお仕事は大変だけどきっとファルマせんせいなら大丈夫、私も手伝いますからね」
罪では無い、悪では無い、これは守る為に必要なことなのだ、仕方がないことなのだと復唱し続け、繁殖をするわけでもない、意味の無い行為を行い彼女の最奥にオイルを吐き出しエラーが生じる中で見つめれば優しく彼女はこちらをみて頬に手を添えて口付ける、それは天使が人々に送る祝福のようであり溺れるならば泥船でも構わないと思うのだった
いつから彼女の御褒美がこちらにとっての救いへと変わったのか分からず彼女と関係を続けた、仕事をそつなくこなす彼女は看護助手であるためその小さな身なりでもデルファイの中を駆け巡る
コグのこと以外でも新たに来る急患やら症状が突如変わった者など様々な対応をこなしようやく終えた頃、休憩室にて珍しい笑い声が聞こえ眺めればそこにはファーストエイドとアンブロンに挟まれた彼女がいた、純粋な友達と話しをするようなその笑みはこちらに向けた怪しいものとは違い特別なものはどちらだったのかなどという考えよりも先に彼女の名を強く呼んでいた
「アイリスなにをしているんだ、彼らに迷惑をかけるのはやめろ」
「…ええごめんなさいファルマせんせい、それに二人とも休憩中にごめんなさいそれじゃあ」
「いやそんなに気にしなくとも」
「俺たちはそんな迷惑だとは」
うるさい黙れと言ってやりたいが彼らは仲間であり数少ない医療者なのだから労らねばならない存在だった、オイルが沸騰するような感覚を味わっていれば足元に来たアイリスはこちらを見上げて患者を見たいから部屋に連れて行って欲しいという
「どれだけコレがお前達に話しかけたり愛想良くしても所詮はやつのところにいた生き物だ何かおかしなことを吹き込まれでもしたら危険だ」
言い訳がましい言葉をちいさく呟けばアイリスは手の中で「ファルマせんせいは仲間を大切にしてるんですね」といった、そうなんだと思いつつ彼女を連れていくのは自室である
充電スラブの上に置いた彼女を見るのは何度目か、意味の無い御褒美として彼女を抱くのは何度目かと思いつつ抵抗のない彼女を見下ろせば仕事はいいのかとまともな返答が飛んでくる
「いいから脱ぐんだ、酷くされたいのか」
そう詰めよれば彼女は何も言わずに手馴れたように衣類を脱ぎ去る布の下から現れる白い傷の無い人の身体に興奮を抱き口腔オイルを飲み込む
充電スラブの上で脚を大きく開き魅せるように秘所に指を這わせた彼女に一度もコネクタを差し込まなかったオーバーロードの優しさなのか異常さなのか分からぬものに感心してしまう、私は触れたくて堪らないのだ
くちゅくちゅと粘土のある水音が部屋の中にちいさく聴こえ心地よくなり彼女の荒い呼吸と赤く主張する陰核と隠すように生えた肌を映えさせるような毛質の違う縮れた体毛
「ンッ♡ファ、ルマせんせっ、きもちいの、きちゃう♡♡」
「手を退けるんだ」
「は、ぁ♡…っぃ、あ♡♡」
甘いエンジェックスを溢れさせたような抗えぬ魅力を持って誘う彼女の細い足に顔を寄せて舌を伸ばす、溢れる分泌液を舐めては何度も機体の中に流し込み細い足を指で掴んでやれば彼女は腰を揺らして逃げられぬというのに毎度逃げようと抗うことに苛立ちを感じる
「私に身を委ねるんだ、溺れろ…イケアイリス」
「せんせ、ファルマ、せんせいっっ〜〜〜♡♡♡」
教えこんでやった絶頂を味わう彼女を見下ろして堪らずコネクタのハッチを開き手のひらサイズの彼女を抱き上げて押し付ける、はじめの頃は規格外のサイズに有り得ないと嗤笑したというのに無理矢理に嵌め込んだパズルは案外上手くいくものだった
あれだけ苦痛に顔を歪め泣きじゃくり他の男の名を呼んでいた女であるというのに
「あっ♡アッ♡すきっ、奥っトントンッ♡しゅき♡♡ファルマせんせ、ぃの♡コネクタ…だいすき♡♡」
こちらのモノに夢中になって腕を伸ばす彼女を愛らしいと感じないわけが無い、自分の思う天使という生き物に触れて堕落させる時が一番心地がいいのは誰だってそうだろう
バカになっていると思考回路が動きを止めてただちいさなヒトの身体を貪り食らうことが心地いい、何度も抽挿を繰り返した末に腟内射精すると伝えれば彼女は嬉しそうに微笑んだ
種が欲しいのだろう、私達サイバートロニアンにない事が悔やまれる、種があれば私は彼女を孕ませ子を育てる腹をさらに犯して私が彼女の男であり子の父であることを教えてやりたいと思うからだろう
行為を終えたあと大抵眠りにつく彼女の腟内に指を入れてオイルを排出してやりながらも自身で味わう、愛液と混ざったオイルは不思議と不味くは無い私は彼女の腟内に還りたい
「明後日取りに行く」
短い通信に吐き気さえ感じられた、もう限界だ…誰も助けてくれやしない、死人の数と要求は増えるばかり終わらぬ闇への道を照らすのはアイリスしかいない
どうしたらいい、上に上申しても助かる見込みなどはなく、封鎖出来れば助かるかもしれないと考えがよぎるがそれは鉱山で働く者たちを見捨てることになり更にはDJDを裏切るようなものである
「いっその事ココを封鎖してもいいかもしれませんね」
「…そんなことは」
「ずっとこんな事してても前に進めませんし、誰も助けてくれない、せんせいだって分かっていますよね?」
ここ数ヶ月の死亡数は急激に増えていることを間抜けでない限りは遅かれ早かれ気付かれる、天使は優しく数値の低い者たちの生命維持装置の電源を切って夢の世界へ誘ってやり手馴れた様子でこちらにコグを手渡した
レッドルストを利用し監房のディセプティコンを利用したアンブロンを利用し全てを無に帰してやり直せるはずだった
誰も私の苦しみを理解してくれない苦労を守ろうという想いを彼女以外知らない
「助かるにはどちらかしかない、ジェットモードに変形し感染するか落下死するか」
ラチェット…どうして直ぐに助けに来てくれなかった、どうして私が狂う前に…落ちゆく中で見えた景色は白い雪の中で笑う彼女だった
「またね、ファルマ先生」
誰もが彼女を勘違いしている、無垢で純真で子供らしくてそれ故にオーバーロードに飼われ酷いことをされていたと思っている
決して違う、アイリスという少女はしっかりとオーバーロードの跡目を引き継げる程の知識と技能を身につけていたのだ、フォートレスマキシマスが乗船後カウンセリングを担当するラングは向かいに座る少女に対して恐怖感を感じられた
にこやかに笑うその奥の瞳は怪しいルビーの光を宿しているように見えたからである
「それで彼の手伝いを?」
「はい、だって困っている人は放っておけませんから」
「なるほど、それでレッドルストの計画やコグ提供をと…」
「誰もファルマせんせいを助けませんでしたから、少し背中を押すことは大事だとオーバーロードさまも仰っておられました」
だからそうしたまでだというが彼女は人を狂わせる才能があるのだろうか、ラングが知るファルマという医師は何処までも優秀で冷静で正義感に溢れた存在であった
彼女は確かに背中を押してやった、崩壊へ向けての一押しだろう、現にフォートレスマキシマスも同じように彼女に依存しかけた傾向がありカウンセリングの末出来うる限りの接触を止めるように手打ちしたいものだがその反動が酷いことを察しているため慎重に行動しようとしていた
「ファルマはあなたが背中を押したことで可笑しくなったと思うことはありますか?」
そう問いかければ彼女は一度笑みを止めた、そして顎に手を当てて頭を捻りどうだと考えた
「仮に可笑しくなったとしても、それは自らの選択です、本人がそれで心地よく生きられるのならばその方がいいでしょう?"楽園"はみんなにあるんですもの」
そうオーバーロード様も言っていました。と彼女は自身の"神"の名を告げた
重度のサイコパスに育て上げられた少女を改善するにはどうすればいいのかと思う、何も知らない自分達の種族を惑わす彼女は夢のような幻想のような悪魔のような天使のような姿で笑みを零すがラングには死神のように感じた
ファルマのことについてどう思うのかと最後に聞けば彼女は「いい人でしたよ」と答えたそこに愛情などは無いのだろう、まるで遊んでいたおもちゃが壊れたから興味をなくしたような顔だ
以上で今日のカウンセリングは終了です。と告げれば彼女は部屋を出ていく途中に振り返る
「あぁでも私ファルマせんせいの"御褒美"も好きでしたよ」
出ていく彼女にラングはカルテを見つめて考える
彼女以外の誰かが別の形で手を差し伸べていたらきっと異なる結末を迎えられただろうにと、少なからずデルファイでの死傷者はここまで多くなかったと思うと考えながらデータパッドを閉じるのだった。
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