「ジャガー・・・ジャガー全ク何処ニ行ッタンダ」

サウンドウェーブは珍しく1人ごちりながら海底基地の中をさまよっていた、ちょうど自由にさせていたカセットロンの一人であるジャガーが見当たらなくなったからである
会議をしている間だけだというのに全くこうも見つからないものかと思いつつ彼はモニタールームに入った

「アイリス、ジャガーヲ見テイナイカ」
「ジャガーでしたらこちらに」

毎度モニタールームを取り仕切るのはデストロン軍団の諜報員かつ女性兵士のアイリスである、彼の声掛けに振り向いた彼女の膝にはご機嫌だと言わんばかりに喉を微かに鳴らしつつリラックスをするジャガーがいた
全くもって腹を出して寝る等カセットロンの一員がなんという態度だと彼は絶句してしまう、おまえにアイリスの前だというのに呆れて彼はジャガーのそばに駆け寄る

「連レテ行ッテモイイカ?」
「構いませんがなかなか降りてくれませんので抱っこしてあげてくださいね」
「・・・ワカッタ」

彼女のシルバーの艶めいた女性機らしい太腿に1度目を奪われつつ冷静を装って手を伸ばしジャガーを抱こうとすれば彼は目を覚ましたのか体制を変えてまだ離れないと意思表示を表す
ワガママをいうなど珍しい事だがそろそろ次の任務の関係もありゆっくりはしていられないのだと無理矢理に引き剥がせばジャガーの手はアイリスの太腿を傷つける、短い声が聞こえてサウンドウェーブは固まってしまう

「スマナイ」
「お気になさらず」
「リペアルームニ行クゾ」
「そんな大袈裟な」

彼はいまだ暴れるジャガーを胸に押し込んで、傷を負ったアイリスの手を引きリペアルームに向かった、次の任務の時間はそこまで気にするものでもないと判断した上でのことである
無理矢理リペアチェアに座らせて美しかった足を彼は親切丁寧に直していく

「器用ですよね」
「アイツラガヨク怪我ヲスルカラナ」
「貴方の修理は」
「大方グレン等ニ」
「今度はお礼に私がいたしますね」

淡々とした彼女の言葉にそうか…と短い返事を返しながらようやく終えたその足を見てもらえば彼女は前よりも綺麗だと嬉しそうにいう
ありがとうと短く返事をしたアイリスはリペアルームから出ていき、道具を片するサウンドウェーブは胸元にいるカセットになったジャガーに思わず呟いた

「余計ナ事ヲスルナ」


サウンドウェーブがカセットロン全員を連れていかないということは稀にある、そういった時は大抵残るのはフレンジーとランブルである。
彼らは留守番を頼まれてはちぇーっと不貞腐れつつも楽しみを知っていた為即座にモニタールームに駆け込んだ

「よぉアイリス」
「いらっしゃい、珍しいですね何か用事でも?」
「留守番担当になったんだよ、つまらねぇからこっちにきただけ」
「そうですか、お菓子でも出しましょう」

表情も変えずにそういう彼女を仲間であるスタースクリームが過去に鉄仮面で面白くない女だと称した、確かに彼女は物腰は柔らかいもののあまりにも表情や声色に変化がない、だが本人曰く長年仕事をしすぎると表情筋が固まるのだという、ちなみにそれを聞いたサウンドウェーブが何故かスタースクリームを殴ったりもした
モニタールームの管理人となった彼女は自身のデスクからエネルゴン菓子を取り出すがこれは誰でも持っている訳ではなく、メガトロンから直々に評価を貰った時などに特別に支給される少しいいものだった
遠慮なしに彼らはそれを食べつつモニターをひとつ借りてゲームをした、2人が騒がしい中でもアイリスは気にせず自分の仕事に没頭するのを横目に見てランブルは声をかけた

「なぁアイリスって恋人作らないのかよ」
「突然ですね、戦争中ですし中々できませんね」
「おっなら作る気はあるのかよ」
「良い方が居たらですかね」

彼らに視線を向けることはなく彼女はモニターを眺めつつ手を忙しなく動かす、地球全体のエネルギーの動きサイバトロンの動きなど衛生をハッキングして眺めているのだろう彼女の情報収集能力は長けている為デストロン軍は地球に来て邪魔はされつつもそれなりのエネルギーの確保を進められていた

「サウンドウェーブはどうだよ」

フレンジーはそういえば彼女の赤いカメラアイが2人を捕える分かりずらいものの長年彼女と過ごしてきている彼らは僅かな表情の変化を感じた、驚いたような顔だろうか

「どうして彼の名が?」
「別に他意はねぇけどなぁ」
「そーそー、どうせ恋人作るなら同じ軍のやつがいいだろってなると地位も権力もそれなりにあるやつってなるから」

2人は楽しそうに会話を広げていき、アイリスの恋人にはサウンドウェーブがいいな と告げる
いわれた本人は何も知らない者からみれば無表情で怒っているようにも感じるが彼らには酷く困惑しているように見えて面白くおもえた

「それは彼に言わない方がいいですよ」

ようやく絞り出した回答になんでだよ。と彼らは不満げに問えば 不快に思われますよ。といったものだからフレンジーもランブルも顔を見合せてため息のように小さく排気を漏らした

騒がしかったものが気付けば静かになっており、視線を向ければ彼らは静かにシャットダウンしていた
アイリスは一息つこうと考えて彼女よりも随分と小さな機体を1人ずつ抱き上げてスリープ台に寝かせてやり、液体エネルゴンを飲みながら事務仕事を暇潰しのように進めていく。仕事をしている間は無駄なことを考えなくていいからだというのに彼らの言葉が頭から離れなかった
アイリスとサウンドウェーブはその能力や性格などからよく任務をこなすことが多く、相性もいい為か度々話をすることもあった、だがしかしサウンドウェーブは寡黙で冷静で忠誠心の高い男である。そんな彼に恋心を持っているなど不毛な恋でしかないだろう

そう思った矢先モニタールームのドアが開きアイリスが顔を向ければ任務を終えたばかりのサウンドウェーブが立っていた

「マタコイツ等ハ」
「ゲームがしたくてきただけですよ、まだしばらく寝ているかと部屋に連れていきましょうか」
「スマナイガ頼ム」

流石の情報参謀も1人でシャットダウンした2人を連れていくのは難しいようでアイリスの提案を素直に受けた、ランボルを抱き上げた彼女は仕事の話だけを行うがサウンドウェーブからしてみれば好印象だった
いつだって2人を繋ぐのは仕事のことばかりである、廊下の向かい側から見覚えのあるジェットロン達が現れ2人をみては呆れた顔やら楽しそうな顔に申し訳なさそうな顔をしたりと三者三葉の表情を見せる、それをみてサウンドウェーブは面倒くさい奴らに遭遇したと思えば眠るフレンジーの頬を抓ろうとするスカイワープにやめろと告げる

「ほらもう寝ているんですから起こさないでください」

注意をするアイリスに全員が目を向ければ彼女はおかしなことをいったのかと心配そう表情を見せる

「全くそうして見てたらお前ら夫婦みてぇだぜ」

スタースクリームの言葉にいわれた本人達は普段であれば分からない表情のはずがその時ばかりはえらくわかり易かった、ほらもういいだろうとサンダークラッカーが申し訳ない顔をして同じ真顔の2人を連れていく
アイリスとサウンドウェーブは一言も発さずに再度歩き出し彼の自室に向かった、ようやくたどり着き2人を専用のスリープ台に寝かせた
アイリスはランボルとフレンジーの頭を撫でながら寝顔をみつめていた、サウンドウェーブはお詫びにと液体エネルゴンを差し出した

「イツモカセットロン達ガ悪イナ」
「いえ、気にしないでください楽しいですから」
「ソウカ」
「貴方とこうして話ができるのも嬉しいですし」

そう告げた彼女に呆気を取られるが彼女は機体温度があがっていくのが目に見えてわかった、そしてグラスの中のエネルゴンを飲み干した彼女は慌てて立ち上がり部屋を出ていこうとするのを追いかけ思わず彼女の手を握った

「・・・俺モ、アイリスト話ガ出来ルノハ嬉シイ」

度々カセットロン達はサウンドウェーブにアイリスに素直になればいい、彼女もきっと気がある、彼女が恋人になるのはカセットロンたちも大賛成であった
優しく真面目で性格もよく似ている上に安心感もある、彼女ならばサウンドウェーブとも付き合えるだろうし託しても安心できるだろうと思われていた、何も答えぬ彼女にダメかとみつめていれば絞り出した声が部屋に消えていく

「勘違いしますから」

赤いカメラアイを溢れた冷却水で僅かにうるませて溜まった熱が現れて彼女の顔を赤く彩っていく
サウンドウェーブはマスクの中で口腔オイルを飲み込んで 勘違いじゃないといった、夫婦はまだ早いかもしれないが恋人からではダメかと言えば彼女は声も出せずにコクコクと頷いたものだからサウンドウェーブは感情が溢れて音楽を流してしまう
二人の関係を祝うようなロマンチックなクラシックが流れ、ゆっくりと互いの距離が縮みそして顔を寄せ彼はマスクを外そうとした途端アイリスは彼の口を覆い隠した

「ふ、2人とも起きてるようなので今日はごめんなさい」

脱兎のごとくというのはまさにこの事、ふと背後を見ればスリープ台からこちらをみつめる2人にサウンドウェーブはなんとも言えぬ感情に溢れた
ませた子供というのは困ったものだとさらに思い知らされていくのを彼はまだ知らない

「まぁ取り敢えず音を止めろよ」

とフレンジーがいうまでサウンドウェーブは気付かぬうちに喜びの音を流し続けてしまっていたのだった。



この度はTFリクエスト企画ご参加誠にありがとうございました
1度リクエスト送っていただいたようですがお名前が見当たらなかったため申し訳ございません、この度は原型TF主夢ということで上手く表現ができなかったと思われますが暖かなお話が掛けてとても楽しかったです
お持ち帰りご本人様のみご自由に
この度はありがとうございました

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