※TF主

はじめて彼を紹介された時無口無表情(そりゃあマスクをしているし目元もバイザーとまでは行かないが分かりにくい)兎に角寡黙な方だと思うと上手くやれるのかと心配になってしまったのはアイリスの記憶にはっきりと残っていた
サウンドウェーブという男は軍の中でも抜きん出て優秀かつ忠誠心を持っていた、彼の部下になる者は大抵異動願いを出すだとかクビにされるだとかで有名でその中でアイリスが彼に紹介を受けた時は少なからず上手くやれるのだろうかとは思ったが案外上手くはいっていた

「アイリス頼んでいたものはあるか」
「はい、こちらに・・・次の作戦の資料とあと最近のオートボットについてのこともデータパッドにまとめて送っております」
「優秀な部下が居るとストレスが減っていい」
「そんな・・・反対に素晴らしい上司に巡り会えたことを私こそ感謝しています」

そうして小さくはにかんだアイリス、サウンドウェーブは近頃苛立ちを多分に感じていた彼は優秀な彼女にスパークが落ち着いてく感覚を味わった
元より部下はコンドル以外不要だと思っていた彼にメガトロンが半ば無理やり押付けてきたような存在で些か生まれも最近で経験も浅くオマケに女となれば使えないなと判断したはじめの頃が恥ずかしいほどだった
元より戦争前はセイバートロン全体に音楽を送れるほどの優秀なサイバースピーカーに変形できる彼女は通信兵としては大いに活躍しており、反対にどんな小さな情報でも掴むことが出来る彼女の能力はまさしくサウンドウェーブが望んだものである

自分を素直に慕う従順な部下を少なからず悪くはないと思うのは上司として当然のことだとサウンドウェーブは思った
例え彼女が他の男にしつこく絡まれていることに苛立ちを感じてもそれは決して上司として部下が困っていることに腹が立つだけだと言い聞かせて

「ですから私はサウンドウェーブの直属ですし」
「いいじゃねぇか、オレ達相性もいいし」
「そんなの分かりませんよ」
「反抗的な態度もソソるな」
「もう!本当に仕事がありますからやめてください」
「・・・アイリス、何をしているんだ」
「サウンドウェーブ助けてください、これでは次の仕事が出来ません」

丁度メガトロンの呼び出しを受けていたサウンドウェーブが廊下を歩いていた際に聞こえた騒音とも取れそうな音楽と声に思わず顔を顰める、その先には自身の得意としない同型機であるサウンドブラスターがいた
奴もサウンドウェーブを見るなりゲンナリとした顔をするあたり2人して仲は相変わらず良くないのだろう、壁とサウンドブラスターに挟まれた彼女はデータパッドを片手に困った様子を見せており二人の間に割って入ればすぐ様背中に逃げ込んだアイリスにスパークの締め付けが緩くなる

「いい加減ソイツを寄越しな、お前にはもったいない女だ」
「女だから欲しいだけだろう下品なヤツめ、お前にアイリスの能力はもったいないそんなに欲しいのならばメガトロン様に頼み込んだらいいだろう無様に土下座でもしてな」
「なんだと?この陰湿根暗野郎、お前みたいな男よりオレの方が遥かにアイリスに似合う男だ、下らない音楽ばっかり流してたらその内アイリスも愛想を尽かしちまうかもな」

ヒートアップしていく2人に彼らより少し身長の低いアイリスが慌てて距離を空けさせて喧嘩を止める、毎度2人は顔を合わせる度に殴り合わんとばかりに喧嘩をするものだから困ったものであった同型機であることや音楽の趣味の不一致さらには真反対の性格などまるで2人は水と油のようだと毎度思ってしまう
結局アイリスにメガトロンの呼び出しの件をいわれたサウンドウェーブは慌ててその場をアイリスと共に後にした

「次会う時には連れて帰るから待ってろよハニー」

背中にそう告げてくる彼の言葉にハァとアイリスは短い排気を漏らして急ぎ足で基地を走った

サウンドウェーブの部下になってからすぐにサウンドブラスターと顔合わせをした、初めて会った時彼女は機体の色を変えたのかと思ったがすぐ様に別人だとわかったのは真反対の中身だったからだ、悪い人ではないとは思うがあまり得意では無いともおもった
強引で強気な態度はいつだって悩みの種である

そんなサウンドブラスターは反対にサウンドウェーブに新しい部下が出来たと知り今回もまた自分の部下に取り入れてやろうと考えていた、今回は女だと聞いていた為余計に彼は面白く感じた
どうせ2.3日で逃げ出すであろう奴の部下を自分が率いたらまた人望が厚くなるだろうと目論んでもいた、だがしかしいつになってもサウンドウェーブがあの女を手放すことは無いと知り苛立ちを感じて出向いた

「あんたがアイリスか、どうだ?あんな根暗な上司よりオレのように面白くて優しい男の部下になるのは」

シティスピーカーとしての能力は魅力的だがそれ以上にあの男から奪ってやる方が大事であった、いつだって自分よりも劣る筈の男が生意気にも刃向かってくるのだから
そして目の前の彼女は目を丸くしたあと

「いえ、今で満足しておりますので」

至って普通にそう言い返して背中を見せて行ってしまった時にサウンドブラスターには火がついたのだ、そうして2人をみていればふと気付いたことがあった

「アイリスその荷物は俺が持つ、お前はこっちを持て」
「そんな、上司に荷物を持たせる部下だなんて」
「気にするな」

この2人は口にこそ出さないが男女としての感情が僅かながらに発生していることに、ともなればそこを引き裂いてやればサウンドウェーブのプライドは傷つくであろうしアイリスもまぁ見た目は悪くないのでそばにおいてやるのもいいと思ったのだ

こうしてサウンドブラスターが2人…主にアイリスにちょっかいをかけるようになってからサウンドウェーブはいつだって苦虫を潰したような顔をしてみていた、アイリスは優秀かつ冷静な性格をしているがほんの少しばかり押しに弱いところがある
いつだって従順で与えた仕事は24サイクル以内には終わらせて持ってくるし、コンドルも彼女には懐いているあまり性格がいいとはいえないサウンドウェーブにも比較的懐いているのは目に見えてわかっていた、だからこそ彼女に悪い気持ちはあまりない

「また絡まれていたのか」
「顔を合わす度に話しかけられてしまうんですよね」
「しつこい男だ」
「でもサウンドウェーブが助けてくださるじゃないですか」
「それは・・・部下だからだ」

またサウンドブラスターにしつこく接される彼女の手を引いて連れ出せば彼女は平然とした態度でそれを言うためにため息をつく、脳天気な女だと罵ってやりたいほどだ
あの男がアイリスに嫌がらせ半分好意半分で接しているのは嫌でもわかっているが止める術もあまりないのは現実である、周りに相談してやりたいがそんな相手もおらずアイリスは気にもしていないことにサウンドウェーブは普段ならば簡単に答えを出してくれるはずのブレインを悩ませた

だがしかし転機というのは誰しもやってくる

「平気かアイリス」
「サウンドブラスターすみません、まさかオートボットとの戦闘に巻き込まれるとは」
「それで・・・お礼はしてくれるんだよな?」
「お礼とは」
「そうだなぁ身体でとは言わないがデートくらいしてくれよ」

とびきり雰囲気のいいところでな。と彼はアイリスの胸元を軽く叩いた
ちょうど任務の都合でオートボットの情報を探っていたアイリスは彼らにバレてしまい捕まりかけたところをサウンドブラスターに救われた、その結果彼はアイリスにデートをもちかけた
普段であれば絶対に了承しない彼女も恩義には厚い為首を縦に振るしか出来ない、それを理解していたサウンドブラスターはマスク越しとはいえ笑った今日こそこの女を落とすと

「というわけでして、本日は早上がり致します」
「というわけの意味がわからないが」
「サウンドブラスターにマカダムに誘われたので、あぁ仕事の方は全て終わらせてるので安心してください」

それでは と行ってしまう彼女に呆然とするサウンドウェーブの思考は停止していたがすぐさま彼の胸元がガタガタと騒ぎ始めそして飛び出したカセットのコンドルがサウンドウェーブの頭を何度かつついた「こんなのことしてる場合じゃねぇだろマスター」と言いたげである
何故2人が突如マカダムでデートなぞと思っても答えは出ないが大方向こうから誘われて何かしらの理由で断れなかったのでは無いのかと予想した、腕に止まるコンドルを見つめれば彼はみているだけでいいのか?と言いたげに小さく鳴いた、上司と部下である自分にはできることは何も無いとは思いつつもサウンドウェーブは彼女の顔を思い出しては仕事を終わらせて部屋から出ていった

マカダムは相変わらず混んでいるのだなとアイリスは思いながらサウンドブラスターに連れられて店内に入った、珍しい2人組だなと笑うマカダムに2人分のジョッキを貰ってテーブル席に腰掛ける
サウンドブラスターと面と向かって話をすることは無かったアイリスからしてみれば何を話せばいいのか分からずただ静かにグラスに口付けることしか出来ずにいた

「アイリスいい加減考えてくれたか」
「何をですか」
「オレの直属になる話だ、別に内勤のままでいいんだ」
「あなたの所には優秀な方が多いじゃないですか」
「何せ人望があるもんで」

ニヤリと笑う彼にアイリスは排気を零しそうになるこういった自信満々なとこらは彼のいい部分だが反対に彼女の上司を目の敵にするのはやめて欲しいところだと思った
ふとサウンドブラスターの手がアイリスに伸びてきたと思えば彼女の手の上に重ねられた、ゆっくりと彼女の細い指先をなぞりながら彼はバイザー越しに熱い視線を送る、一体何人の女が彼に釣られたのだろうかと思えてしまアイリスも馬鹿では無い為彼が自分に執着する理由は凡そ理解はしていた

「私は彼の下以外で働く気は今はありませんので」
「ツレない女だよな、オレがアイツへの対抗心だけで誘ってると思ってるんだろう」
「違うんですか」
「まさか・・・本気だぜ」

彼の指先がアイリスの指先に絡まり始める、思わず驚いて機体を揺らしたアイリスに笑って彼はジョッキの中のエナジョンを飲み干した、そして手を完全に絡めとって逃がさないようにしたサウンドブラスターはアイリスをしかとみつめる

「答えを聞かせてくれよ」

艶っぽい彼の声にアイリスは少なからずスパークが動揺した、自身に向けられる好意が得意では無いからだ
自分の想うサウンドウェーブとは正反対の彼はあまりにも刺激的すぎる、思わず視線を逸らしても逃さないとばかりに指先を絡められるばかり、もう一度名前を呼ばれた時のことである

「答えは『NO』だ」
「なんだ1人で来たのか?寂しい男だな」
「アイリスに用事があるだけだ、貴様も人の部下にちょっかいを掛けるよりも自分の部下の管理をしておけ」
「おい、オレと彼女はデート中だぜ」
「そうか?俺には無理矢理に感じたがな」
「貴様のバイザーが曇ってるせいだろう、たまにはクリーニングでもしてみな」

店内でまた今日も喧嘩をせんとばかりにいがみ合う2人にアイリスは困惑していれば2人はいよいよ手を出しそうになり、店内ではそんな3人を面白く見つめているいよいよビートボックスか?と思っていれば間に割って入ったアイリスは突如サウンドウェーブの手を取り店内から抜け出す

「この埋め合わせはまた後日でお願いします」

そう言い残した彼女に呆気を取られたサウンドブラスターは呆然とその席に立ち尽くした、ちょうどやって来たマカダムがサービスだと言いながら強めのエナジョンをワンショット置いていったため彼は一口で飲み干して舌打ちをした、キューピット役になってしまって最悪だと零して


「アイリス、アイリスっ」
「え、あ・・・あぁごめんなさいサウンドウェーブ、私は上司になんてことを」
「いや構わない」

ただひたすらバー・マカダムから飛び出して歩き続けるアイリスに声をかけ続ければようやく意識を戻したアイリスが慌てたような態度を取り始めた
「どうしてマカダムへ?」という問いにサウンドウェーブは何も答えなかった、アイリスは正直嬉しくて舞い上がっていたところもある、サウンドブラスターと2人で流されそうになっていた時に現れた彼を見てやはり自分は彼に少なからず何かしら思うところがあると思えたのだ
これは上司部下では収まらない感情であると理解した、そうでなければあの時安心感はなかった

「サウンドウェーブ・・・どうしてなんですか?仕事の話って、私の記憶メディアには追加の情報がなければ全て終えているはずです」
「あぁわかっている、間違いない」
「ではどうして」

アイリスの訴えかけるようなオプティックに思わず顔を逸らしそうになるが興奮した彼女はそのままサウンドウェーブの手を強く握り見上げる、サウンドウェーブとは異なるハッキリとした大きく丸いオプティックは困ったようなけれど何処か答えを期待したようなものである

「心配になっただけだ、アイツのところにいくのかと」

いつまで経っても素直に言葉が出ないと我ながら嫌になるとサウンドウェーブは思った、ようやく出た言葉は好意ではなくあくまで上司としてと言いたげである
アイリスはオプティックを数度点滅させたあと小さく笑った

「行く訳ありません、私はずっと何があろうとあなたの部下ですから・・・そうでしょう?サウンドウェーブ」

決して2人はハッキリとは口には出さなかったが言葉の本質を理解した、サウンドウェーブは肯定的な言葉を短く返事したあとその小さな華奢な彼女の体を抱き寄せた

「あぁそうだ、何があってもお前は俺の特別だ」

静かなる街の一角でそう抱き合う2人はまだまだ素直な気持ち言葉は出なくても互いの思考回路を熟知していた、アイリスもまたサウンドウェーブの背中に腕を回して幸せそうに微笑むのだった。



「振られたのか」
「うるせぇ、今度こそ奪い取ってやる・・・そうだなビートボックス勝負で正々堂々とやってやるか」
「あぁ嫌な予感がするからやめてた方がいいと思うがね」

カウンターテーブルに居座るサウンドブラスターにそう告げたマカダムは小さくため息をついた、愛を持つ男には勝つのは難しいものだとは口には出さずに





はじめまして、今回はTF再熱リクエスト企画にご参加誠にありがとうございました、cv両サウンドに取り合いされる夢ということで書かせていただきました
TF主は滅多に書かないためあまり表現が上手くいかなかったのですが両サウンド取り合い夢は楽しかったので書けてよかったです、また機会があればどうぞよろしくお願いします今回はリクエスト誠にありがとうごばいました

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