えらく今日は基地内が静かだとスプリンガーは物珍しさを感じながらもたまにはこの様に静かな時間があることも大事だと思えたのはレッカーズの移動基地デブリの中は日々誰かしらが騒がしくしているからだろう
しかしながら彼が足を止めたのはそんな普段騒がしい彼らが一斉に集まってとある部屋の前で聴音センサーを押付けていたからである

「何してるんだお前たち」

その時のスプリンガーの表情と言えば呆れている以外の他はなかっただろう、大なり小なりの先鋭されたレッカー達が一体全体何を盗む聞きする必要があるんだと睨みつけた視線の先の扉は見慣れたものでありスプリンガーはますます意味がわからないと感じられた
その部屋がこの基地にいるレッカーズに所属する人間の一人、アイリスの私室であるのは見るに明らかである、コソコソといい格好した野郎共が何を落ち着きなく彼女の部屋の前でしているんだとスプリンガーが説教のひとつでもと告げようとした時楽しそうな表情をしたツインツイストがいった

「インパクターが中にいるんだよ」

もう入って二十分以上だぜ。と続けて言ったのはトップスピンだ、普段兄弟の悪ノリを注意するのが主なハズのトップスピンでさえも酷く楽しそうに今回の件に首を突っ込んでいるのは物珍しいがそれもそのはずだと感じられなくはなかった

「ところでリーダーどう思う?」
「なにがだローターストーム」

なにってあの二人がベッドに入ってるかどうっすよ。なんて気軽に告げた新兵であり彼女の相棒として現在活動中のローターストームの発言に首元の配管を流れるエナジョンが逆流し思わず咳き込めば入口に誰よりも耳を済ましていたロードバスターは慌ててスプリンガーの口元を覆い隠した、まるで黙れと言わんばかりのその行動に全くこいつらはなんてことをしているんだと堪らず睨み付ける
インパクターとアイリスはようやく結ばれた恋人達だ
まるで兄の様に強く厳しくも様々のことを教えてきてくれたインパクター
まるで姉のように支え励まし隣を歩み続けてくれたアイリス
その二人が数十年の末ようやく結ばれたことはスプリンガーにとって何にも代え難い幸福だと思うほどに二人を慕っていた、それはレッカーズ全体がいえることだろう

日々粛々と仕事をこなす二人の間に確かにあからさまな恋人らしい素振りはなかったものの互いを見る柔らかい眼差しは信頼と愛情を伝え合っているように感じられた

その二人に対してベッドに入っているかどうかなど問われたスプリンガーは固まった、気恥しさやその事について想像してしまい申し訳なさを感じたもののあくまで冷静な返答をするのがリーダーとしての立場だと考えたのである

「そりゃあ二人は恋人同士なんだ、別にそうしたこともあるだろう」
「だがしかしおかしいんだ、声がしない」
「パーセプター…お前まで何してるんだよ」

ロードバスターに開放されたスプリンガーは下の辺りで態々膝をついて聴診器のようなものをあててまで聞こうとする天才的な科学者である彼に対して思わず呆れて顔を手で覆いながら渋い声を漏らした
あくまでこの興味は二人に対してではなく異種族恋愛についてだというパーセプターに対して、だとしても聞かなくていいだろうというが全員のオプティックは普段以上に輝きスプリンガーをみつめた

「初めてなんだぜ?インパクターがあいつの部屋に入ったことは」
「何度か普通に入ってるだろ、別に珍しい事じゃない」

そう呟けばスプリンガーの顔を見たロードバスター、ローターストーム、ツインツイスト、トップスピンはまるで子供を相手取るような表情をして時計を確認しろ人間時間のだぞ。と告げた為仕方なく人間時間を確認すれば時刻は22時を過ぎており基本的に人間は睡眠をとる時間だと認識していたがそれがなんだと彼が呆れていれば彼らは指差してスプリンガーを嘲り笑ったことにスプリンガーは彼らしくもないが暴力に出てしまおうかと考えるほどだったが助言したのはアイアンフィストであった

「人間がこの時間に恋人を部屋に招くのはそうした愛情表現などから来ることとされているんです、ええっとその…例えば繋がり合うこととか」

気恥しそうな彼の言葉に少々彼もなのかと感じたが彼は作家でもあるため好奇心を抑えられないのだろう、特に親友の彼女と憧れのインパクターとなれば
オブラートに包まれたその言葉に人間はそうした時間や場所から相手を誘うという意味までは理解していなかったスプリンガーはそうなのかと驚きつつもだからといって二人のことを囃し立てるのはやはり良くないことだと告げる

「二人は今大切な時間なんだ、お前たちがそれを邪魔するのはダメだ!」

ほら解散だと手で追い払う素振りをしたスプリンガーにつまらなさそうにしたものの、ふと動かぬ存在にスプリンガーは静かに視線を向けた、そこにはインパクターと共に普段行動している新兵のガズルであり彼を抑えるようにパイロが彼の肩に触れていた

「いい加減もう黙ってられねぇ、どうなってんだテメェら!」
「ガズルダメだ、二人の邪魔は」
「おいおいおいっ、待て待て待て!」

もう抑えられないと言わんばかりに手動設定に変えていたドアをこじ開けたガズルを抑えられずにパイロは転倒し、開いたドアからスプリンガーを押しのけて全員が一斉に部屋の中にある彼女のベッドをみればそこにはベッドに腰かける彼女とトランスフォーマー向けの来客椅子に腰掛けて胸元程の高さにいる彼女を覗き込むインパクターの姿が見えた

「あれ?みんなどうしたの、なにかあった?」

雪崩込むように入った彼らはその姿に一体何をしているんだと伝えれば彼女は嬉しそうにひとつのアルバムを彼らに向けた

「インパクターがいない間のアルバムの話とか、昔の話してたの、ほらこれとか私が入ってきた時期の」
「懐かしいな、随分ガキらしい顔だ」
「そりゃあ何年経ってると思ってるの、これでも若作りは頑張ってる方なのに」
「素のままのお前でいいだろ」

なんだなんだと全員が彼女のアルバムを覗き込んでは懐かしいやら、知らないやら、と各々二人のことなど気にせずに話すためスプリンガーは呆気を取られたものの二人がそのようにレッカーズについて語っていてくれたのかと思い胸を撫で下ろした
特にインパクターは一度除籍に近い形で離れた身である為いまもレッカーズに強い思いを抱いてくれることは有り難いものだとスプリンガーが微笑ましく思っていたものの突き刺さる視線に思わず油を刺し忘れたかのようにぎこちなく視線をインパクターに向ければ彼は普段通りの表情で静かに左の手の甲を見せつけるようにした後に真ん中の指を一本立ち上げて不気味に笑った途端に彼はまるで全身のエナジョンが抜かれたように感じ慌てて声を荒らげた

「もう遅い時間だから全員帰るぞ!二人とも悪かった」
「あっ、そんな気にしなくていいのにスプリンガーもアルバム見ようよ」
「悪い悪い俺たちは別の任務が今から入ったんだ」
「こんな時間に?」

兎に角悪いがまた今度。と声を上げてスプリンガーは全員を担ぎあげ部屋の外に出てはすぐ様メインルームに投げ捨てた、もう二度と二人が部屋で過ごしている時は近付くなと隊長としての権利を酷使して伝えれば彼らは反省もなさそうに了承した、全くもって困った存在だと深い廃棄を零すのだった

>>>

「あれから直ぐに退散しただろ」
「そういう問題じゃねぇよ」

全くここにまでそんな問題を持ってくるなと翌日スプリンガーは珍しくインパクターと二人での任務中に悪態ついた、敵に怒りをぶつけるように容赦なくなぎ倒していく彼に対して器用なものだと僅かな関心さえ覚えているのもつかの間、気付けば辺り一面敵の亡骸だらけになっており流石キロトンだと多少口には出さないものの賛辞の言葉を投げかけつつ敵に捕まっていた捕虜を解放しては船に乗り自動操縦に切りかえては横をみつめた

「いい加減機嫌を直せ、お前こそガキ臭いぞインパクター」

任務の件を伝えた直後から機嫌の悪い彼は現在も副操縦席に腰掛けては機嫌が悪いと言わんばかりに右手の銛で床を撫でては嫌な音を立てることにいよいよ耐えきれなくなったのだ
かつてスプリンガーがインパクターに言われたようなセリフをまさか自分が彼に言うだなんてと思っていれば鋭い視線が彼を突き刺した

「機嫌を直せだと?テメェら揃いも揃って遊びやがって、俺がどれだけあいつとの時間を心待ちにしていたかわかるか?12ヶ月と29日と119サイクルだ」

人間時間に換算してやろうか約五年だ、というインパクターの言葉にはスプリンガーも苦い顔をした、アイリスはスプリンガーが寝ている間は決してインパクターとはあくまで同じチームの仲間として過ごしてきた
しかしつい数ヶ月前目覚めたスプリンガーにようやくレッカーズとしての落ち着きを取り戻した為に彼女はインパクターの想いに答えたとなれば二人はスプリンガーが寝ていた数年は何も無かったはずだった、しかし彼らが交際を初めて時間もそれなりに経過している、特に彼女の時間に合わせれば約一年ほどだろう

「もしかして…その、聞きたかないがお前たちはその…」
「まだヤッてねぇよ、当然だ」

あいつの部屋にプライベートで招かれたのもあれが初めてなんだというこの男がとてつもなく小さく見えてしまうのは何故なのか
インパクターはもうこの際だとスプリンガー相手である為に全てを吐き出した、デブリ内ではそうした行為は彼女が嫌がるためして来なかったが昨晩向こうに誘われたので向かったもののいい雰囲気になろうとした途端に奴らが邪魔をしてきたのだと

「別にほかの星とかのそういう場所に行ったら良かっただろ」
「あいつの多忙ぶりと真面目さを知ってて言うのか?」

昨日も数ヶ月ぶりにゆっくりすると言い出したほどだという彼の言葉にまさかそんな事になっているとは露知らずにスプリンガーはスパークの底から申し訳ないと謝罪をすれば多少の冷静さを取り戻したインパクターも「まぁそういうことだ、悪いな」と告げた
しかしあの後はどうにか時間もあったんだしとスプリンガーは明るく声をかけたものの隣の男はゲンナリとした表情をした

「あぁ最高だったぜ、あのあと三時間もアルバムの話を聞いてホットミルク飲んで寝やがった」

お陰でパーセプターに頼んで態々搭載した拡大縮小機能もおじゃんだ、というインパクターにスプリンガーはもう何も言い返せないぞと唇を噛み締め自動操縦モードから手動に切り替えてスピードを早めた
隣から聞こえる床を傷付ける音は止む気配は無いもののこの調子では近いうちにレッカーズ内に死者が出る可能性を想定し早々に二人…特にアイリスに対して長期休みを取ってもらわねばならないと考えるのだった。



>>>

「ねぇこれやっぱり変じゃない?寝る前に声掛けるのにこんなの着てちゃ絶対可笑しいよ」
「可笑しくないって、ベリティにちゃんと確認したんだから間違いない、インパクターに好かれたいんだろ」
「好かれたいけど…でも、こんなの…なんか変じゃない?」

シルクのサラサラとした素材のキャミソールのワンピースを片手にローターストームを見つめれば彼は親指を立ててバッチリだと微笑んだ
ベリティという人間の少女の単語を聞かされてしまえばアイリスはそれが嘘だとしても納得するほどには地球についての知識は疎いものだった、気恥しそうに何度も鏡を見ては髪を整えワンピースを自分に合わせてはやはり気難しそうな表情を浮かべる彼女に今夜こそインパクターと彼女は一歩先に進めるだろうと勝利に叫び声を上げてやりたかった

数日前多忙な彼女が依頼を受けていた品をローターストームと共にキミアに届けに行った際に彼女の保護者と言えるザロンと顔を合わせた
彼は普段の穏やかな表情をアイリスを前にしてはさらに緩めて優しく話をした後に彼女の活動状況をローターストームに問いかけた、インパクター以上に共に過ごしているとも言える彼は素直に彼女がここ数ヶ月休まず仕事をしていることを伝えれば気難しい顔をしたあとまだ残った仕事をキミアの忙しい科学者達に投げ付けた

「たまにはゆっくりするんだ、そうだなインパクターと過ごすくらいの時間はあるだろう?」
「でも彼も前線での任務ばかりだし」
「ローターストーム、インパクターの様子は?」

まるでこれでは秘書のようだと思いつつも案外小煩いこのオートボット最高法務責任者を敵に回すことはプロールを敵に回す程に悪い事だと理解していた彼は素直に自分の知る限りの事を告げてはザロンは黙りこくった後にまぁ大丈夫だと笑った

「兎に角アイリスは少しゆっくり休みなさい、あと帰りにこれでなにか素敵なものでも」
「もう私子供じゃあないからシャニックスは受け取らないからね」
「ローターストーム」
「はい」

アイリスがどれだけザロンに歯向かおうとも彼は周りを固めるタイプであるためにそれが意味をなさないことを彼女は理解していなかった、帰りにこの惑星に寄ってあげなさいというザロンの依頼を受けたローターストームは帰り際までフツフツと彼は過保護過ぎるのだと愚痴る彼女に周りみんながそうだろうとは口にはしなかった
そうしてシャニックスを受け取り帰り際によった惑星にて仲間達の土産を買う彼女に付き合ってはいたが彼女は呟いた

「インパクターは…誘っても嫌がらないかな?」

不安げなその言葉にどういうことだと問いかければ折角休みを貰ったのだから少しくらい声を掛けても。という彼女にローターストームはアイリスが思っている意味とは違う面で察してはすぐ様笑顔を向けて有機生命体向けのランジェリーショップに投げ入れてはすぐさま地球の友人のアドバイスを聞いてはザロンから渡されたシャニックスを使いキミアに戻ったのだ

そうしていつまで経っても買ったばかりのナイトワンピースを片手に表情を困らせる彼女をみつつローターストームは微笑ましく感じた
自分の恩人でもあり、大切な相棒である彼女が好きな男を前に悩む姿がどこまでも健気で自分の中のスパークを擽るからだろう

「凄く似合ってるからそんなに不安になるなよ」
「そうだね、それに変でもきっと彼ってば笑わないと思うし」
「だろうな、こんな顔して『いい布だな』とかいうんじゃないのか」
「フフッローターストームって低い声似合わない」

ようやく気難しい表情から柔らかくなったと安心してこれ以上の背中押しは要らないだろうと短い言葉を告げて部屋を出る前に彼女に「ありがとう」と伝えられればこれ以上自分の出る幕は無いのだとローターストームは感じた
しかしながら必死な表情でインパクターに声をかけるアイリスと期待しきった男の顔をみてしまえば出歯亀精神は抑えきれず、その姿を見た他のレッカーズ達もまた同じことをし、まさか失敗するなど、ましてやアイリスがそんなことを微塵も考えていなかったなどとはその時は思いもよらないのだった。

-

- 84 -

←前 次→
top