ロマニ
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彼らが出会ったのは外は夏だというのに、相変わらず吹雪は止まぬ日だった
その日のカルデアの中はたった一つの話題でもちきりだった
あの世界最高の魔術師がここにマスターとしてくる
有名人が来るだけで職場は華やかで、どこかみんな浮かれていた
ロマニ・アーキマンはそんな仲間達を横目に欠伸をして外を見た、大きな音をかき消す分厚いガラス、その奥には一面の白、人の肌で何も着ず外に出れば一溜りもないことがよく分かる
廊下を歩く中で一つ外で黒い何かが見えた、黒いものが動いて近づく
「えっ!!えっ!??なっなにっあれ!」
それはすぐ隣の入口から入ってきてようやく認識し始める、黒い長い髪に
美しい顔立ち、どこがで見たことがあるような雰囲気に、凛とした真っ直ぐな瞳、大きなキャリーケース一つ
「……こんにちは」
その落ち着いた声は彼女のものだと認識して、目を丸めた後に驚いて落としていたペンを拾う
これがみんなのいっていた魔術師か…と思わず魅入った、綺麗な人だと彼は思えた
飛び抜けた美貌ではないが目を離さない、大人の雰囲気があるのに子供のような丸い瞳に小さな唇
そこまで考えて思わず頭を振った、初対面で何を考えているのかとため息が出そうになる
「あっあー、こんにちは、君がいってた魔術師の方かな?」
「えぇ、柊澪と申します、あなたは?」
「ロマニ・アーキマンです、よろしく」
「こちらこそよろしく」
そういって差し出された手があまりにも細く触れれば壊れそうに思えた、握ったその手は冷たく彼女はまだ来たばかりだったかと思い出して案内をした
話をする中で知る彼女はあまりにも心を打ち解けてしまいそうになった
恐ろしい程に優しい包み込むような存在であった
「ロマニ、私ねぇ娘と息子がいるのよ」
何気なく彼女の休憩時間にそんな話をする、このカルデア内でロマニと澪は隠れてお茶菓子を食べた
二人きりの時間には愛瀬というほど可愛いものはなく年相応の話題もあれば仕事の話もあった
現に澪はロマニと歳は近いのだから
「意外だなぁ、結婚してるんだ」
「違うのよ、母子家庭…今はね、弟くんのとこに世話してもらってる」
「どんな子?」
そういえば待っていたとばかりに満面の笑みで彼女はズボンのポケットから写真を取り出した
真ん中で子供2人を力強く抱きしめる彼女は今よりも若く髪が短かった、子供たちは黒い髪の男の子に薄いオレンジ髪とブロンドの混ざった女の子だった
それぞれどこか彼女に似た面影があり可愛らしい顔をしていた
自分の子でないのは分かりながらその無邪気な笑顔に心は少し温まる、目の前で写真を見る彼女は目を閉じていた、祈るように願うように
「この子達のためなら、私何だって出来るのよ」
だからだろうか
君が目を離せなかったのは、あの凡人な平凡なあの2人の若いマスターを見離せなかったなかったんだ
彼女は変わった人だった、初めて見るものが多くて、驚いていた
今の世界ならいろんなものがあるだろうに…、彼女は言っていた子供が大きくなったら…きっと、あんな子達になるのかな?って
資料を見た、時計塔に眠る彼女の資料
美しい女神の魔術師
世界ができた頃からずっと1人で世界を見つめて、触れ合った貴方は戦争ばかりを痛みばかりを知り
そして愛するものができた後、永久の眠りに付いてしまったと…十数年の眠りからあけた彼女に待ち受けたのは悲劇か喜劇か
「後悔は…ないのよ、ロマニ・アーキマン」
彼女は微笑んでいた、誰よりも美しく
『きっと、あなたも誰かを愛せるわ、だって……あなたは優しく笑えるもの』
優しく、あの日あの時彼女は手を取ってくれた
魔術王を、ソロモンを愛し
ロマニ・アーキマンを愛した
「ねぇソロモン、おかえりなさい…って今度は、ちゃんといってね」
指輪を握りしめて彼女は微笑んだ、誰もが彼女を愛し誰もを彼女は見て、愛した
たった一つの光はその神殿に降り注がれてゆく、その光の中で娘は笑った
誰も、彼女を止めることはなく、誰も、彼女を呼ぶことも出来ずに
ロマニ・アーキマンはいった
「ようやく…人間に…なれたのに」
神殿がゆっくりと崩れゆく、少年少女の声に立ち上がり走り出す
ふと、消えるその瞬間崩れる神殿の真ん中で魔獣を抱いた少女は口を開いた
『-----おめでと、ソロモン------』
「っっ澪」
真っ白な雪は晴れ渡っていた、綺麗な空はまるで虹色のように輝いていた
楽しそうに外に出るあのマスターたちに釣られたサーヴァントもカルデア職員も笑っていた
あぁ、幸福なんて…こんなに簡単なものなのに…どうして上手くいかないのだろうかとどこか心の奥で思いながら、指から消えた輪を思い1人白いだけの雪を眺めた。
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