天草四郎
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白髪に少し浅黒い肌、柔らかに笑うその笑顔が虚無を貼る
部屋の中に来たカソックを着た神父はどことなく誰かに似ている
「名前を呼んではくれないのですね澪さん」
「…呼ぶ理由がないからよ」
「抱かれるのだから恋人の様には甘くしてはくれないんですね」
「私があなたに抱かれるのは魔力補給、またカルデア自身への節約のためよ」
そう冷たく言い放ち男を見つめた、白いベッドの上で2人きり
恋人でもなく、夫婦でも、まして恋心が互いにあるわけもない、あるのはお互いの価値観が一致した時だけ
男としての欲、使い魔としてのエネルギー補給
その為だけで女はこの場所の力のため、魔術師として、カルデアスだけでは維持出来ないせい
娼婦のように抱かれ捨てられまた飼われる、何も苦しくも悲しくもなかった、それが生きるための術であるのならば
「ンッ…あまっ、くさ」
「なんですか」
「抱きしめて」
甘えるように男の腕の中で、男の胸の中で
悲しみと愛おしさを覚える、聖者である故に心の中で何度も懺悔する
重ねてみてしまう愛した存在を見つめ合う瞳の奥で見出すから
「名前は読んでくれませんね」
「嫌いなわけじゃないの、あなたの名前」
下着を履き直して職員用の制服に袖を通して乱れた髪を簡単なゴムでまとめる
先に衣類を身に纏い、用意を終えた男はベッド上のシーツを変えて布団を正していた、行為後の気だるさもゆっくり抜け落ちていくのを差し出されたお茶を飲みながら感じる
「それは意外でした」
目を丸くして年相応の青年のような表情の彼がそういうもので澪は写真立ての写真をうっすらと見た
「弟の名前と一緒なのよ、それになんとなく似てるの」
「私とあなたの義弟が?」
「えぇ、貴方よりかは人間的で夢があって正義の味方でずっと優れているわ」
そういいながら目を閉じては思い出す、何十年も昔の話だろう
自分が眠る前、世界のために目覚める前、平和とは言えない戦争に巻き込まれその中で出会った命、守り続け生き抜いて大きな背中を見つめた
確かに彼の未来は絶望に溢れた、英雄と言われたものはいつしかただの愚者に変えられた
それでも守っていたかった、愛していたかった
だからこそ、そのままの彼が愛する人を見つけ子を成していつしか幸せに暮らすのを望んだ
「似ているの、あなたの容姿とあの子」
「まるで弟に抱かれてると思えてしまうのですね」
「…かも知れない、あの子を愛していたから」
「なら私を重ねて愛してください」
私ならあなたの愛を受け入れましょう。
笑った、天使様のように美しい瞳で、誰もが彼を聖人君子だと思えたのをなんとなく理解してしまう
付けっぱなしにされて溶けたキャンドルの火を消して部屋の明かりを消して足を進める
「私の愛は軽くなんてないの、馬鹿にしないで天草四郎」
「えぇ、だからこそあなたのその愛を受け止めたいのです柊澪」
「…やっぱりあなたって歪んでる、聖者様」
勢いよく男でありサーヴァントである彼をベッドに押し付けて言えば嬉しそうに笑う
歪んだ様に、どこかで似たような男を思い出す、弟ではないカソックを着た神父をどす黒い泥に包まれたように
骨ばった男の指が伸びて、ゆっくりと唇を撫でた
「私は愛するだけです、私のアナタを」
「…近親相姦は趣味じゃないのよ」
突き放して立ち上がり逃げるように部屋を出た
きっと彼は笑うだろう、愛おしい姉を思い出して
何故なら彼は今の彼女などどうでもよかった、ガワである澪という存在をした姉に瓜二つの女をただ抱きたいだけなのだから。
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衛宮士郎(エミヤ)が義弟だった女
その女が(生前の)姉であり歪んで愛していた天草
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