ジークフリート











英雄になんてならなくていい、貴方のために生きてほしいの。

優しいその手が銀色の髪を撫でた、小さな体で精一杯生きる彼女の願いはなんだったのか
そう思いながら眠りにつく契約者を見た。

生前の恋人であった女性と同じ魂を持ちながら違う人間である人と愛し愛される関係になれたことを幸福以外の何物でもないだろう


「じーく?」

「起こしてしまったか?」

薄く目を開いたが寝惚けているのか手を伸ばした彼女の手をつかむ、シングルサイズのベッドに大柄な男が入ればきっと眠りの妨げになると端に腰掛けては寝顔を見つめることが日課になった
割り当てられた部屋にも帰ることはなく日々霊体化をしてそばにいる時が多い

「じーく、私のこときらい?」

いつもの覇気がない甘い声
甘えるうな子供のように薄らという、今にも消えそうな声で手を伸ばされ、その手を繋ぎとめて見つめる
昔と変わらぬ指先、悪魔や魔女と罵られ民のためならばと殺した罰だ
なのにまた彼女は求める、守り通したかった、聖杯戦争の時ハッキリと誰かを守りたいと思えたのに優柔不断な態度をし続け苦しんだ


「嫌いなはずがない、俺は君を愛してる何よりも」

だからこそ今度は命懸けで守りぬき側で生きようと思えた
伸ばされた手を力強く握って見つめればまた笑う
その笑顔が何よりも癒しとなる、不死など関係なく、永遠などなくてもよかった平凡に生きて彼女と死にたいと


「…ジーク、こっちに」

「だが狭いだろう」

「いいの、鎧を脱いだら狭くなんかないわ」

そういった彼女は強引に手を引き始める、拒否をする理由もなく鎧を外して適当なシャツに変えて狭いベッドの中に入る
女性物のためか少し小さなベッドからは足がはみ出たのを気にして体を縮めれば澪は笑った


「…おかしかったか?」

「なんか犬みたい」

「犬?」

「嬉しそうだったから、さっきまであなた悲しい顔をしていたから私怖くなったわ…消えちゃうのかなって」


黒い髪が手に触れた、腕を取られて伸ばさせられれば硬いはずのその腕に頭を乗せて狭いベッドの中でさらに二人とも狭く抱きしめ合う形になる
温もりが生きていると痛感してしまう、英霊であるのだから生きるも死ぬもあまり関係ないのに。と思えては彼女に失礼なのだろう


「俺は君を置いては消えない、そう誓った」

「そう、なら安心だわジークフリート」

「なんだ」

「おやすみなさい」

「あぁいい夢を」

彼女の額に祈りを捧げた
閉じられた瞼に規則正しい寝息、遠目に見た時に彼女が過去と重なる
けれど今を生きて笑う彼女は紛れもない今だ
背中に回した腕に力を入れて抱きしめる、同じように瞳を瞑って彼女を愛しながら夜を眠る
英雄などきっと今の彼女にはどうしようもなくつまらない称号なのだと思い出して。















「おきた?」

「あぁおはよう」

「そろそろ離してほしいんだけど」

「えっ、あっすまない」

「…いえ、やっぱり今日はゆっくりしたいからいいわもう少しだけなら」

「あぁ、…澪」

「なにかしらジークフリート」

「君を愛してる」

「………えぇ、私も」

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