アルジュナ
▼▲▼
節分が終わった1月、2月となった途端に告知されたバレンタインのお陰かカルデア内は甘い匂いに満たされた、酔いしれるほどの甘い匂いに浮かされてマスターもサーヴァントも職員も全員があまりにも幸せに過ごすおかげが先のことさえも忘れてしまいそうになる
こうしたカルデアの文化に対しての触れ合いはいいものだと、現在のカルデアのトップであるダ・ヴィンチは言っていた
そんな中でもバレンタインは関係ないと言わんばかりに部屋に篭もり今日も今日とて仕事に追われる澪はつい先程マスター二人である、藤丸と立花から渡されたチョコレートトリュフを片手に啄みながら電子機器に指を滑らせる
「失礼します」
「どうぞ」
聞きなれた声に在り来りな返事をしつつも一切見ようとしない澪に、入ってきたばかりのチョコレート色と言わんばかりの褐色の肌に美しい白い服を身にまとった男は彼女の横に立った
「まだこんなことをされて」
「仕方ないじゃないの仕事なんだから、それより立花ちゃんから貰えた?」
「この英霊アルジュナごときにそのような」
「貰ったわけね…お返し今年は普通のものにしてあげた?」
「えぇ助言通り彼女の好きそうなアクセサリーを」
つい数日前にやってきたこのインドの英霊、アルジュナは深刻な顔をしてマスターが好きそうなものは?と聞いてきた
勿論彼との契約を結んでいるのは女性であり姉である立花であり、女性の好きな物で悩むような男だったのかと少なからず思いつつも適当に在り来りだがアクセサリーやコスメや服などと言った
どうやらそれは成功したらしくその結果報告に来たらしいが忙しそうに画面に文字を入力をする澪は話半分な様子であった
「そしてこちらをあなたに」
そう言われ突然仕事をしていた右手を取られ抵抗することもなくアルジュナをみた
彼女の一般よりも少しだけ白いとは思われる肌に乗せられた褐色の肌は相対的で同じ人間なのにと不思議にも感じるものだった
「…指輪?」
右手の薬指にはめられたそれなりの大きさのある宝石が付けられている指輪に目を丸くさせアルジュナをみれば彼は優しく微笑んでいた
「やはりお似合いですね、澪の指には青がよく映える」
「アルジュナ、私こんな高価そうなもの渡されても何も準備とかして」
「気にしないでください、これは私からあなたへの気持ちなのですから」
慌てる澪を宥めるように右手を取った、とはいえ青色に光り輝くその宝石が確かに澪に知識はなくとも高価なものはよく分かっている
インドにちなんで宝石なのかとも思えるが魔術師たちのそれとはまた違う宝石はしっかりと採取されたものなのだろう
それをアルジュナがどういった形で入手したのかは分からないが澪にしてみれば困る代物だった
「この指輪を無くさないでください、出なければ貴方を攫ってしまうかもしれない」
小さく耳元でそう囁いたアルジュナの手が髪に触れて背中を指が撫でた
ぞわりとした感覚に目を瞑ってしまえばそれ以上は何もなく彼は最初のように優しく微笑んでいた
「アルジュナ…?」
「御心配なさらず、私はマスターのサーヴァントですから、ですがお忘れなくこのアルジュナの心を持つのは貴女だと言うことを」
最後にそう言い残したアルジュナは部屋から出て行ったのを見送り、右手の薬指にはめられた指輪を見ながら、今年もまた彼に縛られてしまうのかと心のどこかで呆れながら思いつつも仕事の処理をしなくてはとワーカーホリック気味の彼女はまた指を滑らせた
▲▼▲
- 29 -