オジマンディアス


光り輝く星を見た、雪山で標高の高いカルデアから見る景色はいつも曇り吹雪いており、夜の空を見ることもあまりなかった
少しだけその空を見たくなり、職員たちも寝静まった夜、マフラーを一つ首に巻き、足を進めた



「…こんな所でなにをしている」


「星よ、あなたは?」


「雪を見に来た」

星は珍しくこの雪山を見下ろしていた
月の光に照らされた黄金の装飾品は光っており、見るからに寒い肌にサーヴァント故にそれほど寒さにも弱くないのか男は隣に来た



「ここは、砂がない世界だ」


静かに口を開いては赤い唇から漏れた言葉、積もる雪が足元から寒さを感じさせる
オジマンディアスからみれば雪は珍しいものだろう、太陽とは程遠いものだったから
あの光で雪は溶け、水となり消えていく、それ故太陽王呼ばれたこの王は一度たりともあの世界で見たことはなく、この三度目の世界で目にした雪はとてつもなく珍しくそして美しく感じたのだろうか
彼はこのカルデアの雪を愛したことか


「少し寂しいものだな、あれだけ余が見つめてきた世界が白に染まったのだ」


「ここだけよ」


王の言葉にそう返事をしていれば隣に来たオジマンディアスは肩にマントを羽織らせた
見ていて寒いのはこちらだと澪は思いながらも隣の男の褐色の素肌に頬を寄せた、触れた肌が冷たくそれでも人のように鼓動は動き呼吸をしているのは今使い魔として現世にいる証拠であろう

世界の終わりの果てで人々は嘆き苦しみ怯えた、この王はそんな民を何よりも考えていた
自分とて恐ろしいとわかっており、何よりも民を国を滅ぼさせたくないとばかし思っていた
一度たりとも王となったことのない##という女からすれば、そんな王という職業に対して子である民を思える心を持ち合わせることもなかった



「少しばかり寒い、茶を入れろ澪よ」


こんなときも相手を思うのだと思った、王の琥珀のような美しい瞳が見つめてきては目を細めた
その指が髪をどれだけ撫でても、優しい唇から漏れる声がどれだけ優しくても、それはあの日あの場所で子供の秘密遊戯のように結婚を誓った村娘の一人として見られていると分かってしまう


「寒いから、柚子茶にでもしましょドクターがくれたの、日本から取り寄せたって喜んでたから」


誰もいない暗い廊下を二人で歩く
サーヴァントの気配はどこもはっきりしていても誰も深夜に出てくるものはいない
隣を歩く太陽王はそれでも凛とした顔をしていた
まっすぐと前を見つめていた


「ふむ、日本からか興味深いなそれで構わん」


王独特の言葉遣いも、風格も、カリスマ性も何もかもが麗しく愛おしく思えるのは自分の1人がこの男にそれほど執着したからだろう
あと数歩で部屋につく、そうすればこの高ぶる感情などゴミ箱行きだ
そう思えたのに、部屋に入る直前で足を止めた太陽王オジマンディアスは腕を引いた
鼓動が聞こえた、規則正しい時計の針のように正確な音、大きな音でもないただ彼は生きていると確かめれる音である

顔を上げ頭上の男の顔はあまりにも優しすぎた
頬に触れた冷たい手に反応も出来ずに、塞ぎこまれた柔らかな唇
触れて離れたその唇が何よりもずるく愛おしく思えた、手をそっと伸ばして自動ドアとなっていたそれにセンサーは反応して扉が開いた



「だが、その前に肌を温めろ」



その言葉にそっと釣られて部屋に二人して足を踏みいれて、何も知らぬ顔をしてお茶のことも雪のことも太陽のことも全てを忘れ望み狂う
この感情は自分の物でないとしても、それでも何故か幸せでいれる
それはきっと、寒かった体が温もりを求めていくからなのだと、言い訳をして



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