ディルムッド


戦車男設定








運命というものを信じたことは一度もなく
女は苦手な部類で、自身が持って生まれた美貌のせいだと分かりながらも、いつも接してくる女性達の「運命」という言葉に嫌気を指していた
だが、それは本当なのだとその日理解した


ディルムッドはエルメロイの長男だ
日々グラーニアを筆頭に様々な女性にストー……愛されている彼にとって女とは危険な対象だ
母であれ、同級生であれ、近所のお婆さんであれ
唯一の癒しはただ一つの妹、か弱く美しく尊い存在だと愛してやまない


筈だった




休日のある日だった
帰り際の電車は人混みもなく逆に静かに空いていた
車内は五月蝿くもなくあまり乗車してくる客もいない
本日も疲れたとため息をついた時だった、電車の中に入ってきた女に目を奪われた

ワインレッドの大きめのリボンバレッタに学生服は見覚えのあるもので、落ち着いた表情の彼女は女であり苦手なはずが相手はコチラを見ようともせず
ただ手元の本を見ては白い指でページを捲る

ふとその本から流れ落ちた栞はヒラヒラと風に乗ってイタズラに足元に落ちた


「ごめんなさい」


優しい鈴とした女性の声
妹とは違う、母とも違う、美しい心に響く声に思えた
思わず顔を合わせたが相手は不思議な顔をした
手に持っていた栞を忘れてその女性…というよりも少女に近い彼女を見て、運命だと感じ取った



「あの、なにか?」


困った顔をした彼女はやはり綺麗で、自分の知る女性とは違うのだと改めて感じる


「いえ、すみませんでした」


そういって栞を渡せば彼女の持っていた本が目に入る
「ケルト神話」と大きく書かれた本に、フィン物語群といったもので
自分もよく知る本であった


「その本」

「えっ、あ……ケルト神話の本なんです…ご存知だったんですか?」

「あぁ、よく昔父に読み聞かされた記憶が…良ければ隣でも」

「失礼致します」


淑やかな彼女に淑女という言葉以外は出てこない
こういった時に女神と例える輩もいるであろうが、神にも到底及ばないように今のディルムッドには思えてしまった
それほどまでこの少女は魅力的で、尚且つ自分の初めての感情であったのだ

綺麗な黒い髪から香る柔らかな匂いも、少し混じった香水であろう匂いも鼻を擽る
話をしながら動く、薄く赤い唇に時折見える血色の良い舌、爪先まで整えられて薄らとされた薄すぎるピンクのネイルは校則ギリギリなのだろう
話す度に変わる表情、初対面でありながら話を楽しそうにする彼女


「あ、私ここなんです」


そういって勢いよく立ち上がった彼女につられて立ってしまう
自分は1つ後の駅だとわかっていたが今しかないような、そんな気がした


「俺も、ここなんだ…もしよければ送ろう」

「え」

「もう、夜も暗い…近頃事件も多いだろう?女性ひとりじゃ危ない」

「優しいんですね」


等と優しく笑った彼女に思わず花が咲いたように思えて、あぁ恋とはなんと凄いものか…とようやく自分を思う女性達に思う
だがしかしどんな女性だろうと今のこの少女には勝ることはないと思えてしまう
妹とは違う愛らしさ、それこそ愛と恋であるのだ

えらく歩くな…と思いつつも、話が出来るのが何より幸せでよく見た景色に彼女足が止まった


「私ここなんです」


そう言って彼女の家を見れば


エルメロイ


と書いており、おまけにどう見ても自分の家であったのに動揺が隠せずにいた


「あっ、えっと、え??」

「どうされましたか?」

「いや、ここは俺の」

「ケイネスさんが言っていた息子さんって貴方だったの?」


そういった途端驚いた彼女は顔を真っ赤にさせて俯かせた、これは恥ずかし真似を…と言いつつもちらりと見える顔は愛おしさが増すばかり
思わず彼女の手を握ろうとした途端にドアが開いた


「あら、ディルムッドそれに澪ちゃんもおかえりなさーい」


ハートでも飛び出そうな甘い母親の声
どうやら彼女とはここから本番らしく、先に上がろうとした少女は優しく微笑んでいう



「よろしくね、ディルムッドお兄さん?」



その後ディルムッドが冬ちゃん民になったのはすぐのことだった。







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