山の翁



カルデア内も大分サーヴァントが増えてきて近頃忙しいばかりだ
戦力として働いてくれる藤丸姉弟に比べ澪はロマニの埋め合わせをできる範囲だがしていた
全く平和な世界になったがまたいつ何が起こるかもわかりはしない

そう思いつつ大きく欠伸をしていれば、自動ドアが音を立てた
見慣れた黒髪に白い制服、最初よりも少しは凛々しくなった少年の顔を見ては背を伸ばす


「おかえり、藤丸くん調査はどうだった?」

「いえ、特に問題は…ですけど」

「うん、わかったありがとうね、うん…うん」


レイシフトを度々してはサーヴァントの強化や、安全確認をしに行く藤丸姉弟の片割れであり、弟の彼からの報告を受ける際にはいつも決まって外の気配を感じる、凡そサーヴァントで彼を慕っている子だと理解する


「外で、待たせてるなら早くしなきゃダメね」


データをまとめて次にいるものをまとめ送り始める
それでなくとも男であるかれは女性サーヴァントからえらく好まれる
年下であり可愛い弟のようにも思えるのだろう、はたまた清姫のような恋に焦がれるサーヴァントも少なくはない
それは悪いことではもちろんなく、年も人種も何もかも今更この世界には関係の無いものだった
恋も愛も人の勝手である、だからこそ目の前の少年の恋も可愛らしいと思っている


「澪さんはいつもサーヴァント傍に連れませんよね」

「どうして?」

「いや、俺や姉ちゃんとかはいつもサーヴァントの誰かがそばにいてくれてるから…その、澪さんのところもそうなのかなーとか…」


ふとそういった彼の言葉に思わず笑ってしまう
たしかに彼には見えないのだろう、サーヴァントには元より霊体化というものがある
だがこのカルデア内は魔力配給はカルデア本来のものが6割、3割は澪自身から、そしてそれぞれのマスターたちの魔力を少々
と言った形でいろんな魔力が混ざりあっているのだ
それ故マスターたちの魔力も軽いもので、霊体化をするサーヴァントはまずいないといっても過言ではない



「いるわよ、私の隣にいつも」


「え、だれも」


「…魔術師よ、見えたか…」


「あー、キングハサンだったかぁ…そりゃあ、分からないですね」


「そういうわけ、じゃあもういっていいよマシュちゃんも寂しく待ってるでしょう」


そういって少年を送り出して、書類に目を通しながら珈琲に口をつけた
山の翁、これが澪自身の右腕のような存在であり、彼女の率いる陣営の中の長でもある
澪にとって山の翁は対等であり、そして暗殺者とそのターゲットでもある
なぜ周りが見えぬのか澪にそれが見えたか、それは彼女自身もまだわからぬ事だった



「契約者よ」

「どうしたの?」

「休まれよ」


その言葉に時計をみれば時刻は15:47
どうやらお茶の時間でも取れとのことなのかテーブルにはいつの間にか果物が並べられていた
秘書と言うには固いサーヴァントで、人を気遣う精神は持っている
この暗殺者と出会い1年は立っていた、正式な聖杯戦争ならばまず会うことはなかったと思えた者だったが、このカルデアという場所での経験は何もかも関係がない



「…ねぇ、翁様これあなたが入れたの?」


「安心せよ、毒など入っておらぬ」


「人理修復を終えたからかあなた少し丸くなったわね」



そう言いながら甘すぎる紅茶を口に含む
暗殺者は今日も契約者を見つめるだけである



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