パラド
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※高校生のえむ(パラド)
永夢が好きになった西沢葵という人物との出会いはパラドの方が早かった
分離してからパラドは永夢の意識を乗っ取るほどまでに成長を遂げはじめての頃、永遠の意識はよく途絶えた、それ故にゲームセンターに入り浸ったりした時も最初は何もわからないでいたのだ
西沢葵と出会ったのはそんなはじめの時だ、まだ高校生の自分達と20代の彼女
学校終えて17時頃から永遠にゲーセンに入り浸る、格闘系、FPS系、音楽系オールジャンルにどんなゲームの一番上にもMと書かれその右側にはいつも2位とは大きく離れたスコア
その日その日によって様々なゲームをしては飽きることなどわからない、特に格闘ゲームはワンコインで対戦相手がやってくれば何時間でも遊べた
格闘ゲームの中にも何種類もある癖にどれもして、よく来る常連客は今日も倒せるか等と賭けをする程だ
「つまんねぇ」
1Pの勝利だと大きく画面に映し出すゲームに溜息をつきながら口の中に入れていた棒付きキャンディを軽く噛み砕く
最近の永夢はいろんなことを貯めているからここで吐き出さなくては、と思う気持ちと結局は自分のゲームへの欲
夜遅くまでゲームセンターに入り浸る為か店員も呆れた顔だった
「これ、楽しい?」
ふと横に座った女がそう言った、如何にもよく街で見かけるような普通の女で、紺色のノースリーブのタートルネックの服に白いズボン、年上の女だというような見た目、低い身長に豊満な胸を見た
男子高校生の欲だとはいえ少しばかり見たことに申し訳なさを感じる
「まぁな、でも俺より強いやつなんかいないし」
「じゃあ、私としようと、勝ったらご飯かジュース奢ったげる」
「…なら、駅前の新しいハンバーガー屋、ポテトとドリンクつきな」
花が咲いたように笑った女は自分から持ちかけるのだからそれほど強いのかと思った
だが結果は予想をはるかに裏切って初心者以前の問題だった
「よくあれで言ってきたよな」
「だって君ずっとここにいたから気になっちゃって」
「は?」
「この近くのお店してるんだけど、5時くらいからずっといるでしょ?」
なにかあった?なんて親切な大人のフリをしてか女は聞いてきた
だが学校の教師や他の大人とは違う、嫌なものには思えなかった、服装から少し年上に見えるが顔を見れば年下に見えるほどだ
わけも分からないその女を連れて駅前のハンバーガーショップに入る
「俺照り焼きセットのコーラのLで」
「私も照り焼きセットのアイスティーとチーズバーガーと、あっこの期間限定の目玉焼きバーガーと単品でポテトLLとナゲットで」
「俺そんなに食わないけど」
「…わっ私の分だもん」
恥ずかしそうにいった隣の女を見下ろした、思わず面白くて小さく笑えば余計に顔を赤くして俯かれてしまう
「そういえばお名前聞いてない」
「んー、エムって呼んでくれよ」
「エム?ゲームの時の名前?」
「まぁそんな所、アンタは?」
「西沢葵、この近くのお花屋さんをしてます」
そう言ってまた笑う、その度にまるで花が咲いたように周りまで明るくなるような感覚を覚える
永夢がまだ大丈夫な女性だと思えた、基本的にアレ自身がガツガツといけるタイプで無いためか女性はあまり得意としなかった
彼女は2人ほど出来たが両方共全く上手くいかなかったのはよく覚えている
「エムくんは、いつもあんな遅くまでいるの?」
「最近だけど暇潰しにな」
「楽しいから?」
「…まぁ、俺の時間はあそこにしかないからな」
学校でもなんでもそうだ、パラドという存在エムという存在は殆どなかった
けれど永夢の本当に好きなものを前にすれば違う、体は軽くなって乗っ取りやすくなる
直に触れる世界は楽しいものだった、いつか自分が完全に分離し体を手にすれば…そう考えるだけで心は躍る
「なら、休みの日とかは私のお店おいでご飯とかなら連れてったげる」
そういって笑った葵は最後の一口を食べ終えて立ち上がる
テーブルに千円札を三枚置いた
「これは、お礼…私、寂しいの、じゃあねエムくん」
そう言って出ていった彼女の背中はあまりにも小さかった、不思議な人間だと思えてテーブルの上の金を掴み走り出した
まだ歩いているその背中をみつけて、腕をつかむ
「ならこの金で俺のこと買えば?」
きっと永夢に意識があればこんなことあり得るわけないのに。
葵はまた花のように笑って両頬を包み込まれ唇が塞がれその瞳が数時間の中で一番いやらしいもので背筋がゾクリと刺激される
「ゲームよりハマっちゃうかも」
「それは…心が躍るな」
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