手塚海之







「葵…すまないが、君の占い結果はあまりいいものじゃない」

「えぇ…昨日までは特に何も無いって」

「…だが運命は変えれるものだ心配はいらない」

眉毛を下に下げた葵と呼ばれた女は悲しそうな顔をする、なにせ目の前の占い師手塚海之は百発百中の占い師で、知る人ぞ知る若い占い師である
ライダーでありながら戦いを止めたいと願う彼に葵は差し入れついでによく占ってもらった
500円の占いで占われるそれは本当に信じ難いものだが有り得てしまう

例えば次の日に葵は危険人物と出会うと言われれば浅倉威に出会い
濡らされると言われればたまたま用事で北岡弁護事務所に行けば庭に水をやる由良吾郎に水を浴びせられ
変な男に絡まれると言われれば宗教にナンパに誘いに誘われる日であり、一緒にでかけていた真司も蓮も深いため息をついたものだった。

「じゃあ今日は一緒にいてくれませんか?」

そうすれば危険がいつ起こるか、もしかしたら手塚がいればならないかもしれない、等と軽率に思って言えば言われた当人は驚いた顔をして目を数回ぱちぱちとさせた
この人はこういった突然のことには慣れないのだと思い出し、申し訳ないことを口にしようとすれば手を取られ真剣な顔の手塚がいた

「あぁそうだな」

それからだろう、まるで恋人のように絡められた指先がもどかしい少し力を入れるだけで感じ取られることだ
おまけに手汗が気になって仕方がない、実のところ葵は手塚が好きでたまらなかった、だからこそ彼をこうして誘ったわいいが、いざデートとなった今どうするか頭の中は白くなっていた

「手塚さんどこか行きたいとことかありますか?」

花鶏が休みのために特に行くところもなく、かといえ帰るのは寂しくて言えずに声をかければ特に何も無いのか悩み始める

「行きたいところはないのか?」

「私ですか?…そうですね、水族館…とか」

小さくなった声を聞きとった手塚は優しく微笑んだ
こういったときの表情が好きだ、受け止めるような優しいその笑顔が心地よく返事の声も聞こえないが水族館いきのバスに揺られる頃にはあぁ悪くなかったとは思えた
平日の昼過ぎの水族館は人が全くおらず、少しだけ離れた場所に来たおかげか1.2組ほどのカップルだけで1つ場所を変えて進めばすぐに誰もいなくなる

入口の巨大水槽の中で一匹だけで泳ぐエイは珍しい模様をしていた
一匹だけ仲間はずれのようで、ほかのエイたちは現在検診中と書かれていた、先に1匹だけ終えたエイはその広すぎる水槽の中を自由に泳いだ

「やっぱり、自分のモンスターと重ねてみてしまいますか?」

「いや、そういったわけじゃないんだがな」

「この子模様も違う気綺麗で可愛いですね」

「そうだな…いこう」

離していた手をまた取られ進み始める頃には一方通行の広い水族館の中部に来ていた、小さな魚や大きな魚、詳しくは無くても雰囲気や説明で充分楽しめた
時折カエルやトカゲもおり、隠れるのが上手な生き物を二人で探しては子供のようにはしゃいだ
元より爬虫類関係がそれなりに好きな葵からすれば特にカエルが好きで手塚との繋いだ手を離して二人で別々に同じコーナーで生き物を見ていた

「この子すごく変わっ…きゃあ!」

赤色に黒の模様の入ったカエルを見つめた時だった、そのカエルと目が合うと同時にガラスの反射光に映り見えたミラーモンスターに気づいた時には遅く、カエルの形をしたモンスターの舌が伸びた
壁に手をやり、首元に巻かれたモンスターの舌を何度も人間の生身の手で攻撃するが効くはずもいなかった

「てっ…づか、く」

少し離れた場所にいた手塚に手を伸ばし消えそうになる意識をしっかりと保つ

「葵!!」

そういって気づいた手塚が走ってきた時には流石にライダーだとわかったのかミラーワールドに消えたモンスターのあとを追うように変身して入った彼の背中を見た
ファイナルベントが決まり出てきた時には葵も落ち着きを取り戻していた、少しだけ首元は赤くなってはいるがそこまで残るものではなかった

「大丈夫だったか?すまない…俺がついていながら」

「いえ、もしかして今日の占いってミラーモンスターのことだったんでしょうか」

「…あぁ、一人で行ってしまうなら声をかけようと思っていたんだが」

「そうですね、真司くんとか蓮くんとかに最初に誘えばこんな迷惑なこと」

小さくため息をついた、要らない事に彼を巻き込んだかと思えたのは自身も隠してはいるがライダーであるからだ
まだ今は正体を明かしてはならないと言われている故に戦うことは出来なかった

「いや、反対だ…俺だからこそ頼ってほしい」

いつも通りの声でそういった手塚に思わず面をくらい顔を上げる、真剣な瞳でそういった彼が普段から冗談をいう男でないことはよく知っている
仮に冗談でも酷いことは言わないだろう、その言葉にまるで告白のような言葉に思えて少しだけ恥ずかしく顔を俯かせた

「そっその…えっと、はい」

「…そ、そんな変な意味じゃなく、いやあぁえっと」

今度は言葉の綾に気付いたのか手塚の顔に冷静さがなくなり二人して水族館の爬虫類コーナーに座ってしどろもどろとする、そんなおかしな光景を見させられるカエルはまるで見せつけないでほしい。と言うかのように飛び跳ね始めたのを見てようやく冷静さを取り戻した二人の手はいつの間にか指を絡めあっていた。




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