奥山
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けれど一人を嫌がって静かな僕の部屋に来る、パソコンのキーボードを叩く音しか聞こえない部屋で何をするわけでもなく夕日さんは居座る
「奥山くん」
小さく呼ばれた声に顔を向けることもなく返事する、それでなくても溜まった仕事が減る気配もなく存在するのだから文句の一つも吐きたいほどだ
とはいえ佐藤さんから言われたものにケチをつけれる筈もない
「どうしたの僕忙しいからあんまり構えないよ」
まるで子供を相手するみたいにそういった、彼女は見た目に反して随分と子供だった
一人称だって「あたし」だし、話す内容に意味が無い場合も多い、4歳から亜人の研究所に居たせいなのか中身はまだ8.9歳ほどの子供だと佐藤さんはいつしかいっていた
「…奥山くんも、あたしのこと嫌い?」
薄い壁の仮家だから廊下で田中さんと揉めてるのはよく聞こえていた、冷やかすような高橋さんたちの声も大きく怒鳴りつけたあとに逃げるように入ってきたのは佐藤さんがまだ帰ってきていないからだろう
凡そ田中さんがまた感情的になって彼女を責めて、夕日さん自身も子供だから余計揉める原因になったのだろう
今頃廊下は穴だらけだと予想して、一つの仕事が終わる、一旦休憩だと固くなった体をほぐすように伸びて部屋の隅に三角座りをして怒られた子供のように様子を見てくる彼女を見つめた
「嫌いじゃないよ、また喧嘩したんだ」
「田中くんがあたしのこと邪魔って、別に邪魔したつもり無かったの…少しだけほんの少しだけ遊びたかったの」
「高橋さんとかと遊べばよかったじゃん」
「薬してる時は来るなってゲンちゃんがいってた」
ある意味いい大人ではあると思った、薬を強制するわけでもなく何かあった時を思って遠ざけて
となれば必然的に田中の元に行くわけだが一向に射撃の腕の上がらない彼にとっては得意な夕日はプレッシャーにもなるのだろう
「ごめんなさいは?」
「したけど、どっか行けって」
「だから来たの?」
「うん、奥山くんいつものしていい?」
いつもの、といった彼女に腕を広げれば立ち上がりやってくる、ゆっくりとした動作で背中に腕を回されて僕の脂肪に顔を埋める
太っていることを気にしたことはない、足のせいもあってか無理な運動が出来ないのは自分でも理解しているからだ、からかい混じりにやってくる夕日さんも悲しい時や何かあった時はこうして抱きしめてくる
人のストレスはこうして抱きしめ合うことでも減少できるという、だからこそこの行為を拒否することもなかった
「奥山くん、頭撫でて」
「はいはい」
「ありがとう」
彼女の好きなところは黒い肌や明るい金髪や露出の多い服等の見た目と反対に、ありがとうごめんなさい、等をしっかり言えることだろう
中身はしっかりとして、それ故になんとなく嫌な気持ちにはならない
どうせ数時間後には田中さんが謝りに来るのも想定していた
「お仕事の邪魔してる?」
「休憩したかったからいいよ」
「じゃああたしとゲームしようよ佐藤さんがこの間買ってくれたの、大きい画面で出来るんだ」
「うん、いいよ」
案外僕は子供が嫌いじゃないのかもしれない、無邪気に嬉しそうにわらう彼女を見るといつも釣られて笑う
廊下を出ればバツの悪そうな顔をした田中さんが立っており、夕日とそれはもう優しい声で呼んだ
「なぁに田中くん」
これまた自分が悪いと思ってるのか同じ顔をする夕日さん、一言ポツリと「悪かった」と謝る田中さんの謝罪最速記録かもしれない
沈んだ顔が一気に慌て始めて、田中くんが悪いんじゃないとか言い始める、ついには泣きそうになる夕日さんに二人で慌ててリビングルームにしてる場所に行ってコントローラーを持たせる
ちゃっかり夕日さんを真ん中に座らせて僕らはゲームを始める
あれ、溜まった仕事どうしよう…まぁいいやなんてまた彼女の嬉しそうな顔を見て思った、そのものの数分後には佐藤さんが帰ってきて全員でゲーム大会が始まるのだった。
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