ゲン


このテロリストと呼ばれるメンバーの中でも夕日は飛び抜けて年下だ、そもそもまだ未成年で見た目こそ成人したふうに見えてもまだ高校生と変わらないものだ
佐藤は夕日を野放しにしてはいるがほかの連中はなんだかんだと言いながらまだ子供な夕日を気にした

「ねぇねぇゲンちゃんなにしてるの?」

「んー?夕日はあっちいっててな?俺達今お薬してるから」

「あたしもしたい、貸してよ」

「だめだって夕日は女の子だから身体悪くなっちゃうから」

まるで子供に言い聞かすかのようにそういったゲンは部屋に入ってこようとする夕日を止める
奥から見えた高橋はもうだいぶ進めていたのかどこか上の空で壁を見て話をしている、まだそこにはゲンがいると思っているのだろうか
不貞腐れた夕日の頭を1度撫でて、ゲンは顔を寄せてキスを落とした文句も言えずに黙ってしまう彼女に小さく笑って扉を閉めたゲンに夕日は今日もまた一人溜息を零した

佐藤と二人の頃はそれこそ自由で何をしても怒られもしなかった、文句も勿論なくそうすれば善悪の区別もなくなる
だが田中が増えてから、包丁の使い方は悪いから料理はダメ、ガスなども誰かいない場合はダメ、一人で夜九時以降の外出も理由なしならダメ、本当に中学生小学生扱いだ
だがそれほど夕日は何も知らずに何も考えずに行動しては毎朝服をボロボロにして帰ってくる、その度に田中は怒るように文句を言い、高橋はヘラヘラといいじゃないかといい、奥山は特に何も言わない、ゲンは甘やかし上手で夕日をたんと甘やかした

「佐藤さん…もゲーム、奥山くんはお仕事、田中くんは…多分忙しいしなぁ」

ふぅ、とため息をついて部屋にいれば自身の身体から黒い粒子が溢れていき、1体のIBMがそこに経つ、頭がない出来損ないが生まれた

「あたしもゲンちゃん達みたいに夢見たいのにね」

眠ることは恐ろしいと感じなかった、毎夜黒い粒子たちは集合体となり彼女を包み込んだ
子供同士の慰めのようなものだった、夕日は甘やかしてくれたゲンが好きでたまらなかった、それが女としての恋心か、子供としての幼心なのかはわかりもしない
それでも受け止めたゲンは夕日をさらに甘やかせたケーキに砂糖をまぶすように、それは甘かった

「…ゲンちゃん?」

「おはよ」

リセットし直したのかスッキリとした顔のゲンがベッドの隣に立って、IBMは静かに消えていた「入っていい?」と小さく聞かれ少しだけ奥にいって布団を広げれば冷えた足が触れる、足と真逆に上半身は暖かく冷えた足を暖かくなっていた夕日の足が絡めて暖める
ゲンの柔らかい洗剤の匂いがほのかに香る、わざわざ服まで着替えてきたのかと理解して背中に腕を回す

「冷たいね」

「夕日が暖めてくれるから冷やしてきたんだよ」

「…あたし女の子なのかな」

ゲンの手を見ながら呟く、戦闘においては佐藤に次いでの強さを持つ夕日は手の大きさや体格全てにおいて男女を気にした
もちろん女だからといって出来るものもあるとは分かっていてもそれでもやはり羨ましかった、男ならばもっと他のメンバーも放置気味だったのだろうと予想して

「女の子だよ、ここも…ここも、全部」

胸に触れ下腹部を撫でて、最後に頬を撫でる
絡まるように見つめあった瞳が優しく夕日はゆっくりと力を込めて抱きしめる、自分より弱い彼がいつか死ぬ気がして仕方なかった
人の終わりが亜人では分からないのだ、老いることはあっても寿命がいつ来るかもわからない、それは次の死を迎えた時かもしれないし、永遠に死ねないかもしれない

「ゲンちゃんはあたしが女の子でよかった?」

「んー男でも俺は甘やかすな、好きだから」

柔らかくまた笑う、子供に向けるような笑顔、どうしようもない子を見るような
ふとその言葉に高橋を思い出す、親しい間柄の二人を見ていて時折羨ましく感じるのだから、まるで甘い恋人のように感じる

「高橋は俺の最初で最後の親友だからな」

「別に高橋くんのこといってないもん」

「顔がそう言ってた、ほらほら拗ねるなって」

頭の方にゆっくり手を伸ばされて抱きしめられる、ゲンの胸から自分の肺の中いっぱいにその優しい匂いが広がる、寝たばかりなのに眠気がまたやってくる、まるで魔法のようだと感じる

「夕日がいるなら俺はどこまでも行くから」

そう言いながらもいつかどこかに行く気がしてたまらなかった、背中に回した腕の力を強めてシャツにシワが付くのも考えないふりをして握る
きっと自分もこの人が消えたら、佐藤の下から去る気がしながら。


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