田中


「0番ですか?…そうですね、至って純粋無垢な少女でした」

「母親や義父からの虐待のせいでしょう、研究員たちも彼女を気に入りましたよ」

「えぇ我々の為なら喜んで死んでくれます」


ビデオテープの中で顔は見えないが白い作業服を着た男達は次々と代わる代わる言った
椅子に座りそれを女は見つめながら金色の髪をヘアアイロンで巻いていく、映像の中で幼い少女は微笑んで研究員たちの真ん中にいた
頭を撫でられ、頑張ったねと声をかけられ、彼女は嬉しそうに微笑んで手を繋いで部屋に連れていかれる、叫び声ももうでずに数時間で終われば彼女は嬉しそうに笑った

「ねー田中くん」

「なんだよ」

「これ見る意味あるのぉ?」

間延びした声がそう告げてつまらなさそうに巻かれた髪をくるくると指先で遊ばせて、今度はメイクボックスを開いて、まだ幼さの残る顔を変えていく

「知らねぇけど…佐藤さんがいってたんだから見ろよ」

「田中くんは人間が憎い?」

「当たり前だろ、お前見てぇな生活じゃなかった…地獄見てぇに死んでも死んでも死ねない呪いみてぇ」

「その髪型って人間不信の現れなのかなぁ?」

カーラーでつけまつ毛をつけた長いまつげを上にあげながら彼女は告げる
国内二例目の亜人として捕まった田中、それに20年も囚われていた佐藤も…このメンバーは結局恨みの塊なのだろう、なのに佐藤も夕日も何も気にした様子はなく、ただ1人少しだけ傾きながらも生きる道を探す自分がいた

「ねぇ、田中くん」

長い前髪から小さく見える派手な化粧の女、長い爪に大きな瞳、グロスで光る唇、すべてが目に焼き付いた


「夕日ちゃん何したい?」

「うーんとね、かくれんぼ!」

画面の中の少女はいう、研究員たちは微笑んだ
もういいよ。と告げた途端画面の中は黒い物体たちが現れ始める、次々に人々が裂けていたぶられ殺されていく、少女は真ん中を歩きながら楽しそうに微笑んだ


「みーつけた」

ビデオテープがようやく終わった
佐藤よりもこの女の考えはいまいちわからない時があった、考えていない可能性もあるがどうしたいのかさえわからない


「なんか、あたしやな事思わせちゃった?」

「いや…別に」

「ならいいんだ」

ビデオテープを取り出して二本目を差し込んだ、砂嵐のテレビが嫌にうるさく耳に張り付く


「あたしね、案外人間好きだよ」


そう言って笑った顔は悲しそうだった、再生を始めたビデオテープでは少女は実験台の上で切り刻まれながら泣いていた
自分の数年間と重ねて気持ちの悪さにやられる、目の前で笑う女はテレビを見つめた


「…でもね、田中くんのがもぉっと好きだから、あたしが救ったげるよ」

「なに、いってんだよ」

「だから揺れ動かないでね人間(あっち)側になんて」

あまりにも冷たい声は心臓を貫いたようだった、ただ目の前の女はまた興味無さそうにハサミを取り出して傷んだ毛先を切った

「でもって、あたしのことみててね?じゃなきゃ…殺しちゃうかも」

あまりにもその声は孤独を抱えて泣いていた
抱きしめることさえできずにそっと小さく声も出さずに頷いた、亜人と人間はどうせ共存できないなら、殺してしまえばいいなんて、きっと都合のいい言い訳なのだから。
結局自分たちは人間が嫌いなのだと理解してテレビを見つめた、少女は笑って手を振っていた





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