Fallen Angel



「じゃあ信長くん行こうか」

「はーい、また後でね奥山くん」

「うん、行ってらっしゃい」

嬉しそうに彼女は顔をクシャクシャにして笑う
新しく仕入れた武器を片手に佐藤さんと行ってしまった彼女と出会い恋をしたのは短い期間とはいえ確実に上り詰めたものだった
数分してから小さく聞こえる銃声を聞いて今日もきっとボロボロで帰ってきては血塗れの服で抱き締められるんだろうなと思う


「…ずるいなぁ」

それは何に対してだろうか、珍しく愚痴を零すようにそういった奥山は部屋の窓から外を覗く
自分の足がもし何ともなかったら?もし自分の足が走り回ることが出来たなら
考えても仕方の無いことばかり思ってしまう、生まれつきのものはリセットしても治らなかったのだ仕方ない
休憩に入ったのか窓から見える範囲に来た彼女は飛び跳ねて手を振って投げキッスを送ってくる
そんな彼女が好きなのだから意味なんてないんだと言い聞かせて手を振り返して仕事に戻る。


「奥山くん最近なんか気にしてる」

そういいながら彼女は上に乗って小さく腰を揺らした、心地の良い女のナカが感じ取られて未だにあまり慣れない快感とやらに冷静さをかき消されそうになる

「べ、っつに」

「ンっ、嘘だぁ…あたし分かるよ、奥山くん何か悩んだり困ってる時って口がへの字になりやすいからさぁ」

相変わらずモデル顔負けのプロポーションをしているなんて余計なことを考える、ふくよかとは言い難いが手のひらに収まるくらいの丁度いい日本人の平均サイズほど(とはいえ女性のサイズについてなどあまり分かりもしない)
細すぎない腕があり、心地の良い肉のついた太もも、鍛え上げてると実感する少し割れた腹筋、手を伸ばしてその硬いお腹に触れる

「えへへなぁに?つまんない?」

「ううん、綺麗だなぁって」

あっ締まった…けれどそういえるような余裕もあんまりなくてゆっくりしたスピードが上がる
声を必死にほかの連中に聞こえないようにと手の甲を噛むものだから互いに対面座位の形にして背中を抱きしめる、自分にだけにしか聞かせたくないという独占欲
結局足のことだってエゴだ、自分がどうならなんて今更無理なことなのに求めてしまうのは彼女のためだとまた言い訳がましく思う
耳元で聞こえる甘い声も背中に感じる小さな痛みも心地よくて抱きしめる力を強くする


「足痛くない?あたし無理させた?」

「大丈夫だよ、これくらいなら」

「あたしね、奥山くんの全部が好きだよありきたりだけど」

パンツ姿でベッドに横になって嬉しそうにいたずらに成功した子供みたいな無邪気な笑顔
白くて細い指が伸びて胸に触れる、脂肪が多いために少しだけ大きいし、他のメンバーと比べても特別だらしない体型だと自分でも理解しているのにそれを愛してると語るかのようにキスを落とす


「だから気にしなくていいよ、あたしが奥山くんのことどこまでも連れてったげるから大丈夫だよ」

そう笑って言った彼女はあまりにも綺麗で悔しいけれどそんなふうに思った自分が少なからず馬鹿らしいと思えた
治らないものを求めても仕方ない、今更のものを気にしたって仕方ない、結局は最後はこの子の意見ですべてが決まるのだ


「もしあたしがこっから逃げ出す時は奥山くんが嫌がっても連れ出すよ、だってもぉ一緒じゃなきゃ生きてけないんだもん」

死ぬことなんてないけれど、それでも永遠の苦しみだってあるのだ
無理だとわかりながらも二人だけの楽園を望もうとする、出来ることならば二人きりの世界ができればいいのにと、この部屋だけじゃなくて。




フォールンエンジェル
「叶わぬ願い」