瑠璃川幸
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男の子みたい、まるでそれは呪いの言葉だ
好きで伸びたわけじゃない身長は175cmを超えて女の子達の中でも頭一つ分くらい変わってしまう、155cmくらいが平均と書かれた身体測定の紙は丸めて教室のゴミ箱に投げた
髪の毛だって短いのは親の趣味と伸ばすのが面倒だから、似合わない制服も女だと一応わかるだけ
「ほんと可愛くない勿体無い、俺のが可愛い」
「そりゃあ幸ちゃんより可愛い人私知らないもん」
「…可愛くないやつ」
瑠璃川幸は数少ない仲のいいクラスメイト、男の子を忘れるくらいに可愛いのは見た目だけで中身も声もすべて男の子だ
裁縫も得意だし、時々洋服を買いに行ってもくれる、その時だけ私は本当の女の子になれる
長い手足に高い身長は部活では有利でボールを触ることには慣れてしまっていた、部活の試合では身長の高い子も少なからずいるのに、その子達は自分とは反対に女の子らしい可愛い子達ばかりだと幸に愚痴を零す
「自分が可愛いって自覚しないからでしょ」
まるで幸は私をかわいい女の子のように言う、幸のようにぱっちり二重で鶯色みたいな綺麗な髪の色で色白で男の子なんて忘れられるならいいのに、なんて毎日思った
女の子の証の胸はまだ成長途中で、毎月来る女の子の日は痛いだけで自分を傷つけるもののように感じた
「小雪は可愛いよ」
「ありがと幸ちゃん」
日曜日の休みの日、表参道に買い物したいなんて珍しくいう幸に付き合って釣り合うようなお洒落をした
少し前に買ったオールインワンのジーンズワンピを着てみて、短い髪の毛に合うような渋い赤い色のベレー帽を被って、幸に貰ったライトブラウンのクラッチバッグ
安い服屋さんで買ったサンダルを履いた
「ほら、かわいいじゃん」
その日の幸ちゃんはとてもかっこよかった、ダメージジーンズに白色にピンクや黄色や水色の小さな三角の柄が入った大きめのシャツで襟元のビジューが印象的で上の羽織はキツめに黒系のジャケット、靴は少し厚底の入ったブーツにアクセも大きめのゴールド系、いつもと違う辛めのコーデだった
目を丸くして待ち合わせ場所にいた幸に話しかけようとする前に気づいた彼は私にそう告げる
「ゆ、幸ちゃんもとってもかっこいい!私すごく好きだよ」
サンダルも少しだけ厚底だったからか、身長はやっぱり私の方が上だけど幸ちゃんは気にもしなかった
目の前で手を出されて顔をかしげたら「今日デートなんだから手繋ぐくらいしないの?」なんて呆れた顔をされた、あぁそうだ私幸ちゃんと付き合い始めたんだと思った
つい最近私は男の子に馬鹿にされた、女男で一層の事男になっちまえってお前には何も似合わないなんて
それを聞いてた幸ちゃんはその子を見た目と裏腹に引っぱたいて「お前に小雪の可愛さなんてわかるかよ」と告げた
「小雪クレープついてる」
「ん、ありがとう幸ちゃんのクレープひとつ頂戴」
「はい」
幸ちゃんは私にとってのお姫様的な憧れと王子様みたいな憧れが強い、幸ちゃんみたいになれたらと思う反面、幸ちゃんが好きだからなりたくないなんて面倒なことも思っていた
絶対に幸は私が名前を呼ぶと嫌な顔をしない、時々呆れたような顔はしても優しく聞き返してくれる
「私可愛くなれた?」
「可愛くなきゃ好きになるわけないじゃん」
「私は幸ちゃんが可愛くなくてもカッコよくなくても大好きだよ」
「…はいはい、知ってるから」
抹茶クレープを持ちながら顔を背けた幸ちゃんの耳は真っ赤であぁそういうところ本当可愛い…なんて思っちゃう
これから先もずっと私は幸ちゃんを好きになるし、幸ちゃんのためにかわいくなれるんだってそう心から思えてしまうのだろう。
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