かわいい君


だだっ広いトウモロコシ畑に連れていかれ思わずため息を吐いた、今日のキラーは誰なのだろうかとこの場所に来て3週間、ようやく慣れてきた場所ではあるもののチェイスが苦手であり特にレイスやハグ等が来た時にはもう生きては帰れないと実感してしまうのだ。
泣きそうな思いで誰とも会うことはなく発電機の修理を続けた、誰か襲われないかこの近くにはいないか…などと思いつつも必死に手を動かしていた時だった、ふと背中に何かを感じ修理の手を止めれば大きく音を立てて発電機は爆発した、どうやら勘とやらは当たったようで透明になったレイスが背後に立っていた、急いで走り出すものの彼は透明化から解除もなくただ隣に寄り添った

「え……ぁ、え?」

全力疾走した自分が恥ずかしい…と内心思いつつ足を止めればやはり彼は隣や背後をクルクルとついて回った
時折消えたかと思いきや、仲間であるキングを追い回したりクエンティンを追いかけたりドワイトは殴られていた

「あの、発電機の修理してもいいかな?」

ずっと見つめるレイスにそういえば杖で軽く発電機を叩かれた、遠くの発電機が着々と修理されている中1人でしていく、時折やってきてくれる仲間は追いかけ回す彼の心情は理解出来ず、いよいよ発電機の修理が全て完了してしまった
出口まで走り込みゲートを開けていっている時、遠くで誰かの悲鳴がした、何かあったのだろうかと思いつつもゲートを開けて全員を待ってみるが誰も来る気配はなく近くのチェストを漁ったりトーテムの破壊をしていても誰も来る気配はない
鐘の音が背後でして見つめればレイスはそこに立っていた

「ゲーム終わっちゃったよ?」

「みんな帰ったのかな」

独り言のように言葉を漏らしても彼は何も反応がなかったがレイスの腕が彼女を掴んだ、思わず驚いたが危害を加える気もないような彼がゲートまで案内をされてしまう

「ねぇねぇ、ポイントいらないの?エンティティに怒られちゃう」

誰も多分這いずりも勿論フックにかけてもいないであろうレイスに心配気にみつめるが彼は背中を押してくるだけだ

「帰っちゃうよ?」

1歩踏み出すがレイスはそうしなさいと言うように首を縦に振った、思わぬ行動に座り込んで彼を見つめれば透明化してしまいつまらなさそうに地面に座る
それにしたってほかのメンバーもみんな帰ってしまったのかとため息をついていれば目の前に救急箱がポツリと置かれた

「持って帰っていいから」

「また、会える?」

「多分」

「約束だよ?」

最後に姿を見せたレイスが殺人鬼だというのも忘れてハグをして出口に足を進めた
あぁまた早く会えたらいいのに、みんな優しい殺人鬼ならいいのに、なんてわがままを吐いて。







かわいい、可愛いあの子がやってきた
短いスカートがヒラヒラと揺れて黒い髪の毛が揺れて僕やハグが苦手だなんて仲間に言って、毎度会う度に彼女は吊られていっては助けられる。
透明化をしてずっと背後にたっているのに気づかないこの子はかわいい、ようやく気づいたと思いきや顔色を変えて走りだす、可愛いからついて行く、勿論危害を加える気もないのに。
怖がった彼女が愛らしくてついいつもいじめてしまいそうになるから今日は優しくしよう、危害を加えないことに気づいたのか発電機を修理していく

「うわっレイスいるじゃねぇか」

ボソリと呟いた声は彼女じゃない、邪魔な奴らが修理の邪魔をする、ずっと眺めたいのに来ないでくれよと思いながら勢いよく背中を殴りつければどこかに消えた
戻ればまだ修理が終わっていないようで「レイスちょっと待ってね」なんてまるで殺人鬼じゃなくて友達のような言葉だ、あぁかわいい
いつの間にかほか4つも修理できていたらしく大きな音がたった、そういえばエンティティに怒られるから他の奴らを見つけなければ

「またねーレイス」

そういって出口に走り出した彼女を名残惜しく見て反対のゲートに集まるむさ苦しい奴らを追いかけ回す
いつも通りの仕事、早く彼女に会いたいな、なんて思っていれば汚い泥だらけの男3人が地下室に集まってエンティティと仲良くしていた
よしよしこれで俺の仕事も終わりだなそう思っていれば小さく音が聞こえた、まだいるのかなと思いきや次はトーテムを必死に破壊する彼女がいた
そのトーテムは破壊しにくいんだろうなぁと眺めれば終わったのかこちらに気づく、ほかの3人は帰ったのかな?とか無事かな、なんて優しい言葉を言うものだから俺だけを見てほしいと思った

「あ…出口どこだろ」

先程と反対に来てしまったから仕方ない、内心ため息を零しつつ姿を見せて手を思わず掴んだドキドキと高鳴る心音は緊張もあるからだろう、楽しそうに微笑む彼女を送り出した

「また会える?」

心配そうに聞いてくる彼女にいくらでも会いたいと思えてしまう

「多分」

でもそれはエンティティが決めることだからしばらく会えないかもしれない、いっその事拉致してしまおうかと思えるがエンティティに相談しなければ痛い目にあうのだから仕方ない

「約束だよ?」

触れられた温もりがじわりと心を蝕んだ天使みたいに微笑んだ彼女は走り出す、かわいい君、あァ早くもう一度俺を抱きしめて欲しいんだ
地下に吊るされていた連中が生贄に捧げられたのを最後にまたあの子に会えますようにと内心祈った、案外殺人鬼も悪くないかも。なんて思って










ホントに透明化でずっとそばに寄り添ってくれるレイスくんが可愛かったけどなぜ私だけ生かされたのかよく分からないありがとう

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