go to heaven
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毎日味わう豪華な食事も自分の身の回りの面倒を見るメイド達も全てが重しで全てが自身を苦しめる主張物だった、普通の人間として一般的な生活で十分だった
ほかの兄弟のように振る舞うことも教養を身につけて立派な社会人になるということも全て望んではいない、自分の道が欲しくてたまらなかったなにかに決めつけられた縛られた道は心苦しくて堪らない
そんな中で出会ったのはナナシ・ウィンチェスターだった、父は大手IT会社の社長、母は日本人でパリのファッションデザイナー、まるでその星の下に産まれたかのように彼女は美しくいつも誰かに囲まれていた。
「こんにちは、私ナナシ・ウィンチェスターです宜しくお願いします」
たまたま大学の講義で珍しく遅れてきた彼女は空いていたであろうジェイクの隣に座ったかと思いきやニコニコと笑顔で挨拶をした
流石に挨拶を無視できるほどには無愛想ではなく
「ジェイクだ、よろしく」
たったその2言だけを告げて教授の雑談に耳を傾けた、ナナシはこの学校で知らない奴はいないほどに有名人だ、それはお家柄でもあるし彼女の人柄が多くあるのだろう
誰からも好かれるようなリーダーシップもあるがどこか目を離せないドジな一面もある、完璧ではないからこそ彼女に周りは惹かれる、ジェイクは彼女が羨ましかった、同じ富裕層でありながら彼女はまるでそれを感じさせないほどに広々と世界に生きていたから
「隣いい?」
「あぁ」
いつの間にか彼女は遅刻をせずともよくジェイクの隣を座るようになった、ほかの女子グループやほかの男達よりも自分の隣に座る彼女に何となく悪い気持ちは無く、勉強は苦痛そのもので元より勉学が得意でもなかったというのに兄弟が優秀であったためだ、親からはお前も…といった小言は何度か言われているそのせいで余計にわからされてしまう、この場所全てが苦痛であるのだ
「また難しい顔してるね、苦手なの?」
「あぁ、もとから大学には入る気もなかったしな」
「そうなんだ、ジェイクってしたいことないの」
「…自由になりたい」
ぼんやりと話をする教授に飽きたのかナナシはジェイクと話を始めた
自由になりたい。それを言ってしまったジェイクはふとナナシをみつめた、彼女は少しだけ呆気を取られた後にからかうわけでもなく真剣な顔をして言った
「私も」
大きな音を立てて発電機が爆発した、あぁ思わず昔を思い出したもう何年森の生活をしたのだろうかと思い出しつつも迫ってくるであろう殺人鬼に息を潜めた
話を合わせたようなものではなく遠くを見つめてそう呟いた彼女はどこか印象的だった、どうしてそんな夢を見たのかと思えたが小さな子供の歌声が聞こえた、あぁ今夜はナイトメアだからか。なんてまるでテレビに映るその日の映画を眺める様に思えて密かに足を動かす、もう相手の範囲には入っていて夢を見ている、どうにか目を覚まさなければならない、仲間を探すかどうにか発電機の修理を1度ミスするか何らかの方法を考えなければダメだと言うのに一向に夢が覚める気配はない
赤い光が近づいて心音が自然と大きくなる
「ジェイクっ目を覚まして」
腕をとって走り出したのは自分ではなく女の声で彼女は走り続ける、黒い髪を揺らして薄手の半袖に短いスカートで走り出す
柔らかな匂いに包まれて岩の裏に隠れると同時に心地いい音が聞こえて目が冴えていく暗かった世界は光を取り戻せば目の前にいる女はメグでもクロデットでもネアでもない自分が想い続けていたナナシだった
「どうしてこっ」
「シーッ、近くにいるみたいだから終わってから話しよう」
まるで学生の頃では有り得ないほどに彼女はなにか力強いものを感じた、誰かがフックにかけられれば即座に倒して走りこそ早くはないが隠れたりすることを得意にし、同じようにフックの破壊技術なども持っていた
最後の発電機修理を終えてゲートを開けていれば静かに周りを見つめるナナシは随分と雰囲気が変わってしまった、開いたゲートに進む彼女に続いて足を進めて奥でエンティティゲートを閉めたのを確認しいつも通りのキャンプに着けば彼女は深いため息をついたあとにジェイクを睨んだ
「なんだよ」
「どうしたもこうしたも、何このヒゲにボロボロの服も...まったくもう」
「そんなのを言いにこんなところに来たのか」
あいにく嫌味を言われるために彼女に会いたかったわけではない今でもまだ夢なのではないかと思えてしまうほど現実味がないのだ、ジェイクは触れられそうになったナナシの伸びた腕を振り払って彼女を見つめた
「ごめんなさい、ずっと探してたきっとこの儀式に参加させられてるって思ってたから」
「お前もずっとしてたのか」
思わぬナナシの言葉に驚きつつもナナシをみれば小さく微笑み頷いた、たしかに終えたばかりの彼女はまだ傷がうっすらと残っており血が滲んでいた
先程ナイトメアからかばった時の傷だろうか
「ジェイクに言わなきゃダメなことがあったの」
「なんだ 家なら帰らないぞ、というよりも怪我治療するから座れって’」
「え、あぁうん」
キャンプファイヤーを見つめ座ったナナシの背中の治療をしていくものの黙った彼女に気味悪く感じ声をかけようとジェイクは口を開いた時だった
「私、自由になるならジェイクとが、いいって思ったの」
「は?」
「だから追いかけて来ちゃった」
振り向いた彼女の笑顔は何も変わらずどうしてここまで執着されるのかさえもわからずに手を止めれば治療を終えたナナシの白肌から覗く淡い色の下着に少しばかり目を奪われたのはいえるわけもなく一歩後ろに下がればナナシは楽しそうに近づいた、また一歩引けば近づいてまるで彼女は殺人鬼のような危ない空気を出していた
「今度は絶対逃がさないんだから」
そう笑った彼女にきっと心を奪われたのだろう、溜まった唾を飲み込んでそっと声を絞り出す
「俺も、二度と離さねぇから」
乾いた口から漏れた言葉にまた満足そうに笑った彼女はそっとシャツを着直すのだった。
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