ルシフェル





まるで砂の城のように天使は愛する神の手の中でその活動を終えたのをたった一人がみた
ほかの天使と違う黒い髪の赤い瞳の天使、真反対の金色の美しく輝く髪色に青色の誰もが夢見、誰もが思い描くであろう天使という存在は誰よりも神を愛し信仰していた
彼女は神の意志により活動停止になった、その腕の中で彼女は砂になる前、神の許可の元恐れ多くもその神の頬に触れていった

「私は貴方様の傍に居られたことを何より誇りに思っております」

美しいと感じた途端、見たことのある海辺で作られ放置をされ誰も何も感じることもなくただ崩れていくだけの城のように消えていった
人としての感情で言うならば『愛』であったのだろうかと黒い天使は思っていた、その天使との関係は良好であった、だからこそ神と天使とのその最後の数秒の時間をみたのは特別だと認識されたからだろうか、天使にとってありえない感情というものを認識されたのはいつか
つまらない時間という名の世界の中でたった一つだけそれを変えられた気がしたのはなぜか

「今の私ならわかるんだがね」


そう苦笑しながら包帯を巻かれ深い眠りにつく人間をみた、美しい金色の髪を短く乱雑に切られ、所々血がにじむ人間が哀れに思えた
どんな苦しみも悲しみも、苦痛は全て神が和らげてくれると信じていた、だからこそどんな痛みさえも構わないと思えるのだ、その人間に対して黒い天使は哀れだとは思わなかった、その信仰が美しくてたまらなかった彼女の美しさに穢れはない


「自分の世界に逃げ込むのは快楽になれるのだろうか」

人を知る天使は思った、彼女は優しさよりも苦しさに溺れるようになる人間が不思議であった、そんな彼女は神に愛されているのが酷く心を*き立てた
神に祈りを捧げ、願いながら求めるばかりの彼女が愛おしくてたまらなかった、その信仰心が自分に来たのならば心地よいと思えたのだった

「天使様おられますか」

「あぁ」

目覚めたのか光を通さないその瞳で必死にみようとしているのかぼろぼろの腕を伸ばしたそれを掴んだ、痛みに苦しんでいるはずが嬉しそうに笑いその触れた手を大切に撫でたのをみつめた
人は何を持ち幸福となるのだろうかと考えたとき、彼女は偽りであれ神に近いものに幸福を覚えることだ、だからこそ黒い天使を信仰した、神に何よりも近い彼を深く思っていた


「私は、一人なのでしょうか」

「あぁ、誰もお前をもう望まないだろう」

勝手な彼女の時間全てを奪い、願いを託し、国のために命を捧げたのに騎士が使い物にならないとわかれば、それはゴミのように捨てられる
それでもかまわないのだと彼女はいうものだから、人間は理解ができないものだと思った
どこまでも傷つきながら苦しみ、それでも聖母のように彼女は人々に求められることをなんだろうと許していく

「天使様は人間を知っているといっていましたね」

「ああ、もちろん」

「ならば、私は愚かなのでしょうね」




彼女の言葉を思い出し、路地裏で袋を片手に死という終わりを告げる人間をみた、まだ幼い10年も生きていない少女がいた
騎士であった彼女が哀れというならば、盗みをして倒れる娘はどうなのか、人間らしいといえばその通りなのだろうが美しさにも欠けていた


「私は悲しくなどありません」

「神がみているからだろう」


ベッドに横になる彼女はいった、皮肉のようにいったそれは彼女だからこそそう思えた、天使よりももっと高いものを望むのを理解していた


「いえ、天使様、あなた様がルシフェル様は私のそばに死ぬ時もいてくれるのでしょう」

そういった彼女の手に力を込めた、あぁ彼女が人でよかった、天使であるなら『愛』などなかったのだから、人と天使の間には愚かな『子』というものでの繋がりがある
感情だけをぶつけあい、愛と心だけを求められるのだから
ゆるむ口元を抑えながら目の見えぬ騎士の額に祝福をした、落ちていってほしいと願いながら






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