河内鉄生
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肌寒さに目覚めて薄ら目を開けた、次に感じるのは腰に回される太い腕、そして目に入るのは間抜けに涎を垂らしてそれなりに伸びて金髪にした髪をクシャクシャにしていつもより幼い寝顔
鼻に入る寝る前よりも少しきつくなったタバコの匂い、今は何時なのかな、なんて寒い朝に対してゆっくり体を起き上がらせた
AM:06:21
冬の朝は遅いのかちょうど太陽が目覚める時刻で明るくなり始めた
朝食はどうしようか、今日のバイト先でのあの子達の晩御飯は何にしようか、そう言えばブライアンにコーヒー豆買いに行かなきゃ、そう言えば鉄生がお気に入りのライター無くしたって泣いてたっけ?今日は何時に彼はバイトだっけ、将五くんは元気にしてるかな?たまには武装のみんなに顔を出しに行ってあげなきゃなぁ
一つ思えばもう一つというように沢山考え始めて、その前に今はカーテンを開けて下着をつけて服を着なければ
まずは当たり前な事をしなければ寒くて仕方がなかった。
エアコンに手を伸ばして暖房をつける、そして無雑事に落ちてある鉄生の足元のシーツを胸元にそっとやって、カーテンに近づいて開ける
「んー、いい天気」
思わずそう言った、朝の天気は雲一つない青空
今日はきっと一日いい天気だ、なんて思って笑顔が零れた
「天使ってのもいるんだなぁ」
寝起きの掠れた低い声、ふと振り返れば同じように裸の鉄生は優しく笑っていた
「ならここは天国?」
エアコンも付いていて女もいて、料理だって作ってもらえる、いつも掃除はそれなりにされていて、何時に帰ってきても仕事や学校以外の時間はちゃんと出迎えてくれる、そんな天使はこの世にいるのか
元よりクリスチャンでもない彼女にとって天使などまず存在はしないという話でもある。
「なら最高だな、もし今死んでるなら…惚れた女に死んでからも愛される幻想をみれんだろ?」
「幻想…ねぇ、死因はなんだと思う?」
鉄生の方が年下なのに思わず聞いてしまう
まだ20歳にもなってない若い彼に死を望む訳じゃない、けれどいつしか死は2人を別つ
本当に2人を離れさすのは死なのか、また別なのかは分かりはしないことだ
「翔とセックスして腹上死か、お前に1ヵ月も会えず連絡出来なくて死ぬんじゃねぇのか?」
そんな言葉を女にいえば、きっと大体の女は嬉しくなれるだろう、前者は置いておいて後者は
そんなこと一度だってなかったから、基本的に連絡はあまりしないタイプの##と違い鉄生はただ声が聞きたい、メールだけでも話がしたいと会わない日の1時間は確実に電話をする
カーテンから離れて彼に近づいて微妙な長さの金髪を撫でた
彼の金髪に指が入って心地よく抜ける、傷んでいてもトリートメントされてサラサラの彼の髪は手入れがやはりされている
「キスしていいか?」
目を合わせた途端に腰に腕を回されて言われた言葉に小さく笑う
普段言わないくせに今更遠慮気味に言うつもりなのだろうかと、返事もせずに唇を重ねてやった
何度もリップ音がたって優しく愛おしいキスが心地よかった
天国がここなら本当に幸せかもしれない、永遠に怖いとも悲しいとも思えず愛おしさと幸福だけで殺され続ける世界
幻想であるとわかりながらそれを望み続ける信者のような人間達、ある種地獄絵図なのかもと思いつつもそこが心地よくて求めてしまう
「やっぱりここ、天国で俺の夢なんじゃねぇの」
「なら私は死んでからも鉄生のそばに居るってこと?」
「当たり前だろが、お前と俺は運命で結ばれてんだ…運命は神様なんてクソヤローには変えれねぇんだよ」
そう彼は笑っていう
何も恥ずかしげもなく幸せそうに、腕を伸ばして彼に抱きつく
愛おしくて苦しくなる、愛はこんなに溢れているのに止まらないのが幸せだ
たとえそれが運命でなくとも、きっと本能がこの男を愛せよと言い続けるから。
「鉄生」
「んだよ」
「そういう時はね、言うのよ」
神様なんてクソ食らえ
ってね
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